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デザインとは、何かと何かの間を繋いでいく仕事【安藤僚子氏(空間デザイナー)講師インタビュー②】

こんにちは!
9kidslab-ナインキッズラボは「デザイン」を通じて自分なりの視点や解決方法を見出し、人生を楽しみながら切り拓いていける子どもを育てる、小学生対象のオンラインクリエイティブスクールです。

それを実現しているのは
第一線で活躍する個性豊かな講師陣と彼らが作り出す掛け合わせの授業です。

講師インタビュー第2弾は
空間建築とスタイリングが掛け合わさった「つながりのデザイン」クラスの空間建築を担当する安藤僚子氏です。

インタビューを通して、安藤氏のデザイナーとして大切にしたい思いや「デザインの本質」について知ることができました。また、「空間デザインを学ぶことが子どもの日常にどのように役に立つの?」やお家の中でも親子で楽しめる「おすすめのミュージアム」についてもお話しくださいました。

今回も9kidslabの魅力について伺っています!!


安藤 僚子氏
空間デザイナー。
多摩美術大学非常勤講師。
空間デザイン事務所デザインムジカ代表。
店舗設計、展示の会場構成のほか、ワークショップやアートインスタレーションなどを手がける。
領域の垣根を越え、誰にでも開かれた場で共創する活動を続けている。
■ 受賞歴 「スポーツタイムマシン」(文化庁メディア芸術祭優秀賞、アルスエレクトロニカ入賞)
■担当コース:「つながりのデザイン」クラス 空間建築

安藤さんの原点 空間デザインに興味を持ったきっかけ

小学生くらいの時から、学校の授業の中で美術の時間が一番好きでした。物を作ったり絵を描いたりするのが大好きで、いつも「美術の時間、早く来ないかな」と思っていました。その頃からなんとなく美術の分野に進みたいという思いがありました。

美術の分野の中でデザインに興味を持ったのは、自己表現というよりは何かと何かのためになる、何かと何かの間になるようなことに興味があり、中学生ぐらいの時からデザイン学科に進もうと思っていました。空間に興味を持ったのは、父が建築会社を経営していたこと、一番身近な親の職業が建築がらみであったのも理由の一つだったかなと思います。

また、美大に行くための受験勉強でデッサンを最初に習うのですが、その先生に「物をずっと描いていてもうまくならない」「物と物の間の空間を意識しないと絶対上手くならない」ということを教わり、デッサンの勉強を通して空間をすごく意識するようになりました。

「自分は物よりも、物と物の間の関係とか空間に興味があるのかも」と思い「それをデザインできるのは空間デザインや建築なのかな」「そうするとより大きいものがデザインできるのではないか」と気づいて、空間デザインに徐々に興味を持った感じがあります。

現在の主な活動

インテリアデザインをメインに自分のデザイン事務所「デザインムジカ」で活動しています。インテリアというと、一般的にお家の中をイメージされる方が多いですが、住宅のインテリアではなく、お店や展覧会など、いろんな人が楽しめる場に興味があり、会場のデザインやお店の設計などをやっています。

もう一つは5年前から近所の友達とリソグラフ&OPEN D.I.Yスタジオ「Hand Saw Press」という印刷とものづくりに特化したスタジオを運営しています。料理人や建築家など全然分野の違う仲間と集まり、それぞれ自分が持っている工具を持ち込んで、仕事ではなく何かを思い切り作りたい時に、第2の拠点として活動しています。

私は自分の考えを形にし、自分の作品を作ることよりも、人と一緒に何かを作ることに興味があります。ずっとデザイナーとして仕事をしてきたので、自分のアイデアや考えに飽きてしまっているところもあり、普段の生活であまり接しない人と一緒に話して何かを作ると「自分の予想を超えて「そんな感じになっちゃうんだ」という自分が考えてもいない方向のアイデアを知ることに喜びを感じます。

東京に長く住んでいるのですが、東京以外の他の地域で活動している人と一緒に作ると、全然知らなかったことを学ぶことができるので、国内外問わずそういう場所に呼ばれたらなるべく行って作るようにというのを大切にしています。

地方活性化の活動から見えた「デザインの本質」

地方での活動は、友人がたまたま過疎化が進んでる和歌山県の古座川町という山里の町役場に3、4年くらい赴任していた時期によく遊びに行っていたのがきっかけです。

野山のお花で小さなブーケを作る「ハナアミ」という活動を続けているおばあさんたちがいて、それがすごく美しくて感動して、3年間くらいそのブーケを買わせてもらったり、空間のディスプレイに使ったりと花を編むプロジェクトを応援していました。また、簡単なwebサイトを作って年に2回くらい、母の日やクリスマスなどに欲しい人を集って注文を受けていました。

