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自分がゲイだと気がついてから

昔好きだった人の夢を見た。高校時代の友人。自分が初めて、男性が好きなのかもしれないと気がついた人だった。

彼とは高校時代から仲が良かった。入学してすぐに仲良くなり、同じ部活に入り、毎日彼と放課後を過ごしていた。卒業後はお互い別々の地へ引越したためなかなか会えなくなってしまったが、それでも年に数回は会い、高校時代と何も変わらないまま話せるような良い友人であった。
しかし、色々な事情が重なって、今となってはもう連絡をとっていない。彼がいま何処にいて、何をしているのかすらも自分は何も知らない。


夢の中の自分は、彼に「行かないでくれ」とただひたすらに泣きついていた。
時間が経つにつれて彼のことはすっかり忘れてしまっていたが、そんな夢を見た朝方、ふと目が覚めた途端に彼の凛々しい顔も、整った髪も、綺麗な指先も、余裕のある立ち振る舞いも、いつも優しく漂う彼の匂いまで、今までにないほど鮮明に思い出してしまい、なぜか少し悲しくなった。そして、同時に自分が嫌になった。



自分がゲイだと気がついた高校生の頃、自分の将来に途方もなく絶望していたが心の隅ではほんの少しだけ、いつかはきっと大丈夫になるのではないかと思う気持ちもあった。今は女性を好きになれないが、いつかはそれも治り、普通に女性と結婚をして子供を産んで家庭を持って、そんな幸せを手に入れることができるのではないか。もしそれも叶わず、本当にダメになってしまったら、その時は自殺してしまおう。今はまだ友達がいて寂しくないが、周りの人達がみんな大人になって結婚して、それぞれの人生に進んでいけば自分は1人になってしまう。そうなれば周りからはどういう目で見られるか分からないし、どういう言い訳をすればいいか分からない。それに耐えられなくなったら死んでしまえばいい。これが当時の自分が出した答えだった。現実逃避以外のなんでもないが、でもそういう逃げ道がなければ、自分は本当にどうしたらいいのか分からなかったし、この先の人生を生きる理由も分からなかった。



それからもう7.8年経ったが何一つとして大丈夫になっていない。寧ろ状況は悪化するばかり。自分が恐れていた将来が、段々と現実味を帯びてきている。それでも誰にも本当のことを打ち明けず、今まで関わってきた人全員に嘘をつきながらヘラヘラと悪びれもせずに生きてきてしまった。それ故本当の意味で心を開ける人も、本当の意味での自分の居場所も、気がついた時にはどこにも何も無くなってしまっていた。
完全に言い訳ではあるが、辛くなったら自殺してしまえばいいと思い、どうせ長くない人生だからと自分自身を蔑ろにしてきた。その結果、結局自殺する勇気なんて本当は何処にもなくて、自分はこの蔑ろにしてきた救いようのない人生を進む他ないという最悪な状況に陥っている。自分自身ですら自分を救えない癖に、誰かに助けて欲しいと強く思う。自分自身ですら、自分自身が何をどうしたいのかも分からない。もし高校生の頃の自分が、今の自分を見たら何を思うのだろうと想像する。

 

いわゆるLGBTフレンドリーを謳う精神科へ転院した。病院のホームページを見た時からなんとなく、院長も当事者のような気がしていたがその予感は的中した。
自分がゲイであることを伝えると、LGBTは病気ではないから治す必要はないと断言されてしまった。自分を勇気づける為に言ってくれた言葉なのかもしれないが、自分にとってそれは絶望以外の何者でもなかった。治す必要がない、というより治せない、が正しいのではないか。お前はそういう人間だから諦めろ、いわゆる「普通」とは違うまま生きていくしかないと言われている感覚がした。


ゲイかもしれないと気がついてからもうこんなにも時間が経ったのに、未だに自分は自分を受け入れることが出来ない。もうこんなにも時間がたってしまったのに、未だに自分を受け入れて生きていく覚悟が出来ない。未だに「彼女作りなよ」「早く結婚しなよ」といった他人の言葉に必要以上に傷ついてしまう。未だに世間一般的な普通に強く憧れてしまう。未だに自分がどうしたいのか、どうするのが正解なのかも分からない。


自分ですら自分を許すことが出来ないのに、他人にそれを許して欲しい、受け入れて欲しいと思ってしまう。おこがましくて嫌になる。他人に求めてもいいものと、求めてはいけないこと。頭では分かっていても、その分別すらもつかなくなってしまう。友人は自分の人生と並走してくれる訳では無い。自分は自分の人生を生きなくてはいけない。その事実が途方もなく怖くてたまらない。 この先の人生を生きることに希望を見いだせない。何もかも全部捨てて自分の人生から逃げ出したくなる。未だにそんなことを考えてしまう。

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