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キヤノンイーグルス初心者観戦記☆第5節〜その先に光、燦々と〜

1.なにかが動き始める

地下鉄銀座線 外苑前駅

日差しは麗かに広いデッキを照らしていた。いつになく人が多い。毎週平均年齢高めの外苑前に今日は10代、20代も目につく。

田村さん、若い世代にも人気だったかしら?

私の勘違いはすぐ解けた。

その日、神宮球場ではヤクルトー阪神戦が予定されていたのだ。

とはいえ、秩父宮ラグビー場は、いつもより人で溢れていた。

事務機ダービー、あるいは複合機ダービーというのか

いかにも『企業スポーツ』的なネーミングに抵抗はあるのだが、これが

トップリーグ もう一つのダービーマッチ

であることに変わりはない。『ラグビーのダービーマッチ』といえば.昔も今も

【府中ダービー】だ。

私の世代では、【サントリー対東芝府中】という響きがしっくりくる。

先週はこの府中ダービーを若干寂しい気持ちで観戦した。東芝ブレイブルーパスは不調の真っ只中にいる。

今日のダービーはおもしろいはずだ。

リコーブラックラムズ、キヤノンイーグルスは共にヤマハ発動機ジュビロを撃破している。リコーに至っては、神戸製鋼に敗れたものの、その差僅か一点!

上潮に乗ったチーム同士の【激闘】、十分期待できる。

会場内の桜は満開だった。

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検温と消毒を済ませると、すぐ人波に呑まれた。リコーのテントは長蛇の列だ。

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私は人混みをかき分けてキヤノンのテントを目指した。お目当ては【彼女】だ。

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キヤノンイーグルス公式マスコット カノンちゃん 

見た目ラブリーではあるが、一筋縄ではいかないキャラだ。

【宇宙から来たお姫様】のはずなのに、二郎系ラーメンを食べたり、撮り鉄になってみたり、挙句今日の試合後には、ハイボール&乾き物のツマミで一杯やるらしい。

彼女はいわゆる《男性メインキャラへの寄り添い芸》で生きるキャラではない。時代の先端をいく

ジェンダーフリーな存在だ。

とはいえ、そのキャラ設定があまりに絶妙なので彼女のSNS発信は楽しみでならない。開幕節の町田GIONでは会えなかったので、今日はこれだけでも来た甲斐があった。

ファンクラブからのチケットを手にしつつ、事前告知されていた赤のマフラータオル🧣配布場所を探した。既に列ができていた。男性職員の方々がタオル🧣を手早く渡していた。飛ぶようにタオル🧣はハケていく。

田村優さん、田中史朗さんの日本代表コンビを筆頭に、Nコムのスタメンだった小倉順平さんを始めとした移籍スター達。

大学ラグビー、トップリーグのスターだった佐々木隆道新コーチ。

そして、【智将にして烈将】沢木敬介新監督。

これだけの人材を集めたら、ファンが増えない訳がない。これで『五輪代表松井千士さん』が加わるのだから、キヤノンイーグルスは今や

反則レベルに華やかなチーム、と言っていい。

座席に着くと、驚くほど近くに選手が見える。町田GIONには、陸上トラックが選手とファンを隔てていたが、今日は文字通り『チーム・ファン一丸』となって勝利を奪取する雰囲気があった。メインスタンドにも赤いタオルマフラー🧣がそこかしこに見える。改めて驚いた。

イーグルスはこんなに注目されていたのか‼️

若きチームが『強豪』となるべくひた走る姿

多くのラグビーファンが、その未来を期待し、ここに集まってきた。それはどこか

【革命】にも似た熱いエネルギーの集積だった。

                      ***

まもなく、観客が注目する面々がグラウンドに姿を現した。

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田村優さん。そのキックは何度見ても美しい。

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そしてこの方。

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沢木敬介監督。前節のヤマハ戦勝利で少し肩の荷は降りただろうか。しかし、負けられぬ決戦を前に小まめに立ち止まってはコーチ陣に指示をだしていた。

