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#6 恐怖の北京空港乗り換え

23日間のヨーロッパ周遊に向けて日本を発つ日が来た。

家を出発したのは、まだ夜も空けていない真っ暗な早朝4時すぎ。羽田空港行きの高速バスに乗るべく、バスの停留所まで母に車で送ってもらった。
母へ、あの日は早朝に車を出してくれてありがとう。感謝しているので、数年経った今でも「飛行機の時間、もっと考えればいいのに……」と小言を言うのは勘弁してください。安い飛行機がこの時間しかなかったんです……。

母の運転する車の助手席で、忘れ物がないか、無事にヨーロッパ周遊を遂行できるかとドキドキしていた私は、おそらく心ここにあらずだったのだろう。車を降りてバスの停留所に向かう途中、大きなキャリーケースをゴロゴロさせながら膝から盛大にずっこけた。

早朝ゆえに周りに人はほとんどいなかったが、恥ずかしさと膝のお皿が割れたんじゃないかと疑うぐらいの痛みに耐えきれず、一旦、車からこちらを伺う母の元に戻った。
遠くからでも分かる、母の冷たい視線が痛い。
膝もものすごく痛い。
冬用の厚手のズボンを履いていたので出血しなかったのが不幸中の幸い。痛いけど歩けているので骨は無事そう。
車にたどり着き、23日間会うことはないと思っていた母と数分で再会した。
開口一番「なにしてるの!?」と母。
私も己に問いたいところです。
ズボンをまくり上げると、左ひざには大きな大きなアザ。真っ青で気持ち悪いし、触るとうっすら腫れていた。とにかく膝のお皿が割れていないことを祈った。
母に「ケガに注意しろ、とにかく生きて帰ってこい」と口酸っぱく言われ、再度送り出された。
先行き不安すぎるが、ミズノと合流すべく、左足の痛みに耐えながら高速バスに乗り込んだ。

午前6時12分。羽田空港国際線ターミナルに到着し、ミズノと合流した。
私たちが乗る飛行機は中国国際航空。8時30分に羽田空港を発ち、11時30分に北京首都国際空港に到着。そこで乗り換え(トランジット)を行い、17時15分にフランクフルトに着く予定だ。フライト時間はおよそ17時間。機内食と睡眠、映画鑑賞を楽しんでいれば、意外にあっという間だ。
無事に搭乗手続きを終えて、飛行機に乗り込む。

ちなみに私は搭乗手続きのときに「キャリーケースに入れてはならないものは入っていませんね?大丈夫ですね?」と再三確認されて自信満々に「大丈夫です!」と答えておきながら、預けたキャリーケースにモバイルバッテリーを入れていた。アホの所業。
フランクフルトのホテルに着いてキャリーケースを開けると、見覚えのない黄色い紙が入っていて「お前モバイルバッテリー入れたな?入れてはダメと言っただろ!北京で没収したから!!」と、英語と中国語で書かれていた。
警告っぽい出で立ちの紙にビビりながら翻訳して内容を理解するまで、なんかやばい通達かと思っていたので、モバイルバッテリー没収で済んで一安心した。各位、お手数おかけしすみません。

私のモバイルバッテリーが没収された北京首都国際空港では、ミズノも私も若干手こずった。
手荷物検査と同時にくぐる金属探知機のゲートだが、なぜかミズノと私だけ永遠に引っ掛かって抜け出せなかった。
他の人はすんなり通り抜けられるのに、ミズノと私は通るたびにビービー鳴る。ベルトも外したし、金属らしきものも持っていないのに。
女性の職員が手持ちの金属探知機を使い、最終的には触診のごとくチェックを受けた。
職員同士でなにか話している。中国語がまったくわからないが、多分バカにされていた。人をバカにするときの空気で満ち満ちていたもの。
金属探知機が反応した原因を突き止めたのか否かは不明だが「もう行っていいよ」的な雑な誘導を受けて解放された。
あとからミズノに聞いたが、靴底が反応することもあるらしい。
……スニーカーの靴底って金属なのか?
とにかく異国の地で金属探知機が反応し続けるのはまあまあ怖い。あと関係ないが、北京首都国際空港は、不可思議な香りがした。違法性のある臭いではなく、香辛料とか、なにか食物とか、おそらくそんな類の、端的に申し上げると、臭かった(ド直球)。
日本は空港に着いた瞬間から醤油の香りがすると聞いたことがあるし、韓国に行ったときは飛行機を降りるとすぐにキムチの匂いがした。
きっと、中国特有の食べ物の香りなのかもしれないが、正体不明かつ日本では嗅ぎ慣れない香りゆえに、良い匂いと感じることは出来なかった。

余談だが、ミズノは鼻がすこぶる良い。嗅覚がかなり敏感。
イタリアに行ったときは、あるチーズを食べて第一声が「足の臭いがする!」だった。そのチーズをこれから食べる私のために言葉は選んでほしかった。美味しかったからいいけど。

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