五十音小説「え」
「え?さいこん??」
「パパ"さいこん"ってなに?」
それは今から3ヶ月前の出来事。
小学生の私には聞いた瞬間よく分からなくて
パパの話を聞いて分かったのは
もうすぐ自分に
ママと中学生のお兄ちゃんが出来るということ。
そして現在
4人で暮らして2ヶ月経って
ママは凄く優しくてお料理が上手な私の憧れの人で
お兄ちゃんは沢山私の話を聞いてくれて
「一緒に居たい」と言えば
可能な限り一緒にお出かけもしてくれる。
部屋も私がお願いすると一緒の部屋にしてくれた。
…そして私の好きな人。
それを小学校の友達に話すと
「好きになっても兄妹だから結婚できないよー?」
と言われてショックだった。
それから数日後
いつものように家族が帰ってくるのを
テレビをみながら待っていると、
テレビの中では男女がインタビューを受けていて、
「さっき入籍してきました!」と話している。
いいな〜と思いながら根掘り葉掘り聞かれて答える
男女の話を聞いていると、
「実は俺達連れ子の兄妹なんです!
一目惚れして〜…」
その言葉を聞いたとたん
バクバクと破裂しそうな心臓を
手で必死に押さえながら
食い入るように男女を見た。
そしてその日の夜
家族で夕食を囲みながら色んな話をしていた時
我慢出来なくて言った。
「パパ…ママ…
私、お兄ちゃんのお嫁さんになりたい!」
言った。
言ってやった。
そして
パパとママの反応はというと、
私が求めていた反応では無かった…
パパとママは口では
「昔はパパのお嫁さんになるって言ってたのに〜」
「お兄ちゃん羨ましいな〜」とか言ってる…
明らかに子供の戯言だと思われてる。
しょうがないのかもしれない…
まだ私は小学低学年だし。
お兄ちゃん中学生の年の差5歳だし。
まさか本気発言とは思わないだろう。
…というか。順番間違えた。
お兄ちゃんに言うのが最初でしょ。
あーもぉー…
連れ子が結婚出来るって知って
浮かれ過ぎた…
くそぉ…
静かになったお兄ちゃんをチラッと見ると
ごちそうさまをして
部屋へ戻ろうとしているところだった。
私も急いで食べて
後を追うようにして部屋へ入ると、
お兄ちゃんは机に向かって勉強してた。
さっきの事をもう一度言おうと思ったけど
勉強の邪魔はしない決まりだから
私も隣で勉強することにした。
暫くして
静かな部屋にお兄ちゃんの声が響いた。
「…俺が高校生になったら部屋は別々な。」
お兄ちゃんを見ると
目線はノートに向いてて
こっちを見る気は無いらしい。
耳が赤い…?
いつもと違うお兄ちゃんの態度に戸惑いつつも
私から離れようとするお兄ちゃんに初めて
ムカついた。
そして、思った。
私が高校卒業したら好きって言う。
本当は今日から
毎日言いたいぐらいだけど…
きっとパパママみたいに
本気って伝わらないから。
だから好きの代わりに行動で示してやるんだから。
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