人生を変えた一冊

お題が出ていたので。

#人生を変えた一冊

学生の頃読んだ、柳田邦男さんの「マッハの恐怖」です。

流石にもう絶版になっているようですが、この本は1966年、約1ヶ月の間に3件連続して起こった大型旅客機の事故の調査にかかわるノンフィクション作品です。
高校時代、柳田さんの作品が好きで、フェイス3の眼やサハリン沖で発生した大韓航空機撃墜事件を扱った「撃墜」などを読みました。
高校時代は、なんだか古臭い感じと思って読まなかったのですが、大学の図書館で読んではまり、文庫本を買いました。

まだジェット旅客機の黎明期に発生した3件の事故は、今のようにボイスレコーダーやフライトレコーダーなどの記録装置もなく、管制との更新記録や乗客の手荷物などの物証から原因に迫るやり方で調査が進められました。

66年3月に発生した、カナダ太平洋航空の墜落事故とBOAC機の空中分解事故はこうした物証を積み重ねて見事に原因の解明に至ったものの、2月に羽田沖で発生した全日空機の墜落事故はパイロットミス説と機体欠陥説を唱える調査委員とが激しく対立し、解明が一向に進まないという状況に陥りました。
最終的には。パイロットミスを濃く匂わせた原因不明という内容で結論づけられました。

それもそのはずで、事故原因の調査を担当した調査団の団長が事故を起こしたボーイング727型機を日本国内に推薦した人物(大学教授)だったのです。
今でいえば、利益相反そのものですが、日本では「事情に詳しい」ということで利害関係を持つ人物に黒白を委ねられるケースは今でも往々にしてみられることです。

今の時点から考えると55年も前の事故なのですが、物証を積み重ねる大切さや、コンプライアンスの重要性という、現在にも通じる教えがあると思います。
一方、今となってはエヴィデンスという観点から若干弱い部分もあり、実際にはグレーのままという印象もあります。

とはいえ、それをも上回る「教え」はあると思います。
時代の波に消えていきそうな名著ではありますが、まだまだ現代にも通用する部分はあり、できれば多くの人に読んでいただきたい一冊です。

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