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ラグビー日本代表vsライオンズの舞台《スコットランド》関連の本を探す②〜王道シェイクスピアに挑戦〜

ウィリアム・シェイクスピア(1564〜1616)

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誕生の年、武田信玄と上杉謙信が川中島で戦っていた。死ぬ前年、大坂夏の陣があり、翌年徳川家康も死んだ。

シェイクスピアが生きた時代、日本は戦国時代真っ只中とは!そういえば、NHK大河で見る織田信長の衣装の襟、どこかシェイクスピアに似ている。

言わずと知れた英文学の巨匠だが、今までまともに読んだことがなかった。《読んだ》といえば、

少女漫画《ガラスの仮面》で主人公マヤが野外劇場で演じた《夏の夜の夢》を劇中劇として読んだ程度。主人公パックを熱演したマヤはいまどうしているのか、美内先生、頼むからラストまで書いてほしい。

さてもう一つ、私のシェイクスピアといえばこれ。

《ロミオとジュリエット》。宝塚歌劇のBlu-rayで死ぬ程観た。

両作品に共通していること、それは

とにかく台詞に修飾語が多い‼️長すぎ、もっとシンプルに会話してほしい‼️これに尽きる。シェイクスピア戯曲を、特に日本語で演じるのが難しいのは、舞台上での《虚構とリアル》の匙加減が難しい、ということだろうか。感情を説明しすぎるのだ。橋田壽賀子作品にも通じる難しさだが。

さて、このイギリスの誇る偉大な劇作家なら、スコットランド関連の作品もあるはず。

ええ、ありました。彼の代表作の一つ。

マクベス

スコットランドが政治的独立を失うのは1707年、この作品当時はまだイングランドから独立している。

以下、ざっくりストーリーを説明する。

スコットランド王の下、戦争で手柄を立てたグラミス領主のマクベス、戦の帰りに、荒野で3人の魔女に出会う。

よう戻られた、マクベス殿!お祝い申し上げますぞ、グラミスの領主様!
よう戻られた、マクベス殿!お祝い申し上げますぞ、コーダの領主様!
よう戻られた、マクベス殿!いずれは王ともなられる方!

(以上、新潮文庫『マクベス』第一幕第三場)

怪しいオバさん3人にこう呼びかけられたマクベスはすっかりその気になる。帰宅して妻に話すと、妻はもっと乗り気に。

そして、なぜかこの日、マクベスの城に突然お泊まりにやってきたスコットランド王とその一行。

マクベスは、王を裏切ったコーダ領主に代わりコーダの地を治めるように王から命じられる。

あれ?3つのうち2つの予言が叶っているぞ!もしかして、もしかして、、

すっかり心浮き立つマクベス。とはいえ、彼には人並みの理性と誠実さがあった。

王になりたい!でもそのために人殺しなんて!それに王はすごくいい人だし、僕のこと信用してくれてるし、そんな人を殺していいの?天罰とか当たるかも、と迷いに迷う。しかし、夫以上に野心があり肝も座った妻が一喝する。

『やってのけるぞ。』の口の下から『やっぱりだめだ。』の腰砕け、そうして一生をだらだらとお過ごしになるつもり?(新潮文庫『マクベス』第一幕第七場より)

押し出しの強い女房に罵倒されて、ようやく決意を固めたマクベスは、その夜寝ている王を刺し殺してしまう。

ついでに、一緒に魔女のお告げを聞いた友人も殺し、ここからはよくある展開。マクベスは罪に怯えて正気を半ば失う日々。味方は事情を察してマクベスの周りから消えていく。

最後はイングランド王の元に逃げた王の息子と家来たちによって城は攻められ、マクベスも殺される。めでたしめでたし。

筋はわかりやすい。しかも短い、文庫で126ページ。1日で読める。

はっきり言って、

見た目からしてヤバそうなおばさん3人に『王となられる方』とか呼ばれただけで、即その気になってしまうマクベスは、よほど以前から王になりたかったのだろう。

もちろん武将たるもの、目指すのは頂点なのは当たり前。とはいえ、このマクベス夫人の言葉、

考えていらっしゃるご自分と、思い切った行動をなさる御自分と、その二つが一緒になるのを恐れておいでなのですね。(新潮文庫『マクベス』第一幕第七場より

殺人の場合、一緒にならないのが正常だが、野心は人の心を狂わせる。マクベスは魔女の魔法にかけられたのではない。自らの意思で最後まで行動したのだ。

とはいえ、マクベスはそんなに悪い奴ではない。女房がより強欲だったからこそ夫婦共犯の殺人事件が勃発したのであって、彼女が必死で止めれば『野心』のままですんだのだ。もちろん、

こういう女を妻に選ぶのも、彼の心に巣食うものが成せる業だったかも。

結局王を殺したあと、マクベス夫人も気が狂うし、半狂乱のマクベスは周囲の人間を殺して回る。人間涼しい顔で悪人のまま生きることはできない、普通は。

この作品の有名なセリフがある。魔女達はいう。

きれいは穢い、穢いはきれい(第一幕第一場)

善と悪は表裏一体。

マクベス夫人も、夫から『魔女に《スコットランド王になる》って予言してもらったけど、どうしよう』などと相談されなければ、王がお泊まりに来ても『ここでお金使って、いい顔見せなきゃダメよ❗️』くらいで済んだかもしれない。

人間の心には善と悪が共存している。

シェイクスピアの訴えたかったテーマはこれではないか、と一読して感じた。

ちなみに魔女は二つの予言をする。

①バーナムの大森林がダンシネインの丘に攻め上って来ぬ限りは、マクベスは滅びない。

②女の産み落とした者のなかには、マクベスを倒す者はいない。

この予言は両方ともあたる。しかしなぜかマクベスは死ぬ。

どうぞ作品を一読されて、シェイクスピアの若干苦しいトリックをお楽しみください🙇‍♀️




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