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寄稿♯10:全日本大学フットサル大会初出場で準優勝~桐蔭横浜大学飛躍の舞台裏~

こんにちは!今週は10回目の寄稿になります。

大学日本一を決める「第15回全日本大学フットサル大会」が8月23~25日に大阪府の岸和田市総合体育館で開かれました。

優勝は多摩大学、準優勝・桐蔭横浜大学、3位・北海道大学、4位・東北大学との結果になりました。決勝は2年連続で関東勢の対決となりましたが、北海道大、東北大の健闘も光りました。

残念ながら関西勢の大阪成蹊大、神戸大が初戦で敗退するなど一発トーナメントの難しさやレベルの拮抗を示す大会でもありました。

(JFAホームページより)

今回は初の全国大会出場から準優勝に輝いた桐蔭横浜大学の監督が寄稿してくれました。4年しかない日本一のチャンスにかける学生たちの思いや、応援の盛り上がりなど様々な魅力が詰まったインカレ全国大会の様子を感じ取って頂ければ嬉しいです。

筆者紹介

森谷 航(もりや・わたる)さん

1995年生まれ、茨城県常総市出身。桐蔭横浜大学大学院修士課程2年。これまでにサッカー歴13年、フットサル歴4年。2015年の大学2年時から桐蔭横浜大学フットサル部の前身「FC.Eggplant」でフットサルを始める。16年度の部活動昇格時の最初のキャプテンを務め、18年度に大学卒業、大学院進学とともに桐蔭横浜大学フットサル部監督に就任。サッカー・フットサルC級ライセンス保持者。twitter

記事中の写真協力は桐蔭横浜大学様、aibonさんです。それでは本文です。

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8月25日、大学日本一を決めるインカレは多摩大学が初優勝、桐蔭横浜大学が準優勝という結果で幕を閉じました。私が監督を務める桐蔭横浜大学フットサル部は、激戦と言われる関東を初めて勝ち抜き、初出場の本大会で準優勝という結果を残せました。

本大会に向けての取り組みや大会中のこと、今後について記していきます。他大学チームに参考にしてもらい、今後の大学フットサルの発展の一助になればと思います。

「スカウティング」「セットの噛み合わせ」「運」で勝ち取った初の全国大会

桐蔭横浜大学フットサル部(以下:桐蔭横浜)は2012年サークルとして設立された比較的新しいクラブです。16年に部活動昇格、18年より大学院へと進学した私が監督となりました。監督になった理由は簡単に言うと、自身が選手より指導者業の方に魅力を感じていたことと、大学フットサルに指導者が少ない環境に疑問を抱き、価値を高めたいと思ったからです。現在選手は男子26名、女子11名で構成されています。

大学にはスポーツ健康政策学部があり、トレーナー志望やアナリスト志望の学生がいるので、スタッフは全員学生で構成されています。私の自慢のスタッフ陣です。

昨年は神奈川県大会の決勝で敗退していたため、県大会の初戦は全国大会も通して、私は1番緊張していたかもしれません。スカウティングも功を奏し慶應義塾大学エルレイナに4−0、横浜市立大学に4−1と危なげなく県大会を突破できました。

そして本大会も含め、1番の難所だった関東大会。関東は全国出場枠が2枠あるため、準決勝に勝利すれば全国大会出場が決定します。準決勝の過去2度は多摩大学に阻まれ、今年は全国大会3連覇、関東大会11連覇中の順天堂大との対戦でした。群馬・澁川で行われ、2-1で勝った試合の全容を知りたい方もいるかと思います(笑)。

私たちが順天堂大戦で勝利できたポイントは「スカウティング」「セットの噛み合わせ」「運」だったと思います。まず「スカウティング」で相手のセット、セットの時間、個人の特徴、ゴールパターンなど全て洗いざらい、まとめました。

大会通して1番時間をかけたと思います。結果何をしてくるかが選手たち全員の頭に共有されていたので、1失点ですら想定通りな形でした。そのおかげでメンタルが崩れなかったのはあると思います。

2つ目の「セットの噛み合わせ」では、シンプルに相手のストロングセットに自分たちのストロングセットを合わせました。セット間隔は、対戦が決まったあたりから相手の時間に合わせて練習から取り組みました。

また、ストロングセットの時、相手は基本クワトロだったのが、後半に3−1に切り替えてきました。ここが1つ勝負の分かれ目で、Fリーガーでもある堤優太(以下、堤)がバンバンインターセプトを始めます(笑)。そして同点に繋がります。

3つ目に「運」を挙げました。これは抽象的ですが本当にそう感じます。逆転ゴールは相手のオウンゴール、普段なら絶対ないような形でした。入った瞬間に「あ、今日はうちの日か」と勝利を確信しましたし、ゴレイロは神がかったセーブを連発していました。

