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【感想、時々書評】多様性の時代にペルソナマーケティングは通用するのか

世の中がこういう状況なので、Amazon Unlimitedの契約とnoteの登録をしてみた。マーケティング(売れる仕組みづくり)の中でも、ファン作りを始めとする中長期的な関係性作りの書籍を中心に読み漁って気になったことを書いていく予定。(バズワードで言うと、ダイレクト、CRM、ファンマーケ、SNSマーケらへん)

その第一弾に選んだのがこれ。本田充さんの「顧客に深く長く寄り添い、利益を伸ばす シングル&シンプルマーケティング」。

マス・マーケティングだけでは対処できない多様性の時代

この本では、大量生産、大量消費を前提としたマス・マーケティングが現在も行われていることに疑問を呈し、そこに対する新たなマーケティングコンセプト(表題の通り)を提唱されている。

現在25歳(年代によってここら辺の感覚は違うと思い敢えて記載)の自分にとっても、売上至上主義的なモノの売り方には違和感を感じていた。それよりもブランドをブラさず、クリエイティブやコミュニケーションが丁寧な印象を受ける方が好感度を持てる、そんな感性の自分にとって本書のコンセプトは違和感なく受け入れられるものだった。

個人的に感銘を受けたのが、コンセプトの立案を支えるロジックの部分で、「なぜマス・マーケティングの時代ではないのか」を分かりやすく解説してくれている。

簡単に言うと「生活者一人一人の違いが広まり、代表的な日本人像が存在しなくなっている」ということなのだが、統計情報などを使って説明されていて分かりやすい。ここは、「スマホの普及」など様々な角度から論じられるトピックだが、個人的には1番納得感のある説明だったように思う。

市場をオケージョンで捉えるボストンコンサルティング

生活者一人一人の違いが広まっているとは、すなわち「40代の子供が2人いる女性」とか「年収800万の男性」のような大雑把な括りでは実態を捉えらなかったり(=同じグループでも全然違う行動や価値観)、そもそも母集団の数が少なかったりするということ。

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以前、大手コンサルファームのボストンコンサルティンググループの仕事に触れた際の話だが、彼らは市場をオケージョンという単位で区切ってみていた。

下記記事に事例が載っているが、例えばアルコール飲料の「スピリッツ」の場合、それが消費される場面は「家で1人でしっぽり」だったり「親しい人とのパーティ」だったりする。その際ターゲットとなるのは、その場にいる人たちであり、性別と年齢などの単純な属性では区切れないことは想像に難くない。

今回この本を読んで改めて、BCGもこの多様性に対処する一つの方法として、「オケージョンという単位で区切ることにより、母集団の大きな塊を作ろうとしている」のだと気付いた。BCGほどのコンサル会社が従来のデモグラフィカルな区切り方をしていないことは、逆説的に多様性が広がっている証明にもなる。

多様性の時代にペルソナマーケティングは通用するのか

日本の市場の多様性が理解できてくると、具体的な人物像を描くことでマーケティングの精度をあげる「ペルソナマーケティング」に疑問が出てくる。

徹底的にリアルな人物像を描くことによって、その人目線で課題や改善点などを見つけられるようにすると言うのは理解できるが、先の生活者一人一人の違いが広まっていることを考えると、下手をすると「思ったよりそんな人はいない」という状態になってしまう。

これまでのペルソナマーケティングの成功事例も、そもそもターゲット選定のセンスがある人の思想が言語化されたモノだったり、たまたま市場の分布と一致して当たっただけなんじゃないかと思ってしまう。

じゃあ目線を変えて、どんな時なら再現性高く使えるのか考えてみると、

・ある程度ターゲット周りの市場ボリュームが分かっていて、ターゲットの中心にいるペルソナが分かっている時
・リソースに余力があり複数のペルソナを作成し、それぞれ施策の検討〜実行までを行える時

くらいなのかな〜と。ここら辺の条件がないと、投入したリソースの割に成果が出ない確率が高そう。

顧客目線で考えられる、ディスカッションを通じたチームビルディング、クリエイティブに一貫性を持たせられる、ターゲットイメージの共有などメリットはあるはずなので、前提条件や目的を忘れず適切な場面で使っていけたらと思う。

ここは今後もアンテナを張り、経験・知識ともに増やして有用性があるのかないのか感覚を掴んでいきたい。

最後に書評を少しだけ

個人的には著者の主張に違和感はなかったし、日本の市場の整理と今後のマーケティングの方向性が理解できる内容だった。

少し残念なのが、この本を読んで何かすぐに実行できるような具体性はなく、技術面でもまだ実現性には乏しいところ。ただ、MAツールなどマーケティング系ツールの近年の進化を見ていると、向かう先は同じと感じるので頭に入れといて損はないと思う。

今現在マス・マーケティングや、Web広告の運用などの狭義のデジタル・マーケティングに関わっている方には何かしらの気づきがあるはずなので、一読をオススメしたい。

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