「私の飼育箱知りませんか?」
塾の帰り道、背の高い女に声をかけられた。
飼育箱…?
飼育ケースとか虫籠なら分かるが、
飼育箱ってのは初めて聞いた。
「いえ、知りません。」
質問に答えると女は何も言わずに立ち去った。

しばらく経ったある日、
前回遭遇した道と同じ道でまた女に声をかけられた。
「私の飼育箱見てみませんか?」
え、どういうことだ。
戸惑っている私の前に女は木箱を差し出した。
木箱は片手サイズの小汚い小さな立方体で、
中に生き物が入っている様には見えない。

飼育箱を手に取り蓋を開く。
木箱の中にはプラスチックの人型のフィギュアが入っている。
フィギュアは服を着ている。
黄色いTシャツにジーンズ、白いサンダル。
え、自分と同じ格好だ。
驚き顔を上げると女は居なかった。

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