ひるのゆめにっき(2)

2024/07/10 午後2時より1時間程
自宅、2階より寝室
冷房は28度、カーテンは中途半端に開いている。

いつもの様に希死念慮に襲われながらYouTubeを開き、お気に入りのプレイリストから曲を流してイヤホンで聞く。いつも通りだ。毎日そうしている。薄いタオルケットをかけながら、メガネはその辺に放って、目は少し閉じて、何も無い壁の方を向いて。

ガチャ、とドアの開閉音がした。
父親だろう。いつもこの時間には帰って来るのだ。
「あーあ、またああしてるよ。邪魔だわあ」
思わず閉じかけていた目を見開く。その声は母親だった。帰って来たのは母親だったのか。だとすれば今はもう16時半頃なのか、時間を確認したいが起きていることを悟られたくないため身動きが取れない。声はこちらに近付いてくる。
「毎日こうしててさ、何もしてないけど、恥ずかしくないの?邪魔だわ、本当に邪魔。うざいわ。」
イライラしたような刺々しい声。妙にくっきりと聞こえる母親の声。肌が粟立つのを感じた。背中越しに人間からは到底出せないような地を這うような圧力を感じる。
これ は、母親なのか?母親を模した何か かもしれない。怖くて振り向けない。万が一現実でもこんなこと言われるのは真っ平御免だ。そうしているうちも、声は何か呟いている。確実に距離を詰めながら、何度も、何度も。


気付けば目が覚めていたらしい。時計を確認したら15時過ぎだった。母親は帰ってきていないはず。いや、絶対に帰ってきていないのに、確認せざるを得なかった。丁度学校終わりの妹が階段を上がってきたので、母親が居るか問うてみる。
「さあ。多分居ないよ。」
半端な答えにイラつきを覚えながらわざと音を立てて階段を降りる。1階に居たのは愛犬と父親だった。
やはり、あれは夢だったのか。
夢だとしても、現実だとしても、胸糞悪い。


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