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素直という美しさ

二週に一度、心療内科に行く。

主治医は優秀で、でも少し抜けている。

前々回の診察の時、彼は言った。

「褒める訳じゃないんですけどセンス良いですよね」
芸術についての雑談になった時そう言われたのだ。

センスが何を指すか分からないが、多分ファッションだろう。
これだけは私は人後に落ちないセンスを持っているからだ。

だがセンスを褒められないという事態は初めてだった。
センスがあるから傲るな、という戒めだろうか。
ニコニコしているから余計真意が分からなかったが悪い気はしないまま帰った。

そして先週。

診察が終わった時、主治医がはっきり言った。
「今日の洋服素敵ですね」と。
いつもですけど、とは思っただけで当然言っていない。

前回、私が芸術に明るい事を聞いてそれが頭に残っていたからそう思ったそうだ。

敵わないと思った。
私も人の身なりだとか才能だとかには素直に称賛の言葉をかけるが、あれだけ何のてらいもなく人の服装を素敵だと言える男はなかなかいない。

この人は真っ直ぐに生きてきたのだろう。

私みたいに障害や他者より劣った部分に卑屈になる必要がなかったから、とかではなく単純に真っ直ぐ生きてきたのだ。

バカが付く位の正直さ。真っ直ぐさ。
それは美しさに似ていて私には少し眩しかった。

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