第6回 笹村絵莉那展覧会

第6回 笹村絵莉那展覧会

明日のみ急募 
日当2万円 
労働時間3時間
詳しくは 090 ×××× ××××

ポスティングされていたチラシは誰がどう見ても怪しい内容だったが、ちょうど金欠学生だった自分は思い切って電話をしてみた。

「バイトのチラシを見て電話をかけたのですがまだ応募は可能ですか?」
「ああ!助かるよ!人手が足りなくて困ってたんだ!」
「日当とか大分高いですが、仕事内容はどんな感じですか?」
「明日の午後から展覧会があるんだけど、展示物を会場に設置してほしいんだよね。急に来れなくなった子が何人かいて、かなり高めの時給で人を探してたんだ。」
てっきり法に触れるようなことをさせられるのではないかと危惧していたが、そういうことならばとバイトをすることを決めた。

指定された場所は小綺麗なビルの1階で、入り口には小さな立て看板に「第6回 笹村絵莉那展覧会」と書かれていた。

当日集められたバイトは私を含めて6人だった。仕事内容は簡単で、大型トラック3台に乗ってるオブジェ(アルミニウムの様な色合いの、金属でできたぐねぐねした形の像の様なもの)を会場まで運ぶだけ。まあまあ重たかったが3時間で2万円と考えれば楽な仕事だった。

「今日はありがとう。皆さんのおかげで無事に展覧会ができそうです。この展覧会は会員制で一般には公表していないので、皆さんも周りの人には言わない様にお願いします。」
仕事が終わった際、スーツを着た男が話した。

帰宅した際にふと内容が気になったので、「笹村絵莉那展覧会」と調べてみたが、会員制ということからか1件も検索には引っ掛からなかった。

数ヶ月経って友人に話してみると、友人は苦い顔をしながら切り出した。

「何回も展覧会を開く様なレベルの人名がインターネットに出てこないのは変だし、搬入のバイトはいるのに、搬出のバイトを募集していないのもおかしくないか?」

帰宅してから、チラシの電話番号にもう一度電話をかけてみたが、もうすでに解約されていた。

K県Hさん

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