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レコーディング音源を届けよう!TRF30周年・楽曲カバーコンテスト

 歌うことが好きで好きでたまらない方へ。

 歌好きが興じて、自分の録音した歌唱を公開したことのある方もいるだろう。公開したらリアクションも得たいと思うのは自然なこと。今回はそうした活動からコンテストまで辿り着き、入賞に至ったカバー曲を聴いてみた。

 2023年に行われた、TRFの楽曲カバーコンテストをご存知だろうか。最終選考の審査には、なんとメンバーのDJ KOOも直々に加わるという、ファンにとっては胸アツで特別な機会だった。入賞者には、カバー曲の配信リリースという特典があったので、こうして筆者の耳に音源が届いたわけだ。

 制作した楽曲にコメントがつくと励みになる。それが見知らぬリスナーからだとなおさらだ。このことを、「創作行為には燃料が必要である」という例えで書き著した記事がnoteにある。こちらを読んで、単に楽曲を鑑賞して終わりというのではなく、ならば自ら燃料になろう!と思い立ち、この記事を作ることにした。

 筆者はTRFの大ファンだ。デビュー曲を発売当時から聴いているし、昨年始まったレギュラー番組・TRF RHYTHM FIVEは、1年間欠かさずチェックしたほどだ。これなら、燃料になったのはいいが、すぐにプスプスと燃え尽きてしまった…ということにはならないだろう。まあまあ暖のとれる、アツいリアクションが返せるのではないかと思った次第だ。

 それでは、入賞者3名の楽曲を聴いていこう。曲順は、TRFのオリジナル・バージョンを筆者が気に入っているものから並べてみた。

彩香『masquerade』


 聴けば闘志がみなぎる、勇ましい歌唱スタイル。レコーディングの際も力いっぱいエネルギーを解き放てるように、熱い気持ちで臨んだのだろう。「激しく昂ぶる」や「あふれ出す」というフレーズの締め方も、勢いの良さとスマートさが同居していて、見事なハマりっぷりだ。Spotifyにおいては3名の中で唯一、後に続く作品を公開(2024年1月現在)。制作の手を止めずに形になっている。素晴らしいことだ。『masquerade』といえば、宇都宮隆のソロ・デビュー30周年記念作の収録曲『JINGI・愛してもらいます』の始まり方が、こちらと瓜二つで、TRFと中山美穂の要素が共存しながら楽曲が進行する。音楽制作に慣れてきたら、こういうトリッキーな曲に手を出すのもアリだ。『masquerade』はすでにマスターしたのだから、あとはもう一方の中山美穂を覚えるだけ。一般の歌ってみたとは一線を画す、面白みのある活動ができるだろう。

EMUNEKO『BOY MEETS GIRL』


 この曲の発売当時はキーの高い曲が流行っていた。その中でもTRFをはじめとする小室ファミリーの楽曲は、一際その傾向が顕著だったのだが、そのオリジナルのキーのさらに上を飛び越える始まり!再生した瞬間、仰天だった。「星降る夜」や「風が南へと」というパートが近づいてくると、聴いている側もハラハラしてくるのだが、原曲以上に最高音を強調した歌い方で、この難所もクリアしている。高い所に音を持ち運ぶようすを、バスケットボールのシュートに例えてみよう。オリジナル歌手のYU-KIは、レイアップシュートでやさしく置きにいく感じなのに対して、EMUNEKOは豪快なダンクシュートを決めているようにも思える。サムネイル画像に使っているイラストの目が、バツ印になりそうなほどに気合を込めた表情で、高音を出すのが思い浮かぶ。両者の歌い方を聴き比べてみていただきたい。

Sasammy『寒い夜だから…』


 前半と後半でアレンジが急変するので、1コーラス目を覚えたら、あとはリピートで…というわけにはいかなかっただろう。3名の中では最も対処に苦労したのではないか。特徴は、サビを締めるフレーズ「変わらぬ思いを」や「私を信じて」における、意図的に早く切り出す歌い回しだ。崩した歌い方を好まないリスナーもいる。それでも、中川翔子やDef Willなどの他のバージョンもすでにリリースされている中で、自分なりの表現を模索する姿勢は良いと思う。本家のTRFだけでも、いくつものリミックスがある曲だ。それらをチェック済みのリスナーに対しては「またかよ」と、お腹いっぱいな気分にさせることなく、意表を突くことに成功している。元のフレーズを丸々なぞるのではなく、カバー曲でも自分なりの表現をしたいという方は、こちらを聴いて発想の源にしていただきたい。

 このコンテストの関係者について記述がある。江戸川大学・関根直樹教授の著書『17人のエキスパートが語る 音楽業界で食べていく方法』で、エイベックスの奥田久美子氏の談話が読める。彼女は自分の行なった仕事について次のように話している。

「先日TRFが30周年を迎えたプロモーションも兼ねてTRFのカバー楽曲を配信リリースできる権利を賭けたイベントを企画しました。その最終審査をAWAラウンジ(音声ライブ配信サービスの名称)で行いました。」(106〜108頁)

 その彼女が、今から活動に取り組み始めようとしている方々に、次のような言葉を送っている。

「音楽に本当に携わりたいのであれば、幅広く情報収集して、面白そうなところを見つけてほしい。」(108頁)


 スマホを手に取っても、いつも同じサイトばかり眺めてはいないだろうか。時には別の角度から検索するといい。他社が設けるコンテストやオーディションの機会が目に留まるかも知れない。

 初めて参加するという方は、一度オーディションの場に観客として訪れてみてはいかがいかだろうか。何の免疫もなく飛び込むよりは、いくらか緊張の緩和になるだろう。現地に行く機会がなくても、映像として残っている場合もある。例えば、RIZIN DANCE GRAND PRIX 2023がある。
 こちらはダンスのオーディション。歌の方でなければ参考にならないとは思わないで欲しい。ダンス・ミュージックを歌う機会が訪れるかもしれない。そのとき、共にステージに立ってくれるダンサーの動きを、ボーカリスト自身も意識できるかどうか。これが観客のリアクションを左右する。TRFのYU-KIも、最初は本職がボーカリストというわけではなかった。だが、元々培っていたダンスの素養が、TRFの楽曲を歌で表現する際に、プラスに作用した。ファンの方ならお分かりだろう。
 この大会にはSAMが審査員長として出席し、参加者に激励の言葉を送っている。TRFは後進の育成にも熱心なグループだ。

 音楽活動への知見を深めるためにも、情報をキャッチして、このようなイベントに積極的に参加してみよう。


関連記事:筆者独自の編集による、2023年のTRFレギュラー・ラジオ番組のアーカイブ


「創作行為には燃料が必要である」と説く、Doompekeさんの記事

エイベックス公式サイトが、TRF楽曲カバーコンテストの入賞者を発表。


ソニーミュージック公式サイトによる、宇都宮隆『JINGI・愛してもらいます』を収録したCD「U30 Contract TAKASHI UTSUNOMIYA ANTHOLOGY 1992-2023」の告知


リットーミュージック公式サイトによる、書籍『17人のエキスパートが語る 音楽業界で食べていく方法』(著・関根直樹、2023年11月17日発行)の告知。


テレ玉YouTubeチャンネルより、SAMが審査委員長を務めた、RIZIN DANCE GRAND PRIX 2023の映像

[今回掲載の3名の活動をこちらでチェック!]
彩香のYouTubeチャンネル


EMUNEKOのYouTubeチャンネル


SasammyのYouTubeチャンネル


審査員・DJ KOOのポスト(2023年3月24日)