45歳。まだ人生の大きな山を登り始めたばかり、いやまだ登る前なのかもしれない。シャッターを切りながら、私は自分の4年前をぼんやり思い出していた。

選手達の練習には活気があった。前節の勝利は、彼らに自信を与えただろう。まだ20代、30代も前半の若い彼らに、勝利がもたらすものは大きい。

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選手達は驚くほどエネルギッシュだった。

この試合が持つ意味

誰もがその重さに打ち勝とうとしていたのか。


2、前半

【前半試合経過】(トップリーグ公式HPより)

2.7                   高島忍(イーグルス)
《0-5》
8’                                                          田村優(イーグルス)
《0-7》

ネタニ・ヴァカヤリア (ブラックラムズ)
13’
《5-7》
マット・マッガーン (ブラックラムズ)
14’
《7-7》
ロトアヘアアマナキ大洋 (ブラックラムズ)
42’
《12-7》
マット・マッガーン (ブラックラムズ)
43’
《14-7》
前半終了

数字だけ見ると、

息詰まる熱戦

を想像しがちだが、実際見ていた観客には、

どこか間延びした若干退屈な試合

に見えた。お互いの長所を殺し合っていたのだろう。イーグルスはスクラムで押され、 BK陣は走りきれず敵陣内でミスを連発した。

ただ、これはブラックラムズも同じだった。スクラムでやや優勢だったものの、思うように点数に結びつかない。

互いに守り切り、無駄な失点を防いだ、というべきか。

正直なところ、前節府中ダービーでのサンゴリアスを見てしまった身としては

まだ下手くそですけど

というヤマハ戦後の沢木監督のコメントがひしひしと胸に沁みた。

2.後半

【後半試合経過】(トップリーグ公式HPより)

武井日向(ブラックラムズ)         14’
19-7
マット・マッガーン (ブラックラムズ)
16’
21-7
19’
21-12
マイケル・ボンド(イーグルス)

19’
21-12
荒井康植→田中史朗(イーグルス)

21’
21-14
田村優(イーグルス)
24’
21-19
コーバス・ファンダイク(イーグルス)
26’
21-21
田村優(イーグルス)



アイザック・ルーカス (ブラックラムズ)
29’
26-21

マット・マッガーン (ブラックラムズ)
31’
28-21


33’
28-26
ホセア・サウマキ(イーグルス)
34’
28-28
田村優(イーグルス)
39’
28-31
田村優(イーグルス)

後半早々、イーグルスはFW陣第一列を全員交代させた。

当初からの予定なのか、荒療治なのか。

後半最初の得点はブラックラムズであったものの、徐々に試合はスピードアップ、イーグルス BK陣は縦横に走り始めた。

やはり、交代カードにフミさんこと田中史朗選手がいるのが大きい。フミさんは軽快にボールを捌き、俄然イーグルスは攻勢に出た。

なにより、今回もまた田村優さんが攻撃の先頭に立っているのが効いていた。田村さんといえば、

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あの雪が吹き荒れた去年の試合、指差して激しく指示を出す姿。これが『司令塔 田村優』のイメージだった。

今年は違う。積極的に攻撃に絡み自らボールを持ち込む。

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言うまでもなく、キックの精度は高い。

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背中で見せる主将の姿。その獅子奮迅の働きに私達ファンも最後まで心動かされた。

しかし、ブラックラムズも負けていない。

後半29分、アイザック・ルーカス選手のトライは、まさに事態を一人で打開する『個の力』の体現だった。

残り10分弱で7点差。とはいえ、1トライ1ゴールで同点だ!

