見出し画像

五十音小説「お」

「おー!こっちこっち!
お前の旦那もう来てんぞー。」


同窓会で久しぶりに
みんなに会えたと思った途端これだ。


懐かしいなと思いつつ
昔のように笑いたいけど顔が引き攣る。



旦那と呼ばれた幼馴染は

私の長年の想い人。

はじめの頃は
幼馴染という立場が嬉しかったけれど

告白を先延ばしにすればするほど
幼馴染の立場が辛くなってきて

そろそろ限界。


学生の頃から変わらず今も
2人で遊ぶ仲だけど、

最近は辛すぎて誘いを断り続けていたりする。


そんな事を考えながら

友達と思い出話をしていたら
かなりお酒が進んでいてらしく急に眠くなってきた。。





とりあえず
眠気を覚まそうと化粧室に向かっていると

最悪なことに
正面から幼馴染が向かってくる。




明らかに顔が怒っている…
きっと避けてることに対してだろう…



怒られる覚悟で立ち止まり
相手の言葉を待つ。



「お前。なんでいつもと格好違うわけ?」



気付けば私の眼の前には誰も居なくて




幼馴染の顔が
私の露出された肩に乗っていた。




突然伝わってきた体温に息も出来ず

顔が離れたタイミングでゆっくり息をは…


「痛っ…」

(〜〜〜〜っ噛んでる!!!)




「…これ着とけ。」



突然自分の上着を押し付けては
何事も無かったかのように去っていく幼馴染。




……。




震える手でゆっくり肩へ手を伸ばすと


そこは少し濡れていた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?