タクシーのよくある怪談

「お化けとか乗せたことあります?」
タクシーの運転手からしたら、
死ぬほど聞かれた質問で申し訳ないが、
私もタクシーに乗るときに必ず聞く。

個人タクシーに乗ったときに教えてもらった話

その日は土砂降りで、人もまばらだった。
今日は客待ちをしても意味がないな。
街に着いてすぐに撤退を決めた。
自宅まで運転していると、
女が手をあげている。

真っ赤な傘に真っ赤なレインコートの目立つ女だった。

行き先を聞くとアパート名を言われた。
家まで帰りたいようだ。

女を乗せて運転していると、
嫌に視線が気になる。
ミラーを見てみると女がこちらを凝視している。
気持ち悪い客だな。

目的地のアパートの前に着いた。
「着きましたよ。」
振り返ると真っ赤な傘だけを残して女は消えていた。


話してもらって申し訳ないが、
テレビやネットにありそうな話すぎて私は思わず笑いそうになってしまった。
その後は適当に世間話をしていたら、
あっという間に家に着いた。

「さっきの話、嘘だと思ってるでしょ?」
会計の際に運転手に言われた。
私は正直に頷いた。

運転手は黙って運転席を降り、
そのままトランクを漁り出した。
何をしてるのかと疑問に思っていると、
運転手は真っ赤な傘を私に渡してきた。

「あの女の忘れ物です。」

思わず絶句してしまった。

「あと、これはすごい偶然なんですけど、お客さんの家の目の前のアパートが、この傘の持ち主の家です。」

このブログに掲載している階段は99%フィクションです。


傘は私の家にある。


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