A君はその日初めて大きな仕事を任された。
いつもなら地元から出ることはほとんどないが、
その日は車を走らせK県に向かう必要があった。

慣れない長距離運転で疲れながらもなんとかK県に到着し、無事に仕事も終わらせた。

予約していたホテルにチェックインし、
眠りにつこうとするも、目が冴えて眠れない。
運転や仕事で体は疲れ果てているのにな。

無理矢理にでも眠ろうと1時間ほど苦戦したが、
結局眠れなかったので、外を散歩することにした。

繁華街の近くのホテルに泊まっていたので、
土産屋に飯屋、飲み屋に風俗と退屈することなく、
街並みを眺めながら散歩をしていた。

ぶらぶらと歩いているうちに、繁華街を外れて人通りの少ない場所まで来てしまった。
そろそろ戻ろうかと振り返った時に、目の前に真っ赤で巨大な鬼が立っていた。

このままじゃ踏み潰されてしまうと、A君は急いで道の端に避けた。鬼はA君のことを気にも留めぬ様子でそのまま歩き出した。

唖然としながらも歩き出す鬼を眺めていると、鬼が両手に巨大な鎖を引き摺りながら歩いていることに気がついた。
鎖の先を目で追うと、大量の人間が鎖に繋がれて歩いている。繋がれた人間は皆生気がなく俯いたままゆっくりと歩いている。

何時間何十時間と経っただろう。気がつくと朝日が登っていてそこには誰もいなかった。

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眠れない夜に

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