東証の上場維持基準に悩む(中央経済社の話です
中央経済社の3Qにあわせてあんな投稿をしたので、2024年8月9日に重田さんが提出された変更報告書を拝見した時、『大丈夫か利根川さん…』という言葉が頭に浮かびました。
提出事由は中央経済社HDの保有割合の1%以上増加というものです。重田さんご本人の保有率が7.22→8.22(+1%)ということで、連名で提出されているスノーボールキャピタルさんと合計で10.6%に到達しました。
ここ数ヶ月中央経済社の板を眺めていると、パラパラと大きめの(と言っても、中央経済社の売買高なんて一日数千株がほとんどですので、1000株とかですが)買いが入っているのを見ていたので、誰か買っているのかなぁとは想像していましたが、年始に変更報告を提出されてから動きが無かった重田さんだったのは意外でした。
この保有率変更を受けて、少し気になっている点があり、調べています。結論の出る話ではないため、考えと論点を整理しながら書き散らかしているだけですので、ご理解の上ご覧ください。
*ディスクレーマー*
テンプレで恐縮ですが、ディスクレーマーは以下のポストに記載の通りでお願いします。あくまで個人の意見を書き散らかしているだけで、投資助言等ではないし、なんら内容に責任を持てるものではないことをご了承の上、ご覧ください。また、大量保有報告書提出済みの通り、著者は中央経済社の株式を保有し済的利害関係を有しています。
https://note.com/9476/n/n2d660946cf56
ということで、本編は以下から。
2023年9月30日時点で中央経済社が上場基準を満たしていないことは周知の事実ですが、このポストのテーマは、「東証の上場基準に照らした時、中央経済社の上場は維持できるのか、そもそも会社側はしたいと考えているのか」です。(すでにテーマからとっ散らかってる感じですいません)
東証・上場維持基準の概要
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/continue/outline/02.html
中央経済社・上場維持基準の適合に向けた計画書(2022 年12月21日)
https://www.chuokeizai.co.jp/pdf/press/20221221.pdf
中央経済社・上場維持基準の適合に向けた計画書に基づく進捗状況について(2023/12/28)
https://www.chuokeizai.co.jp/ir/press/pdf/20231228joujouiji.pdf
6月に公開したポストでも以下のように記載しました(有料部分です)が、東証スタンダード市場上場維持に必要となる流通株式時価総額は10億円であり、流通株式比率45%で逆算すると505円です。
https://note.com/9476/n/n2d660946cf56
現時点での流通株式比率45%という数字は、あくまで私の推察になります。昨年12月に中央経済社IRで公開された「上場維持基準の適合に向けた計画書に基づく進捗状況について」によると、2023年9月30日時点での流通株式比率は42.9%との記載がありますが、その後プランニングセンターが3.2%の株式を市場売却していますので、加算して46.1%、概算として45%と見積もっているにすぎません(正確な数なんて企業側が株主名簿更新しない限り出てきませんので)。同IRには、会社側が継続的に流通株式比率を高める旨が記載されていますので、実際はさらに流通株式比率が高まっているかもしれません
https://www.chuokeizai.co.jp/ir/press/pdf/20231228joujouiji.pdf
しかし、たとえ流通株式比率が50%に高まっていたとしても、上場維持基準に抵触する株価455円は目の前に迫っています。今年は1ドル160円、日経平均40000円という日々もありましたので、経営陣は流通株式時価総額10億円が達成できるかと見込んでいたのかもしれませんが、8月9日の終値は472円、8月5日月曜に至っては、一時ストップ安の418円まで沈んでしまったわけです。
一応書いておくと、株価が基準を下回ってたら一発レッドカードというわけではなく、通常一年の改善期間に入ります。さらに、現在は東証の市場再編に伴う猶予期間中ですので、現時点では流通株式時価総額と上場維持は関係ありません。とはいえ中長期的には上場維持に懸念を抱く状況ですし、遠い先の話といっても、来年には解決しなくてはならない課題の話をしています。
いま悩んでいるのは、計算次第では重田さん保有分が流通株式比率にカウントできず、一気に流通株式比率が10%以上も下がる可能性があるのでは、という部分です。以下は、東証における上場維持基準を公開しているページです。穴が開くほど読みました。
なのですが、上記のページからは、今回のように「個人株主が議決権行使含め連名で10%超の大量報告を提出している」「連名となっている法人の株式取得資金と、提出者である個人株主が同一人物(スノーボールキャピタルが株式を購入している全資金は重田光時さんからの借入金となっている。なお、重田光時の株式購入資金は一部を重田康光さんからの借入金で賄っている)」という状況の場合にどう計算されるのか、少なくとも自分は判断できませんでした。
そのため、この件については、7月に東証の問い合わせフォームから「流通株式数の定義」について質問したのですが、原則論の回答であったため、結局自分では判断できず、という状況に陥っています。
例えば大量保有報告書(5%ルール)では、みなし共同保有者〔法第27条の23第6項、施行令第14条の7〕として「夫婦や、50%超の資本関係がある親子会社及び兄弟会社等」が指定されています。
ですが、保有名義が別であれば資金の出所や関係性など一切気にしないです、ということであれば、東証はウルフパック戦術を遠回しに認めている、ということになりかねません。
個人投資家としては、上場維持という大きなテーマですので、このあたりの基準について、WGなどが開催され変更が予定されているカストディアン問題や大量保有報告制度と同様に、明確な線引きについて、もう少し議論がなされるべきと期待しています。
金融庁が率先して進める、真の株主を明らかにするための新しいルールとは?
