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『拝啓 私が会いたかったあなたへ』#1 小説家のあなたへ

『拝啓 私が会いたかったあなたへ』って?

はじめまして。ボードゲームを作っているましかまるです。
あるとき、私の友人がこんなことを言いました。
「ましかまるくんって人脈広いよね、いろんな人の意見が聞けて楽しそう。」
そんなことないと思ったんですが、色んな人からそう聞くもんで。
学生のうちにしかできない(かもしれない)、企画を思いつきました。

いろんな人が「会いたがっている」人を繋いで一冊の本を作ろう!

「一方通行な交換ノート」とでも言いましょうか。

  • インタビューして記事を書く

  • その人が会いたい/羨む人の条件を指定

  • 条件に合う次の人をましかまるの友人内で決定

  • 次の人にインタビュー

を1冊のノートが終わる、つまり60人にインタビューするまで続けようという企画です。制限時間は2年間!およそ12日に1人という計算になります。ひえー。

1人目をどうするか?

企画の大まかな内容が決まったら、今度は方針を考えました。基本的には、「私が羨ましい人・到達できない目標」をつなごうと思っていました。そうすれば、巡り巡って自分のいい部分を見つけることができるかもしれないと思ったからです。
これは後述のとある理由で断念するのですが、私が一番羨ましいと思っていた、ある人に連絡を取りました。

みえみえの予防線を張る、雑魚いましかまる

この人は、中学・高校で同級生の小説家。正しくは大学で小説を書くことを選考している学生。どうしてこの人のことが羨ましかったかは後々わかるとして、高校を一緒に卒業した記憶はなかったんです。その真意を確かめるためにも、一人目はこの人に決めました。

この人のことを「小説家」とします。


2023.4.11 来る初日

ということで、京都の小洒落た料理屋さんに来ました。ブログには写真が必要と気づいたのが取材開始後1時間くらいだったので、食べかけの写真になります。

海鮮中心でした。鰹が美味しかったです。

ましかまる「いや実はね、今日は小説家にインタビューをしたいんだよ。」(なおまさかの初出し情報。ここで断られてたら企画終了だった。)
小説家「え、嫌だよ?」

終わった…

まあしかし旧友ということもあり、嫌々ながら取材を受けてくれることに。いきなり小説のことを聞くのはちょっと躊躇われたので、高校時代の話から聞くことにしました。

過去~現在

同じ学校に在学中

―― 小説家の小説を読んだのは、このときが最初だったな。USBメモリに入ってたプロットを勝手に読んだんだよ。そのときから面白い小説を書くなと思ってたよ。

小説家「あの雑巾のやつでしょ?まじで何やってるんだよ…。」

―― で、高校の時に俺が小説家に会った最後の記憶は、2年生の頃の文化祭なんだよね。小説家の書道パフォーマンスが終わった後に、手を振った記憶があるの。

小説家「いや、まったく覚えてないな。そんなことあったっけ?あの時期は体調が悪くてあんまり記憶にないんだよね。」

―― え、そうだったの?

小説家「うん。文化祭と体育祭が終わって、体調が悪すぎて休学した。まあ、自分的には退学のつもりだったんだけど。」

―― それまったく知らなかったな。

小説家「先生から説明なかったの?生徒会のメンバーにはきちんと説明しておくように、お願いしたんだけどな。そもそも、生徒会に入る時点で体調が芳しくなかったから断ったのに、無理やり入らせられたんだ。学校で吐いてたりもしたんだよ。」


memo:小説家はストレスから逆流性食道炎も発症。ましかまるも同時期に逆流性食道炎ということで、まさかの意気投合。中学生の頃お揃いにしていたキーホルダーがほぼ同時刻に粉微塵になった疑惑と言い、小説家はなんだか不思議な同級生だ。


通信制高校、そして大学へ

―― えー、全部初耳。休学してからはどうしてたの?

小説家「半年間はゆっくり休んで、次の年から通信4年制の高校に3年次で編入した。ここで、ましかまるくんとは1学年の差ができたことになるね。別に行きたいわけじゃなかったけど、通信には友達も居たし、なんとなく行ったんだ。」

―― 通信制高校を卒業した後の進路はいつ決めたの?

小説家「4年になって進路を決めなきゃならないってなったときに、ほとんど思いつきのように決めたね。小説書くぞ!って」

大学正門。「天に翔ける階段」というらしい。

―― 大学ではどんなことを勉強してるの?高校の国語の授業とか、読書意見交換会とは違うの?

小説家「まあ近いものはあるかもしれないね。違いと言ったら、自分で書いた小説に対してコメントをもらったり、小説をワンライン(ここでは、登場人物の変化の様子をまとめ、因果関係を明確にしたもの。の意味。ログラインとも。)にして、それが他人と分析が一致しているか、正解はどれなのかを議論したりすることかな。」

―― そして、そんな授業を受けながら書いた作品で、某文学賞を受賞したというわけですな。おめでとうございます。

小説家「ありがとう(笑)、1000作くらいしか応募のない賞だから、決して大きい賞とは言えないんだけどね。」


memo:小説を書くことは、通信の第3学年のときも辞めていなかったらしい。継続は力なりとはこのことだな。


小説を書くこと

受賞と心の変化

―― 賞を取って、どうだった?嬉しかった?

小説家「それが、最初はあんまり嬉しくなかったんだ。賞に応募された作品の中では一番面白かったのかもしれないけど、それは世の中で一番の小説家だ!というわけではないんだし。
大学に尊敬する先輩が居て、その人の小説を読むと自分は劣ってるなと思わされてた。その人は、言語感覚が私とはまったく違う。そうだな(ましかまるくんのような凡人にもわかる言葉で言えば)、突拍子もないことを突然書くのが得意で。例えば、怒ってるときの発言は泣くのではなくて…(不躾に”先輩”に許可を取るわけにもいかず、泣く泣く割愛)」

―― なるほどね。今は受賞して嬉しいと思えてるの?

