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旅人です

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最近の記事

【書評】 「森の回廊」 吉田敏浩/1995年

ちょっと一休みして本の感想などを。 約30年前といきなり古いものですが、ノンフィクション名著の一つかなと思うので。 「森の回廊 ビルマ辺境民族解放区の一三〇〇日」 NHK出版(1995年) 第27回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品。 「『系譜をよく見てゆくと、わたしの先祖は初めはジンポーだったのだが、マルーの土地ではマルーになり、リスーの土地ではリスーになり、マルーの土地にもどって来ればまたマルーになる、という風なんだよ。そのつど話す言葉も変わって、同時に自分が何者なの

    • 国境放浪記①雲がかった国境の街・メーソート

      これから綴る文章は私にとっては「失敗」の記録だ。それは、私自身が見たかったものや行きたかった場所に辿り着けなかったことが理由となるが、こうした結果になったのは私自身が持ち込んだ無用なこだわりによるところが大きい。 初めての国外一人渡航で、関心のある地域へ行く。 目的はミャンマーの少数民族が支配する土地へ入り、主に現地で暮らす人々や兵士たちの生活・考えを聞き、果ては従軍したかった。 そこに私の持ち込んだこだわりは、人のつてや人脈に頼らず、国境付近の現地で知り合った人たちに

      • 夕闇のインセイン刑務所前へ

        軍事独裁の象徴・ミャンマー最悪の刑務所ミャンマーに正規入国しヤンゴンへ向かうとなったとき、決めていたことがある。 それは、かの悪名高きインセイン刑務所を一目見ることだった。インセイン刑務所には多くの政治犯やジャーナリスト、民主派を支援した者など軍にとって都合の悪い人々が数多く収監されている。ネット上にある空中写真を見ると、全体は円形で中心に看守小屋のような建物がある。そこから複数の半径を描くように収容所と思われる建物が連なった造りになっている。一見しただけでも一望監視施設=

        • カモとしてのヤンゴン放浪

          帰国後のメンタル不調と仕事始めの関係で前記事から3ヶ月も経ってしまいました。言い訳は当記事でもたくさん出てくるのでさておき、これらを消化しないと前に進めないので時間を見つけて書いていきます。 戒厳令下の観光名所へ 宿泊したダウンタウンのホテルは非常に快適だった。 ドライヤーや歯磨きなどのアメニティに加え、何よりバスタブがあったことに驚いた。ほとんど田舎の方にいたからというのもあるが、タイでは同じ値段でもシャワーがあるだけで銭湯好きの私は常に痒いところをかけないような疲労感

        【書評】 「森の回廊」 吉田敏浩/1995年

          クリスマス、年末のヤンゴンにて

          9月中旬からバンコクへ飛び立ち、主にタイミャンマー国境を約3ヵ月少し放浪したが、まずは記憶が新しいうちに12月末にヤンゴンで過ごした1週間を綴ろうと思う。(失敗の旅だったため書くのが億劫で仕方ない) バンコクから空路で入国、閑散としたヤンゴン国際空港 バンコクにあるミャンマー大使館で数日かけて観光ビザを取得。様々な書類が必要だったが、特に問題なくヤンゴン国際空港へ辿り着いた。 到着したのは夕暮れ時の17:30頃。機内はほとんどがミャンマー人で中国人を2名ほど見かけたくらい

          クリスマス、年末のヤンゴンにて

          ミャンマーに引き寄せられて

          学生時代のいつからか、「戦場カメラマン」になることが夢だった。数ある紛争地帯のなかで、どこに行くのか。0から始める私の場合、日本であまり知られていない地域に行くことに意味があるのではないか。そもそも本当に私の求めるものに辿り着くことができるのか。 様々な問いを巡らせながらも、少しずつミャンマー情勢に関心を持つようになっていた。現代のアジアにおいても非常に混迷を極めている国であること、多民族で構成されていることに自ずと惹かれていたと思う。 リトルヤンゴンでの奇妙な出会い  2

          ミャンマーに引き寄せられて