こうして最大の難所・関東大会準決勝を突破し、初の全国大会出場を手に入れます。まあ、泣きました。関東大会決勝については、、、漫画「スラムダンク」の山王に勝った湘北になったとでも言っておきましょう(笑)。

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焦らないメンタリティーで決勝へ

桐蔭横浜といえば、今大会も注目された大会唯一のFリーガー堤がいます。桐蔭横浜と立川府中アスレティックFC(以下:アスレ)は両チーム朝練が基本となるため、今シーズンは週1の夜練やアスレの練習がオフの時に堤には参加してもらう形でした。

そのため、年間通して戦うリーグ戦では基本的に彼を構想には入れていません。本大会が近づいてから週の全セッションに参加できるようにマルコス監督(アスレ監督)にお願いをしてチームを仕上げました。

これが良いか悪いかは各チームの考え方だと思うので、Fリーグを目指したい大学フットサル選手やそういった選手を抱える大学チームは参考にしてみてください。

今年度からノックアウト方式となったインカレは昨年の4強地域がベスト8から現れる大会方式でした。12チームというチーム数はもっと増えてもいいのかなと個人的には思います。大会を終えた我々の中でも「2試合勝って決勝は何だか変な感じだね」という声がありました。

グループリーグ方式より戦略を立てにくく、1発勝負なのでどこが勝ち進むのか読みにくくなりました。私がトーナメント表を見て予想した勝ち上がりが、シード4校と東北大。初戦は愛知学院大と踏んでいました。決勝は多摩大にリベンジしたかったので、うち目線の大会の展開としては予想通りでした。

日本一まで3試合。その中で1番キーにしたのが初戦です。初戦のテーマは2つでした。1つ目は「3セット起用」。準決勝、決勝に全てを賭けられるようにしたかったので、今まで固めて2セットにしていたのを、トーナメント表と日程がわかった時点で、ある程度メンバーを分散させ3セットに切り替えました。

2つ目は「緊張」。我々はシードのため、1日前から1試合戦っている試合慣れした相手と対戦しなければいけません。聞いていないのでわかりませんが、神戸大や大阪成蹊大はこの影響が少なからずあったのかなと思います。

関東で普段戦っているチームの人は知っていると思いますが、うちは緊張したり、邪念が入ったりするとガッチガチになる典型的なチーム(笑)。

「どんな声がけや振る舞いをすればいいだろうか」と前日考えている時に、関東のFFCカレッジフットサルリーグの鈴木陽二郎(YJR)さんが、自身のチームが緊張した時の話や「緊張して動かないもんは動かない、じゃあ動かすより動かないことを受け入れさせてやるだけ。イラついても仕方ないから出来ることやろう」というLINEをくれました。

その言葉で私自身も開けて、チームにも共有し、初戦の愛知学院大戦に臨みました。試合は想定していたよりは硬くならず、後半途中まで3セットを引っ張ることができ、最後は2セットで引き離して5−3で勝利できました。

途中同点にされても、自分たちのストロングがまだ出せるという余裕と、関東を勝ち上がった経験が焦りを生まないメンタルに繋がったのかなと思います。この焦らないメンタリティは準決勝でも活かされました。ちなみにチーム最初の得点者は絶対堤だろうなと、これも想定内でした(笑)。

準決勝では、東北大の献身的なディフェンスからのカウンターと、33番ピヴォ北畠君にかなり苦しめられましたが、準々決勝同様に終盤で引き離し勝利できました。

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因縁の相手・多摩大に挑む「後半勝負」

先に反対山の準決勝で多摩大が勝利していたため、決勝は関東大会決勝の再戦となりました。関東大会では我々が準決勝順天堂大戦で全て出し切り、3試合目で1−6という結果だったので、今回はフラットな状態で戦えるということでチームとしても「舞台は整ったな」という雰囲気でした。

多摩大には創設以来1度も勝てていません。初めて対戦したのが4年前、関東大会で0−5とコテンパンにされました。実はこの敗戦がきっかけで桐蔭横浜がここまで強くなった(厳密言うと強くなりたいと思わせるきっかけとなった)ことを知っている選手は、前日ミーティングで気づいたのですが、世代的にもういませんでした。

大差でリードされて追いつけなかったり、3点差をひっくり返されたり(今年のKOBE CUP)、パワープレーが全く効かなかったり(笑)、散々苦汁を嘗めさせられてきました。そのような相手にどう戦うか。24日の夜は午前2時〜3時までパソコンと向き合っていました。

多摩大は基本的にマンツーマンでアグレッシブに、ボール保持者に嫌だと思わせるディフェンスをしてくる非常に失点の少ないチームという認識がありました。

対して桐蔭横浜は堤と菅原のコンビネーションや、スピードのある選手が同数の速攻でもガンガン前に仕掛けていく攻撃的なチームです。この最大の武器を今一度再認識して臨もうということで、前半はハーフディフェンス、武器をいつでも活かす準備、後半は前プレで仕掛けるというプランで試合に入りました。

