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当事者はこう読んだ。「ケーキの切れない非行少年たち」
「ケーキの切れない非行少年たち」
コミック化しバカ売れしている様だ。
私はこの本を以前から知っており所有もしている。
漫画ではないものを発売から数ヶ月後に購入したのだ。
健常者がこの本にどの様な感慨や想念を抱くのかは分からない。
ただ「驚いた」「衝撃的だった」そんな漠然とした感想しか聞こえてこない。
しかしその先にあるものを想像して欲しい。
びっくりした。
そういう人も居るんだ。
そこで思考をストップさせず、その人達がどの様な気持ちで社会生活や日常生活を送っているかまで考えて欲しいと思っている。
左利きより多い確率で境界知能の人間が存在している。
しかしそこに支援はない。
その事を軽く考えないで貰いたい。
また私はこの本の序盤の書かれ方には大きな疑問を感じている。
著者が刑務所で働く精神科医という事が意識的にか無意識的にか、境界知能や知的障害が犯罪と結び付く、と錯覚させる内容になっているからだ。
まるで境界知能や知的障害が犯罪者を生む様な書き方をされている。
これは完全な間違いで犯罪を生むのは障害ではなく人格である。
ネタバレになるといけないので詳細は割愛するが、筆者は境界知能はこう、と強く決めつけてかかっている節がある。
しかし私は登場する非行少年達と性質が重ならない点も数多くあった。
先日八人家族のうち三名が知的障害の家庭で、長女が弟を殺害する凄惨な事件が起こったが、鑑定医ははっきり知的障害と暴力性の相関々係は否定している。
それによく考えてみても欲しい。
普段殺人などの事件を起こすのは圧倒的に健常者である事を。
時々知的障害者が事件を起こすと知的障害は悪だと囁かれる。
しかしもしも知的障害の親を持つ子供が東大に入学する様なニュースが流れれば「そういう人の方がちゃんと教育出来そう」に変わるのだ。
健常者の人は自分の考えの浅はかさを棚に上げて右顧左眄し時と状況で「知的障害はこう」とブレ過ぎな意思で決めつけないで欲しい。
誤解を恐れず言えばケーキの切れない非行少年たち、の著者はスキルが浅い。
長きに渡り精神科医をやっていながら境界知能を最近知った事一つ取ってもこれは正しい見解だろう。
また境界知能や知的障害者は全てが歪んで見えるなどと言う発言には失笑してしまう。
ただ知的な問題は精神科の管轄ではないし、後半の境界知能に関する支援の重要さ等には共感出来る部分があり、全てを否定するつもりはない。
著書は境界知能を世間に広める事に貢献しているとも考えている。
彼が考案したコグトレにも期待はしている。
それでもこれからこの本を読む人はこの本に境界知能の全てが書かれている、または境界知能はここに書かれている事が全て、と捉えないで欲しい。
あらゆる事を受け入れる際、既存概念にとらわれてはいないか。
当事者でもないたった一人の人間の見解が本当に正しいのか。
その事に常に懐疑的であって欲しい。
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