この時間帯もイーグルスは攻勢だった。得点は時間の問題だった。

34分、ホセア・サウマキ選手トライ、39分敵陣でペナルティーを得て逆転。

トライ後も、最後のPGも田村さんは外すことなくきっちり決めた。

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ここでノーサイド

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イーグルス『ダービーマッチ』を制す‼️

会場は赤い波が幾重にも揺れていた。

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抱き合う選手スタッフ達。

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喜びを報告に来た選手達を、ファンは🧣マフラー🧣を掲げて迎えた。

2014年以来の勝利

南橋選手は翌日Twitterでそう伝えていた。

選手とファンの【興奮と歓喜の咆哮】は秩父宮をいつまでも沸き立たせていた。

この勝利が意味するもの。

これはただの一勝ではない。この後に続く2試合の相手を考えれば、今のイーグルスは4連勝が見えている。

激戦のホワイトカンファレンス、4位、もしかして3位通過⁉️

その後に続くトーナメントのドローは、、もう夢は膨らむばかりだ‼️

イーグルス公式HPに掲載された沢木監督の試合後コメントは、意外なほど控えめだった。

■沢木敬介監督
 前半は自分たちがやろうとしていたラグビーができずイライラしながら見ていたのですが、後半は前半からやろうとしていたことをしようとする姿勢が見えてきました。それがいい結果につながったのだと思います。こうして力を出し切れるようになってきて、少しずつですがチームの成長を感じています。
開幕戦(NTTドコモ戦)は自分たちがコントロールしている試合であったにも関わらず僅差で負けてしまい、チームとしてフラストレーションがたまっていたと思います。しかしその後、自分たちがやろうとしていることをしっかりやり切るメンタルの強さが徐々に出てきたのではないかと思います。
田村については、持てるパフォーマンスを毎試合出してくれています。まだまだリーダーとして勉強しなければならない部分はありますが、そういう選手は周りからも信頼されますし、去年と今年ではパフォーマンスが格段に良くなっています。いいコメントをするようにもなってきましたが、その一方で、言葉よりもパフォーマンスでチームを引っ張るのが彼のスタイルだと思います。今日のように毎試合マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍をしてくれれば、周りの選手は自然と彼についていくでしょう。

(気になる発言箇所を太字にした。)

あくまで【発展途上】を強調する沢木監督。あくまで『この試合』にフォーカスしてコメントする姿勢。それは、ご自分への強い自制でもあるのか。

これから日を追うごとにイーグルスを取り巻く環境は騒がしくなるだろう。

かつてない注目を浴びるであろうイーグルスの選手達。彼らはこれから試される。

『強豪』という名の《路》に足を踏み入れることはできるのか。光燦々と降る路、そして険しく孤独なこの《路》に。

〜あとがき〜

試合前のメンバー発表を見ながら、改めてイーグルスの選手層が厚くなってきたのを実感しました。

学生時代の憧れ『永友くん』こと永友洋司キヤノンイーグルスGMは、楽天イーグルスGM石井一久の如く、チームの底上げを図っていました。もちろん、その白眉が沢木敬介さんを監督に招聘した事ですが、強靭な肉体を持ち走れるBK陣、超クレバーな日本代表ハーフ団を揃えていたからこそ【沢木さん招聘】に成功したとも言えます。招聘後も、SO小倉選手、WTBの松井選手、そして先日日本代表マフィ選手の獲得が発表されました。

永友くんを中心とした【フロント陣の努力】もこの勝利の一翼を担っていたと感じます。

もちろん、この仕事には【それなりのお金】が動き、その『早期回収』を求められるのが監督の仕事です。

日々指揮を取る沢木さんにかかる大きな期待、その重さを思うと言葉もありません。素人ながら観戦記を書くことでチームに寄り添い、ささやかですが同世代としてエールを送りたい、そんな気持ちでいます。

それにしても、沢木さんは『エンターテイナー』でした。

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秩父宮に現れた沢木さんは『素の沢木敬介』ではなく、あくまで『ファン向け沢木敬介』であったような気がします。【スター軍団☆サントリー】で22年間ファンの視線を浴び続けた人生、それは『普通の男の人生』ではありません。シャッターを切りながら

サインを書き、握手や写真に応じる、それを仕事として生きる人生

その光と影に想いを馳せずにはいられませんでした。その中で選んだ今日のベストショット

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ラグビーに埋没している、その瞬間だけが

『ありのままの沢木さん』である様な気がしました。

いや、もしかしたらこれすらも

『The entertainer 沢木敬介』なのかもしれませんが。



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