https://www.manegy.com/news/detail/9172/
前置きが長くなってしまいましたが、結局中央経済社の経営陣は上場維持したいのか、したくないのか、どっちなんだ、という疑問は全く解決していません。会社からIRが出ていないので、当たり前ですが。
ここで悩んでいる理由の一つに、上場維持に必要な流通株式時価総額を満たせていないのではないか、という状態にもかかわらず、3Q決算に合わせ株価向上に繋がるIRが出なかったことがあります。
しかし中央経済社は、2022年から「上場維持基準の適合に向けた計画書」にて「上場維持基準に適合するため各種取組を進めてまいります。」と記載しているように、素直に見れば上場維持を目指している、と受け取るべきなのかもしれません。
もっとも、上場維持に向けた取組として、今後、経営陣がプランニングセンター自社株(5.6%)の追加売却や第三者割当、地方市場への移動など、既存株主に損害を与え、企業価値の毀損に繋がるような内容を実行しようとした場合は、臨時株主総会を要求して株主の判断を仰ぐのは最低限必要ではないかと思います。その際には、当然ですが、経営陣およびその関連会社が保有する議決権を外した形でMoMによる決議方法を求めることになるでしょう。
実際、今年2月から4月にかけて100%子会社のプランニングセンターが保有している中央経済社の株式を市場内にて売却していますが、この売却が行われた結果、中央経済社の株価は同期間のTOPIX比で5.5%劣後することになりました。この時期は日経平均が初めて4万円を突破した時期と重なり、決して悪い地合いではなかったことも追記しておきます。
日経平均株価4万円超え 取引時間中で初
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB01BFK0R00C24A3000000/
100%子会社であるプランニングセンター保有の中央経済社株式数
2024年2月13日(月曜) 8.64%(380000株)
→ 4月23日 5.62%(247000株)
中央経済社の株価 542(2/9の終値)→535(4/23終値)に1.3%の下落TOPIX 2557.88(2/9の終値)→2666.23(4/23終値)に4.2%の上昇
これほどまでに荒れた現在の市況において、5.6%もの自社株を市場に売却しようとしたらどうなるか、火を見るより明らかだと思います。
そもそも、PBR1(解散価値)以下の状況において自社株を市場内売却するなど、どのような事情であれ企業価値の毀損につながると考えていますので、既存株主としては賛成できる内容ではありません。
また、地方市場への移動ですが、これも悪手としか言いようがありません。地方単独上場の銘柄もいくつか保有していますが、数年待っても低すぎるPBRに改善の兆しも見えず、完全に塩漬けになってます。これらの単独上場銘柄はIR等を見ていても、企業価値の向上に向けたガバナンスが効いているのか評価できない状況ですので、市場変更は企業価値の毀損に繋がると判断せざるを得ません。
最後に、2024年8月11日時点における自分の考えを書いておくと、「企業価値が向上し、株価が適切な価格(当然ですがPBR1以上)に収まるのであれば、上場維持にはこだわらない」というスタンスです。
6月に書いたポストでも、余剰な不動産資産の売却やデジタルへの投資など、「迅速な意思決定と構造改革を進めるため」上場廃止という選択肢についても検討しておくべきだと記載しました。(すいませんが有料部分です)
昨今、ベネッセや大正製薬といった大企業でもMBOやTOBによる上場廃止が相次いでいます。中長期の企業価値向上という視点に立った場合、どちらが中央経済社にとってポジティブなのだろうかというのは、会社側の状況としてどのように考えているのか知りたいところではあります。
わからないことばかり書いても仕方ないのですが、中央経済社の年度末も近づいていますし、その後には株主総会も控えています。株主提案が可能な株数を保有しています(大量保有報告書提出済み)ので、今後株主提案をすることになった際、少しでも判断材料となるような情報を共有できればと思って書いておきました。
このポストで東北新社さんの状況を以下のように表現しましたが、中央経済社にも当てはまる部分があるのかもしれません。
現経営陣には、企業価値の向上を何より大事に、フェアな判断をしていただきたいと思います。
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