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プロポーショナルメトリクスと文字詰めの限界

おはようございます。今日は朝にこの記事を書いています。本日は「プロポーショナルメトリクスと限界」というタイトルで書きました。


プロポーショナルメトリクスとは?

「プロポーショナルメトリクス」とは、個々の文字ごとに設定している文字詰め情報のことです。文字組をする際に文章を流した時、そのまま(ベタ組み)の状態だと文字ごとの隙間がバラついていて少し読みづらくなってしまうことがあります。わかりやすいところで言うと、数字の「1」と「4」では、フォントによって文字の左右の空きが異なって見えることがあります。

実際にはどちらも文字の「仮想ボディ」にあたる枠は同じ大きさですが、中の字面の面積が異なるので、このような現象が起きてしまいます。

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⚫︎仮想ボディとは?
文字は元々、活字と呼ばれる「組み並べて印刷に使う、普通は金属製の字型」のことを指していました。
現在では、デジタル化が進んだことにより印刷用の文のことを活字と呼びます。
かつての活字には、四角い金属内に文字が刻まれていて、その金属の枠の大きさを「ボディ」と呼びます。
DTPでは、実際に金属のボディは存在しないため、「仮想ボディ」という名前で表される字面に対する外枠のことを指します。

プロポーショナルメトリクスのメリット

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先ほど述べたように、プロポーショナルメトリクスは個々の文字ごとに設定している文字詰め情報のことで、文字ごとの字面から仮想ボディを含む文字幅をできるだけ違和感なく文字組ができるように設定されています。ただ、このプロポーショナルメトリクスは、フォントの中に情報として埋め込まれていますが、文字ごとに1つ1つ細かく設定していくためフリーフォントなどには基本的に付与されていないことが多いです。

ちなみに、フォントで有名なMORISAWA(モリサワ)のフォントには原則この「プロポーショナルメトリクス」が付与されていて、IllustratorやIndesignなどで文字組をする際、OpenTypeパネルからONにすることができます。

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プロポーショナルメトリクスの限界

ここまでの説明を聞くと、一見プロポーショナルメトリクスをONにしておけば綺麗に文字組ができると思ってしまいますが、実際は限界があります。理由としては、文字組が綺麗に見えるためには、それぞれの文字の文字詰めも大事ですが、何より前後の文字が何かによって最適な文字詰めが変わってきてしまうからです。

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例えば、「A」と「W」などがわかりやすいですが、「AWA」と文字が続く場合では、「WWW」と文字が続く場合に比べて文字間を詰めてあげないと綺麗に見えない場合があります。

メトリクスでペアカーニングを

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文字詰めには、「メトリクス」と呼ばれる設定があります。この「メトリクス」は、文字の組み合わせ(ペアカーニング)によって自動で文字詰めをする設定のことです。「メトリクス」の他に「オプティカル」という設定もありますが、こちらはIllsutratorなどのソフトウェアが文字を自動で認識して自動文字詰めをする設定になります。

この「メトリクス」という設定では、「プロポーショナルメトリクス」と同じくフォントに埋め込まれたペアカーニングの情報を使って、前後の文字を含んだ文字詰めを行ってくれるため、ベタ組みをする場合に比べて綺麗に文字組をすることが可能になります。

2つの設定を組み合わせて使う

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上記までで述べた「プロポーショナルメトリクス」と「メトリクス」の設定は、組み合わせて利用することも可能なので、特に和文フォントを利用する場合には文字組がパラパラとしがちなため両方をONにして使用することも検討してみてください。

少なくとも、この「メトリクス」に含まれるペアカーニングの情報は、書体デザイナーと呼ばれる方々が設定してくれているもので、感覚で詰めるのに比べて綺麗に文字詰めをしてくれる可能性が高いといえます。

ただし、使用するフォントの種類によってはペアカーニング情報を持っていないため「メトリクス」が利用できない場合もあります。

最後は自分の感覚を信じて磨く

自動文字詰めが本領を発揮するのは、特に長い文章を組む場合です。数百〜万単位の本文などを自力で全て綺麗に文字詰めするという作業は現実的ではないので、このようなフォントに埋め込まれた情報をうまく活用していくことができればより読みやすい紙面を作ることができるのではないでしょうか。

とはいえ、自動文字詰めも完璧ではなく、複数書体を組み合わせたり、シャドウや縁をつける処理を行った文字は、再度目で見ながら作業者の感覚で文字詰めをしてあげることが必須です。見出しやタイトルなど、ぱっと見で目立つ箇所や短い文章などは、自動文字詰めに頼らず自身の感覚を信じて詰め切ることも忘れずに。

文字詰めに正解はない

ここまで書いておいてなんだという感じではありますが、自動文字詰めも根本は誰かが目で見て最適だと思う文字詰めを設定しているに過ぎません。完璧な文字詰めは数式で表せるものではないので、厳密に定義もされておらず、ある程度経験則、ノウハウがベースの知見として広く知られているだけです。

限りなく正解に近い文字詰めはあるかもしれませんが、やはり「いいな」「読みやすいな」と思うものをたくさん見て、自身の中に感覚的に刷り込んでいくことが最後の最後で必要になってくるのかもしれません。


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