大学生の頃の話。
万年金欠だった僕は友人のツテで、
深夜0時から朝の5時まで
大根の収穫のバイトをすることにした。

収穫作業と深夜の作業に慣れてきたある日、
いつもよりかなり早めにバイトが終わった。
いつもならバイト先から直で大学に向かってたが、
流石に今から向かうには早すぎる。

「どっか仮眠できるとこないですかね?」
先輩たちに聞いてみると、
バイト先近くのコンビニがいいと皆口を揃えて言う。

言われたコンビニに着くと納得した。
駐車場が広いし照明も少ない。
これは仮眠しやすい。
自分以外に車中泊者が居ないのが不思議なくらいだ。

金縛りで目が覚めた。
身体は動かないが瞼は動きそうだ。
目を開くか悩んだが怖くて開けるのはやめた。
しばらくじっとしていると車の周りから、
たくさんの人の気配がしてきた。
どうしたらいいのか戸惑っていると、
車の周りから爆音が聞こえてきた。

白い光の中に 山なみは萌えて

え、合唱だ。
旅立ちの日にだよな…?
え、なんで…?

いま 別れのとき
飛び立とう未来信じて
弾む若い力信じて
このひろい このひろい大空に

曲が最後まで終わると金縛りはとけた。

翌日先輩達にその話をすると、
皆いじわるな表情をした。
「やっぱりか、あそこで寝たら絶対に同じ様な目に遭うんよな。曲は違うんやけどなぁ。俺はコスモスやったわ。」
「俺はカントリーロードやったなぁ。」
「俺はジブリの曲やったで。」
嵌められたのか。
盛り上がる先輩達に少し腹を立てながらも、疑問をぶつけた。
「やっぱり目を開けたら合唱団がいるんですか?」
「いや、そんな可愛らしいもんちゃうわ…。目開けたらしばらく飯食えんなるで。」

結局何が歌ってるかは教えてくれなかった。

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