小説家「そうだね。と言っても落ち着いたのはここ1,2ヶ月くらいのことだよ。賞を受賞して、2,3作書いて商業誌に載せてもらってから、『商業でやっていくうちに、創作に関する劣等感みたいなものは薄れ始めていったね。しかも、学生で商業、ってなかなか居ないし。(えっへん)


memo:そういえば、小説家の受賞作のオチはかなり驚かされた。もしかして、先輩を意識したのかな。尊敬する人、愛する人を模倣するのは、何かチカラが働くのかもしれない。いやはや、だとしてもめちゃくちゃすごいぞ。


今後

―― 来年、学部は卒業になると思うんだけど、今後はどうするの?小説はどんな感じで続けていくの?

小説家「大学院に進んでみようと思ってるよ。でも、大学院は修論があるから怖いな。うちは芸術系の大学だから学部卒論=制作なんだよ。だから学部を卒業するときは小説を書けばいい。だけど、大学院を卒業するため修論は普通の論文なんだ。怖いーー。」

―― その後はどうするの?小説家になってそれだけで食っていく?

小説家「いや、ちゃんと正社員で定職につきたいかな。小説に関係ない仕事でも全然いい。だって、いつ”居なくなる”か不安でしょ?結婚にも向いてる気がしないし。正社員で収入もらいながら、小説は続けるよ。」

―― 安心した。センセイの小説が読めなくなるのかと。

書いていて辛いこと

―― 書いていて辛いことはあるの?

小説家「編集さんに、自分では納得している表現とか構成を変えろって言われたときかな。しかも、自分が一回通ってやめたやり方に直せとか言われちゃったりして。文句つけられても、自分の中では満点なんだよ。」

―― ボードゲーム制作におけるテストプレイと同じだ(笑)。それはもう考えたんだわ!2分で作ったわけじゃないんだからさ!って言いたくなるよね。

小説家「わかるわかる!でも商業誌に載る以上、仕方ないよね。なんとか折り合いを付けてやってるよ。」

「成功」

小説家は「成功していない」?

―― この企画で小説家を一人目に選んだのは、俺が小説家のことを羨ましいと思ってたからなんだ。申し訳ない表現だけど、学年のレールを外れた人間が、レールをしっかり辿った俺や他の人より大成功してる。もちろん努力もあったんだろうけどさ。

小説家「あんまりそうは思わないんだ。特に大成功の部分が。大学の先生が言っていて共感したんだけど、『作家はウソの物語を書いてお金をもらっている要らない職』なんだよ。社会に資する訳では無いし。」

―― そうかな?読者全員が楽しめるじゃんか。

小説家「これもその先生の言葉なんだけど、『芸事の人間はみなヤ○ザ』だって。あんまり褒められた人間じゃないってことよ。」

―― うーん、納得いかないな。

小説家「ましかまるくんの言う『レールを外れた』思いは一緒に通ってた高校を退学してから、今でもずっとあって。ヤ○ザって表現が妙にしっくりきちゃったんだよね。だからましかまるくんを含む”普通の”大学生はすごいと思う。勉学から逃げなかった。私は逃げたってことだから。
でも、今の大学は楽しいし、学歴コンプレックスとかもないよ。普通の勉強したいって思ったこともないし。通信制の時期は引け目を感じてたこともあったなぁ。けど、進路を決めたのと同時期になくなったよ。」


memo:小説家は逃げてなんかない。と直ぐ言えばよかったと後悔している。体調不良や周りの悪い環境に、小説家の真面目さが追いつけないだけなのに。


次は誰につなごう?

―― 話はここくらいにして、次は誰につなごう?尊敬している人ってどんな人?

小説家「そうなると、普通の大学生、ってことになっちゃうよね。学者さんとかでもいいけど。ましかまるくんでいいじゃん。」

―― それは困る(笑)

と、こういうわけで、「私が羨ましい人・到達できない目標」だけでつなぐのは諦めたわけです。臨機応変につなぐことにしました。

―― じゃあ、話を聞いてみたい人はどんな人?

小説家「…アルコール依存症から脱却した人?」(最初の候補がありましたが、私の知り合いに居なさすぎたので却下。)

―― しょっぱなからかなりハードルが高いというか、少なそうだね。でも1人だけ居るよ!

小説家「え、ほんと。」



小説家にノートを書いてもらった。



取材を終えて

気づけば3時間くらい話していた。自分の羨んだ小説家は、自分を羨んでいた、というなんだかありきたりな物語が完成してしまって、ほんのすこしだけ、がっかりした。
小説家にも、羨んでいる人・届かない人がたくさんいた。自分の才能をいつでも百パーセント信じきれているわけでもなさそうだった。それを聞いて安心してしまったのは、私が悪い人だからなのかな。

次回予告

小説家がノートに書いた質問を中心に、「アルコール依存症から脱却した人」の記事を書きます。ただし、小説家がノートに書いた質問の内容がはっきりわかる書き方にはなりません。今回と似た形になると思います。(詳しくは下記)

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有料部分について

第1回にして大変申し訳無い話なのですが、有料部分を設けたいと思います。有料部分には、以下のコンテンツが含まれます。

  • 小説家が交換ノートに書いた内容(スキャン次第画像を追加。現段階では文字起こし。小説家本名など、個人情報にまつわる部分を除く。ここに質問の詳しい内容が書いてあります。

  • 採用されなかった次の人の候補、不採用となった理由

  • 記事の流れ的に組み込めなかった会話

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