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夢と知りせば覚めざらましを #note10

小野小町の有名な歌である。全文は

「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを」

現代語訳は
あの人のことを思いながら眠りについたから、夢に出てきたのだろうか。
夢と知っていれば目覚めなかったものを。

古典の授業を熱心に聞いていたタイプではなかったが、この歌だけは学生時代からずっと好きな歌である。

*

「幸せな夢を見て目覚めた時の気持ちはどんなもの?」
もしそう尋ねられることがあれば、きっと私はこう答えるだろう。
「途方も無い絶望感に苛まれます。」

夢はしょせん夢でしかなくて、たどり着けない現実との乖離を悉く思い知らされる。
貴方が私を探して外に出ることも、心配したと抱きしめてくれることも現実には起こりえないし、
穏やかな陽の差し込む日曜の朝に、幼い私に幸せな朝食を教えてくれた彼女はもうこの世にはいない。

*

叶わないから夢なのです。
起こりえないから夢なのです。
現実から逃げたいから穏やかな夢を見るんです。
手に入らない幸せだからせめて夢で終えるのです。

逢いたい人に、会えなかった人に相見える夢を見た朝はいつも思う。
夢だって解ってたら目覚めなかったのに。と。