この活動で私が感動したことがあって、そこで生まれ育ったおばあさんの1人が「今まで何もない田舎だと思ってたけど、あなた達みたいな人がきて自分が作ったものを褒めてくれると、「道端に生えている草花が宝物の山のように見え始めた」「あの花も使えるのでは?この葉っぱも使ったら可愛いのでは?」と「何でもない田舎の山の見え方が変わった」と言っていました。

ただ私は田舎に遊びに行ってただけなのですが、違う人の視点やアイデアが入ることで、今まで当たり前に思っていた考え方とか見え方が変わり、新しい発想が生まれること。「そういうのって、デザインだな」と思います。「ハナアミ」の活動を通して人と交流することで、自分ではどうしても気が付かない視点が生まれました。私たちがおばあさんたちから学ぶことはすごくあったし、逆に大先輩のおばあさんたちも、私たちと活動することが刺激になって村のことを見直したりして、そういうことって当たり前のことですが大切にしたいと思いました。

かっこいいものを作るということがデザインの仕事ではなく、そういうコミュニケーションの延長にあり、そこから何か気づくことで次に繋げていく、何かと何かの間を繋いでいく仕事という感じがします。

空間デザインを学ぶことにより子供の日常に役にたつこととは?

私が子どもの頃は、テレビよりも公園や山など、リアルな空間で遊ぶことが多かったのですが、今の子ども達は本人達が思っている以上にパソコンや携帯などデジタル情報から得られる時間、ゲームやタブレットに触れる時間が当たり前のようにたくさんあり、空間を意識することが少なくなってきていると思います。

物と物の間に生まれてくる空間を学ぶということは、リアルな空間で友達と遊ぶことや人と過ごすことのようなコミュニケーションの練習になると思いますし、普段当たり前にある、自分の周りにある世界を見直す力を獲得できるのではないか、そういうことが身につくのではないかと信じています。

「物と人」もそうだし、「人と人」もそうだし、自然とか環境とか自分自身とか、自分の周りを取り巻く空間というのをみる、観察することによってどんどん広い視野が持てると思っています。

空間は当たり前に存在しているものですが、当たり前に出来上がったものではないことを意識していくことで自分や他人、社会など、最終的には環境、世界、宇宙までどんどん広い視野が持てるのではと思っています。

9kidslabの魅力

いろんな人とものを作るのが好きで、子ども達に教えているというよりも一緒になって作っています。年齢も住んでいる場所も全然違う子ども達が一緒になって何かを考えたり作ったりする機会は意外とない、と思っているので私も楽しんでいます。
与えるよりも一緒に生み出す授業というのが9kidslabの魅力だと思います。

今後、9kidslabで挑戦していきたいことは?

今はオンライン授業の中で、空間を意識しながら絵を描いてもらったり模型を作ってもらったりしています。それがだんだん大きなものを作るところまでいけるかなと思っていて、自分の体を包み込むくらいの大きいものを作ったり、最終的にいつかみんなで一緒に作ることができたら嬉しいです。
とにかく大きいものを作るところまでやっていけたらいいな、できるかなと思っています。

安藤氏おすすめの博物館

✨👇イチオシ👇✨
■国立科学博物館 地球館「親と子のたんけんひろば コンパス」
(東京都台東区上野) 
子どもじゃないと入れない子どものための部屋、標本、剥製などリアルなものを飾りながら全体が公園みたいな作りになっています。ワークショップできたり、本を読んだりするスペースがあったりと自由に過ごせます。
(※注:現在は「歩いてみよう!コンパス」として、哺乳類の剥製やティラノサウルスの全身骨格など、順路に沿って展示室の一部を公開しています。)

■北方民族博物館 (北海道網走市)
北極圏(ノルウェー、イヌイット、アラスカ、カナダの上など)の文化を中心に展示されています。地球の北側を中心にした視点でとらえたことがなかったので、すごく面白かったです。過酷な環境で、ものすごく知恵を出して生きている、人間の叡智みたいなものが感じられます。「おうちミュージアム」というwebでお家からも展示の一部が見られるようになっています。

■国立民族学博物館(大阪吹田市)
世界中の民族の展示品がものすごい数展示されているのですが、クライマックスとして日本の祭りコーナーがあって訪れるたびに毎回感動するミュージアムです。バーチャルミュージアムがあり、各展示場の様子をさまざまな角度から見ることができます。