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酒蔵の夏の仕事

先日、日本酒記事を多く書かれているクリーミー大久保さんよりアンケートの依頼が来ました。それが夏の蔵のお仕事のことで、確かに「冬に仕込みしています」と答えると「夏場は何をされているのですか?」と聞かれることが多い。近年では三季醸造(秋から春まで)している蔵も多くオフシーズンの短い蔵も多いが、弊社の仕込みは10月下旬から5月上旬の約半年の仕込み。夏の間の蔵の様子をnoteで記すのも面白かと思い、書いてみようと思う。

他のお蔵さんの夏の仕事はクリーミーさんのnoteをご覧ください。

さて、夏の仕事といいますがどう区切っているのか?という部分をまずお話ししましょう。

夏の仕事の始まり

 夏の始まりがあるという事は冬の終わりもあります。福司での冬の終わりは貯蔵用のお酒の火入れという作業が終わったときです。業界では皆造(かいぞう)というのですが、酒造が全て終わることを言います。火入れはその年に造った新酒を貯蔵前に殺菌する工程で、この時にお酒内に含まれる酵素を熱で壊し劣化を防ぐ目的も含まれます。火入れ後は密閉され出荷まで貯蔵熟成させます。これが終わると蔵人の納豆解禁日となり、4月から5月には酒造関係者のSNSに「納豆解禁!」と仕込みを終えた報告が上がります。
 福司酒造では仕込みを終えると製造部の人間は春休みがもらえます。現状仕込みのシーズンはシフト制で月に3~4回のお休みがあります。将来的にはもっと休みを回したいと思っていますが、担当部署の人間のフォローアップの体制をもう少し整えなければ難しいでしょうが、冬の分の休みをまとめてもらいます。ゴールデンウイーク明けぐらいにとれるので旅行に行くにも航空費や宿泊費が安くていいです。私もこのシーズンにいろいろなところに旅行に行き見分を広めてきました。この休みを挟み、夏と冬の仕事の切り替えとなります。

夏の仕事

 蔵の夏の仕事の主は、蔵のメンテナンスにあります。蔵の建物も古く、何もなくても修繕が必要な個所が沢山あります。専門の大工さんがいてもいいくらい。弊社の壁は土壁なので、その壁の修復や屋根や壁の塗装、敷地内の草刈りなどもします。
 酒造がしたいのにそんなこともさせられるの!?と思う方もいるかもしれませんが、都会で住むなら不要かもしれませんが、地方で自分の家を持ったら自分でやれた方がいいことです。外注したらお金かかりますが、自分で出来る技術が身につけばその分のお金を自分を磨く事に使えます。

草刈りの様子①
草刈りの様子②
麹室の扉の補修

柿渋

 仕込みに関わる仕事として、蔵の梁や柱には柿渋を塗っています。柿渋は渋柿を発酵させた天然の防腐剤で、含まれている柿のタンニンが防水、防虫、防腐、消臭効果などがあるといわれています。どうしても夏場に湿気が蔵の中に溜まりやすく、カビ原因になるのですが柿渋を塗るようになり大分改善されました。これも酒質の向上に大きくかかわっているのでは?と思っています。

柿渋の塗装
蔵の掃除

 体を動かす仕事以外にも、次のシーズンの仕込みの計画を立てる仕事もあります。商品の出荷の様子から必要となるお酒の仕込み本数を決めたり、新しい商品の仕込み計画を立てたりするのも夏場の仕事。時には実験をしたり、他の蔵に研修に行ったりすることもあります。

製造以外の仕事も

 冬の間、手が足りないときには他の部署から応援に来てもらっています。仕込みが立て込んでいる時の粕剥がし等。逆に夏場は製造部から他の部署に派遣されることも。瓶詰めはもちろん、出荷準備などもやります。気が付いたところがあれば改善点として報告をし、商品の品質の向上に努めています。

スパークリング清酒の検瓶

 社内の仕事だけではありまりません。FM946(釧路のラジオ局)の日曜の番組「昼酒日和(ひるざけびより)」では、日本酒の情報の発信として冬場の仕込みの様子や新たな取り組みについて発信しています。

ラジオ番組にも出演

 今年は山廃仕込みの商品の発売もあり、製造部で営業や案内書の作成をしました。製造部というと日本酒を造る部署というのが一般的ですが、弊社ではお酒を造っておしまい!ではない製造部にしています。自分たちで作った商品を受け取る方々の声を聴いて、それを製造に反映していくことでより「よいお酒」になると思っています。
 様々なことを経験し、社員のスキルが上がり、新たな知見を得ることとで、会社のスキルも上がる。会社の成長には社員の成長が必要です。様々なところでスキルアップの場がある生きている会社でありたいと思います。

もう少しで仕込みが始まる

 9月に入り早い蔵では仕込みが始まります。福司では例年10月の下旬より仕込みが始まりますが、その前の9月は「もろはく粕」といわれる板粕を熟成させた粕の袋詰めから始まります。その後、仕込み水を確保する井戸の清掃、製造工程の清掃と組み立て、タンクや機械の動作確認などを行い仕込みの準備をします。
 製造責任者としては、製造するお酒の量の最終確認をした後、入荷するコメの日程や量を算出しホクレンに報告。ホクレンで精米までをしてもらうので各精米歩合ごとの米の数量を出します。

 徐々に寒くなってくる季節となってきましたが、逆を言うと日本酒のシーズン到来。これから美味しいお酒が各蔵から販売されるでしょう。そんな私たちも3年前から秋のお酒として「YONAGA」というお酒を販売しています。それまでは「秋上がり」や「ひやおろし」といった秋の定番種は取り扱いしておりませんでした。
 YONAGAは「秋の夜長」という言葉にあるように、長くなる夜の時間を楽しんでもらう酒として商品化。2022年は9月13日に発売します。こちらは釧路市内を中心としたお酒をお取り扱いいただいている店舗様がメインで、そのほか札幌、旭川、帯広、網走でも数件お取り扱いいただいてます。遠方のお客様は弊社オンラインショップをご利用ください。

月の満ち欠けがデザインされた福司の秋のお酒

【9月上~中旬】YONΛGΛ(ヨナガ) 720ml - 福司酒造オンラインショップ (shop-pro.jp)


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