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コンサルに騙されて会社倒産した、という社長が・・・

数年前のある日、
新規開業したという個人事業主が
「確定申告の面倒を見て欲しい」と事務所にやってきた。
 
60代の男性。
以前は法人経営だったが、
コンサルに騙されて大損失を被り会社は倒産。
コンサルも行方不明だとか・・・。
 
弁護士に依頼して、法人・個人ともに破産手続きをし、
再度、個人事業としてやり直したい、と
わたしの事務所へ税務顧問の依頼にやってきたのだった。
   
話を聞いていた最初は
「運悪く、コンサルに騙されたんだな」と思っていた。
しかし、この事業主が作っている帳簿・資料を見て、
倒産の原因が分かるのに
そう時間は必要ではなかった。
  
債権と債務の管理が全くできていない。
お金の管理も全くできていない。
これじゃあ、自分の状況がさっぱり分からない。
  
以前から、この事業主はこういう体質にあったのだ。
人に仕事を依頼するのはもちろん構わない。
しかし、内容を全然自分でチェックしていない。
任せっぱなし。放ったらかし。
コンサルに騙された、とこの人は最初言っていたが、
騙されたのではない。
大事なことを完全に放置・放任していたのだ。
  
わたしは、一から、この60代のオヤジさんに指導をした。
工事売掛金の発生・回収・残高の管理方法。
工事未払金のは発生・支払・残高の管理方法。
現場別原価管理の方法。
期末の未成工事現場の原価管理の方法。
現金管理と預金管理の方法。
そして、これらについて、エクセルと手書き帳簿とを併用して、
自分で見ても<気持ちいい!>と思えるくらいに、
美しく、かつ、整然と整理する方法。
  
以後、毎年、わたしはこの事業主に改善指導を行ってきた。
年齢はわたしよりもはるかに上だが、
そんなものはビジネスの土俵上では関係ない。
 
「いい加減にしたいのなら、ヨソへ行ってくれ」
「本気じゃないのなら、俺は面倒を見ない」と、
キツイようだが、この人の「根本的なやる気」を
なんとか引き出そうと、わたしも必死に努めてきた。
 
その後、年々、利益が出るようになってきた。
しかし、利益率からみるとまだまだ低い。
 
目標となる利益率のラインを説明して、
売上金額が大きいからと単純に喜ばず、
パーセンテージとしても、
<原価率と利益率>を<現場別にチェック>する方法を
指導した。
 
そんなことを毎年経ていくと、
やはり、物事は良い方向に動いていくものだ。
 
数字としても改善されていき、
この社長の暮らしもよくなっていった。
  
ある日、この社長から電話がかかってきた。
「土地を買おうと思います」と。
 
法人の破産。
個人としての破産。
小さな借家暮らし。
 
そんな中から、この社長は、
60代という年齢にもかかわらず、這い上がってきた。
 
どこかのビジネスセミナーに行った訳でもない。
経営のウルトラCを学んだ訳でもない。
ましてや、年間百万単位のコンサルに依頼した訳でもない。
 
この人は、ただ
●自分の数字を
●自分の力で
●分かる!
・・・ということが、わたしと出会って<出来る>ようになった、
それが要因だ。
 
但し、この人が改善できたことには大きな理由がある。
<人の話を素直に聞ける人であったこと>
これが大きな要素だとわたしは思っている。
 
〇今更、こんなことが出来るか!
〇ワシは忙しいんだ!
〇こんなことは社長の仕事じゃない!
 
往々にして、そういう人が多いのも事実だ。
 
しかし、この人はそこが違った。
20歳くらい年下のわたしからの厳しい言葉を、
しっかりと聞き留め、実践に移してこられた。
 
時間が無くて、
忙しくて・・・。

お金に困っている人に限って、
この手の理由を幾多と列挙して、
出来なかった自分を擁護しようとする傾向がある。
  
しかし、このように<出来ない理由>をご立派に
並べる人も多い中で、
この人は、今まで<できない><無理>などと一度も
言ったことがない。
 
毎回、最初はどれだけ下手くそであろうが、
不十分な内容であろうが、
かならず彼は取り組もうと努力してみせた。
 
そんな社長の姿勢を見て、毎回、わたしは感動すら覚えていた。
 
60代。
しかも、元々は、そこそこ中堅の会社社長。 
そうであれば、年齢的には弱音を吐いても自然だし、
横柄になっても致し方ないのが普通だ。
  
にも関わらず、
この人は、いつも頑張って取り組んできた。
 
わたしは一切、ウルトラCは教えていない。

<税理士に丸投げ>という人も世の中には多い。
また、銀行から会社の業績を聞かれた時など、
「顧問税理士に聞いてみないと分かりません」という社長も
実際多くいる。
 
しかし、わたしは、敢えて、
そういう仕事(=丸投げ)は受けていない。
  
たとえ、何歳であっても、
ビジネスという土俵上にいる限りは、
その人の<できる力>を最大限に信用している。
そして、
それを引き出す事こそが、
税理士としてのわたしの1つの仕事だ、
と思っている。

個人的な遊興のレシートを、
経費として処理するのが税理士の仕事ではない。
  
ましてや、「なんでも任せてください!」とも言わない。
一見すると耳障りが良い親切そうな言葉だが、
結果的には、相手の持っている能力の伸びしろを遮断してしまう。
 
お客さんのことを大事に思うなら、
お客さんのことを信用しているなら、
お客さん自身が持っている力にご自身で気づいてもらう。
そのためのお手伝いをする。
それがわたしの仕事だ。
   
今年の確定申告も
新たな出会いが多くあるだろう。
楽しみだ。

追伸
冒頭の写真は、文中のお真面目な話とは
全く関係がございません。
写真アプリによる変態トランスフォームです。


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アツイゼイリシタケオカエイジ



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