コーナーキックから立ち上がりに先制。しかし当然これで終わるはずがないのが多摩大戦。ハーフのはずがいつの間にかどんどん引き出されて裏一発で同点。コーナーキックから一瞬空いた中央を突かれ逆転されます。甘さは一切許されないなという展開。カウンターは相手も狙っていたようで、切り替えの激しい締まった前半でした。

1点差で折り返しは許容範囲だったので、後半仕掛けるぞとハーフタイム。しかし、FUTSALXの河合さんとも試合後に同じ話になりましたが、プレスをかけた後半、多摩大が定位置攻撃を捨てて蹴ってきました。ピヴォの反転から失点し1−3。

負けじと定位置攻撃の狙いの1つであった、多摩大唯一のマークチェンジの瞬間にライン間を制し、擬似カウンターから得点で2−3。しかしここから、3セットの多摩大と2セットの桐蔭横浜で徐々に体力と集中力での差が開いてきます。ファールかと思われるシーンで足が止まり、お株を奪われるかのようにカウンターで連続2失点。残り8分で3点差となったところでタイムアウトを取り、パワープレーを開始。

サインを宣言するとプレスを仕掛けてくることは以前の対戦で立証済みだったので、サインなしでスピーディに、かつうまくいかなくても変形できる複合的なパワープレーを用意していました。1点返せたことは成長でしたが、追撃叶わず3−5の敗戦となりました。

多摩大は3セット一人一人の選手の質が高く、とても完成度の高いチームでした。また一瞬のスキを逃さず、かつ色々な引き出しを持っていました。そして福角監督(アリさん)とは常に駆け引きをしていますが、今回も個人的には完敗でした。

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大会を終え、順天堂大学へのリスペクト


ありがたいことにたくさんの方々から準優勝の賞賛のお言葉をいただいています。でもそれ以上に私は応援していただいている皆様に感謝しかありません。決勝戦、今振り返っても素晴らしい雰囲気で白熱したナイスゲームでした。

桐蔭横浜大と多摩大の両チームの発展経緯を知っていたので、ここまで応援してもらえるチームになったんだな、と感慨深くなりました。創設時は自分たちさえよければよかった両チームが、全国でこんなに応援され、凌ぎを削り合えたことが嬉しくて仕方ありません。

それと同時に、昨年全国で3連覇を成し遂げた順天堂大の凄さを身に染みて感じました。指導者なしであそこまで応援されるチーム、雰囲気を築き上げた最強の自主性。順天堂大がいるから多摩大も私たちも成長できました。OB含む関係者の方々には最大のリスペクトをこの場で送らせていただきます。

初出場で準優勝は昨年慶應義塾大学ソッカー部も成し遂げていますが、フットサル専門チーム同士が拮抗したゲーム展開を繰り広げた決勝戦は久しぶりなのではないかと思います。3位決定戦も素晴らしく白熱していましたね。本命とも言われた関西勢の敗退もノックアウト方式ならでは。

指導者としてはグループリーグもやりたい気持ちもありますが、観客の視点からすると一発勝負は面白いと思いますし、チーム数が増えればもっと面白くなると思います。インカレは初めてでしたが、各大学バックボーンは違うし、目指し方も違うし、活動における考え方も違う。まだまだ未熟な大学スポーツであるからこそ、各チームで色がはっきり出ていて面白いなと感じました。

是非ともフットサル好き、関係者の方には見てもらいたい大会です。未熟だけど本気で、どこか片鱗を見せてて、原石がいて、初心を思い出させてくれて。私は自チームの選手には「応援されるチーム」になろうと常々言っています。別の言葉では「人に評価されるチーム・人間になろう」とも表しています。

学生だけで発展できるチームはないと考えています。クラブの発展に協力してくれる顧問がいて、大学で評価してくれる教職員やスポーツ振興本部の方がいるから、体育館が使えるようになって、部活になって、応援にも来てくれて。

もしかしたらどこからかスポンサーの話も転がってくるかもしれません。自分たちの活動に協力してくれる方や味方を増やさなければ、競技環境やクラブの発展はありません。大学フットサルはこういった支援の部分が非常に弱いと感じています。そしてこのような発展のプロセスを学ぶことは社会でもきっと役に立つはずです。

「外向きな内輪」をどんどん広げられるかどうか。価値や楽しみを自分たちだけに留めず、惜しみなく発信して欲しいと思います。そして各チームで発展を目指せば、インカレももっと面白く均衡した試合も増え、観客がもっと入る大きな大会になると思います。来年からは是非、JFAが生中継してくれることを願っています(笑)。

森谷航

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来週土曜日も寄稿を予定しています。
それでは、また。

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