人生最大のピンチを救った『差し入れ』
今日は僕の人生で救われた「応援」「差し入れ」についてお伝えしていきます。
僕は野球が大好きで、中日ドラゴンズの大ファンですが、応援するときは熱が入りますね。だからこそ、僕自身も応援してもらうことはとても嬉しいです。
応援の種類にはいろいろありますが、「差し入れ」することもその一つかと思います。子供のスポーツの大会やピアノの発表会などで、何か持って行ったりする。差し入れは、「頑張ってくださいね!」「応援していますよ!」「サポーターですよ!」という気持ちが入っているものではないかな、と僕は勝手に思っています。
「手土産」だと、遠方の友達に会いにいくときに「久しぶりだね! これちょっと持ってきたので食べてよ」という感じですが、「差し入れ」には明確な「応援しているよ」の気持ちを感じます。
応援する気持ち=「差し入れ」だとすると、僕の心に残っている差し入れは「ハチマキ」です。それも日の丸が真ん中に書いてあって、日の丸を挟んで「必勝」と書いてあるもの。受験する子供たちがよく頭に巻いている、あの「ハチマキ」です。それが1番心に残っています。
どうしてそれが心に残っているかと言うと、その「必勝ハチマキ」をいただいたとき、僕は人生最大のピンチでした。僕の人生最大のピンチは2、3年に1回ぐらいであるのですが、その中でも最大のピンチでしたね。
僕がやっている「Monkey Flip」というメガネのブランド。店舗は僕の地元の名古屋市、大須にあります。その当時、3つショップがありました。その3つあるショップの、2つのあいだに眼鏡ショップの「JINS」ができたんです。
それがもう勢いがものすごくいいときの「JINS」です。うちの店舗は3つあわせて売り場面積60坪ぐらい。新店の「JINS」が120坪ぐらいですので巨艦店ですね。当時の「JINS」はイケイケだったので「うわー!やばい!死ぬ!」と思ったんですよ。
こうやって言うと軽いかもしれないですが、心情としては目の前が真っ黄色になったというか。「これはもうダメだ。どうやって生きていこう」と、頭がぐるぐるになるぐらい追いつめられた感満載だったんですよね。
出店予定は冬。その出店を知ったのが夏ぐらいの話で、店舗ができる予定の土地を持っていたのが僕の遠い親戚だったので、内情を聞いたところ定期借家で35年。そこまでは絶対借りますよ、という契約内容だったのです。
その当時「JINS」は2部上場していたので、売り上げがわかるじゃないですか。出ていますからね。
なので、上場している会社が公開しているところを見て、「JINS」の売り上げがわかります。「JINS」の総売り場面積もわかりますし、売り上げを売り場面積でわれば、1坪あたりの売上高がわかります。
それで新店の面積の×120坪とすれば、ふつうにやればそこのお店で1年間いくら売るか数字がでますよね。だしてみたところ、その数字が僕のやっている「Monkey Flip」3店舗の合計金額と一緒だったんです。
ということはです。「JINS」がふつうの売り上げを立てれば、僕のところの売り上げは0になってしまう。そんな単純な話ではないかもしませんが、そんなことを考えただけで目の前が真っ暗になるじゃないですか。「どうしよう……どうしよう……」と考えまして。ただ、幸い夏から冬まで時間がありましたので、「そのあいだに何か対応策考えなきゃ!」と考えたんですよ。
ところが、現実は考えても考えても対応策はないです。2部上場している会社さんは資金力もありますし、優秀な人材もたくさんいらっしゃいます。その当時ぐらいから「電通」がバックにつき始めて、マーケティングも洗礼されてくるようになったんですね。本当に勝てるところがなくて、「なんなんだよ!」と思っていたときに、唯一「JINS」になくて、うちの店が持っているものに気づけたんですよ。
それは「地元愛」です。僕らは「地元」だ、と。僕は大須の街で生まれて、育っていますからね。本当にネイティブです。名古屋大好きですし、中日ドラゴンズも大好きです。「やっぱり地元愛なんだ!」、「俺らは地元なんだぞ!」、「地元で頑張るんだぞ!」みたいなこと。
これしかないなと思って、「JINS」がでてくるその月に、「地元の俺らが負けてなるものか」みたいなことを前面に押しだしたキャンペーンを張りました。「この冬は戦いだ!」とキャッチコピーをつくり、「冬の陣」という上りを立てまして、店を入ると1番最初にカブト、甲冑があるような。戦い色を全面に出した展開をしました。
そうしたら、仲良くしてもらっている友達が、「JINS」のオープン日に「岸さん、負けないでくださいね!」と言って、ハチマキ持ってきてくれたんです。「必勝ハチマキ」をスタッフの分持ってきてくれて、「俺ら応援していますから!」と言ってくれたんですね。それは、思い出してもちょっとウルッとくるぐらい、本当心に残っています。
「僕らは孤軍奮闘だ!」と思っていましたが、実は違ったということです。そのころまだネットもきちんとなかった時代で、書きこみの掲示板みたいなものがあって、「僕らは今日からやるぞ!」と書いたら、お客様がその下に「応援しています!」、「負けないでください!」といった内容で、ザーッとその掲示板に応援コメントをくださいました。
「うわ〜、ありがたいな。負けていちゃダメだな」ということで、今も生き残ることができているというそんな思い出話でした。皆さんの思い出に残る差し入れ、また応援はなんでしょうか。
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