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初心者ラグビー観戦記☆日本代表vsサンウルブズ〜【夢】は再び歩き始めた〜

1.『SHIZUOKA SHOCK』の舞台へ

2021年6月12日 東京駅

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新幹線改札口の電光掲示板は、各列車の停車駅を示していた。

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快速は『ひかり』号、各駅停車は『こだま』号。

【光速は音速より速い】

単なる物理の法則を、こんなにも情緒豊かに表現するとは。

これから私は、もう15年以上乗った事のない『こだま』に乗る。

目指す先は【掛川】。

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(歌川広重筆・東海道五拾三次より『掛川・秋葉山遠望)

東海道五十三次26番目の宿。右に見える山は、火伏せの神【秋葉大権現】を祀る『秋葉山』。あの『アキバ』なる地名もこの御祭神が由来。

関ヶ原の役までこの地を治めたのは、一途で真面目一筋の男。名は山内一豊

司馬遼太郎の小説『功名が辻』は、彼が賢妻千代に助けられつつ乱世を生き抜き、関ヶ原後『土佐一国24万石』の太守となるまでを生き生きと描いている。

私の目的地は、この掛川から東海道線で一駅、『愛野』から徒歩15分程の所にある。

まずは東京から掛川まで約1時間半、長いような短いような旅が始まった。

新幹線は満席だった。

わざわざこの時間の、しかもあえて『こだま』に乗る乗客。赤白ボーダーもしくはオオカミが描かれた半袖姿が目立つ。彼らが目指す場所はただ一つ、

日本代表強化試合 リポビタンDチャレンジカップ2021

ラグビー日本代表vsサンウルブズ 

会場は静岡県袋井市《エコパスタジアム》だ。

車内は恐ろしい程静かだった。東京オリンピックまであと40日程、しかし東京には緊急事態宣言が発令されている。駅弁の包みをひろげるカサカサという音だけが時折聞こえてきた。

こだまは停車時間が長い。小田原駅での停車中突然強い横揺れがきた。地震、ではない。脇の線路を『のぞみ』か『ひかり』が走り抜けていったのだ。風圧というのは馬鹿にできない。

『こだま』が三島駅を出るとすぐ、あの霊峰が美しい姿を見せた。

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不二の嶺に 振り置く雪は六月(むなつき)の 十五(もち)に消ゆれば その後降りけり   (富士の山に降りつもる雪は、夏も末の6月15日にやっと消えるかと思うと、また夜には降ることだった。)   万葉集 巻第三 320 作者不詳 

たしかに、雪は山頂から幾筋かが残るばかりだった。もちろん、この歌の6/15は旧暦でのこと。今の暦で七月下旬ではあるが。

新富士、静岡を通過し、こだま号は予定時刻通り掛川駅に到着した。

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しかし、ここから予定通りとはいかなかった。東海道線が昼から運転見合わせ。仕方なくタクシーの長い行列に加わった。

予定より1時間近くオーバーしての到着。

はじめての《エコパスタジアム》

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会場は既に人で溢れていた。想像を遥かに超える人の波が幾重にも続いていた。

W杯2019日本大会、日本代表は当時世界ランキング2位のアイルランドをこの地で撃破、

『SHIZUOKA SHOCK』

と評されたこの試合の舞台は、その《栄光》に相応しい威容を誇っていた。

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2.狼となる者達、狼を率いる者達

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既に両チームとも試合前の練習を始めていた。

私と夫が座る二層南スタンドは、サンウルブズ側となっていた。陸上トラックがグラウンドと観客席とを隔てている。秩父宮で日本選手権決勝を見たばかりの私には、選手達がことさら小さく見えた。

それでも、カメラのズーム機能を最大にして、私はなんとかこの日の記録を残そうとしていた。

なぜなら、

明日を担うスター達がここに集っているからだ‼️

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サンゴリアスの超実力派、梶村選手。今度こそW杯戦士に。

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右は後ろ姿だがおそらくヤマハの鹿尾選手。足もパワーもあるヤマハ期待の星。左は《ポスト福岡》ワイルドナイツ竹山選手。主審を務める久保さんが脇を走っている。

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左から、サンゴリアス尾崎選手、今日もあの決定力を見せられるか。グリーンロケッツ中嶋選手、プレーオフトーナメントでサントリー相手に3トライ、この勝負勘生かしたい。鹿尾選手と言葉を交わすヴェルブリッツ高橋選手、日本選手権準決勝でワイルドナイツから2トライ、走力、パワー十分。

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今日の試合、サンウルブズの出来は『司令塔』の彼にかかっている。娘が《パナの長谷部》と呼ぶワイルドナイツ山沢選手。

彦摩呂風にいえばまさに《才能の宝石箱💎》。この宝石達を率いるのはこのお二人。

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私が勝手に『ナオさん』とよぶ

大久保直弥サンウルブズHC。

スーパーラグビー2020中止後、ヤマハ発動機ジュビロHCに就任している。

大学から始めたラグビー。ずっと誠実に、ひたむきに楕円球と向かい合ってきた。1975年生まれ、今年46歳。ユーミンの名曲『ノーサイド』が発売された1984年にはまだ小学生😳、という世代だ。

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お約束の『鬼コーチ姿』を披露する沢木敬介コーチングコーディネイター。ナオさん同様スーパーラグビー中止後にキヤノンイーグルス監督に就任している。

男女問わず、ファンはこの方を『けいすけさん』とよぶ。このお名前、意外とニックネームが作りにくい。思いつくまで私は『ミスター』とよぶことにした。

ナオさんとは同級生。1975年4月生まれの46歳。ミスターといえば『怖い』『厳しい』。もはや都市伝説に近い。

このお二人が率いてのサンウルブズ、その活動は約1年ぶりになる。

今回は、日本代表のスコットランド遠征に向けた唯一の強化試合。遠征先の相手は、GB&アイルランド連合チーム『ライオンズ』、そして因縁のアイルランド。

なにより『ライオンズ』との名誉ある試合を恥ずかしいものにはできない。もちろん、アイルランドにボコボコにされたくもない。

サンウルブズは、対戦相手にして代表戦の大事なサポート役でもある。1日限りの再結成とはいえ、お二人の責任は軽くない。

選手達も、短い期間ながら静岡合宿=『ミスター鬼キャンプ@静岡』で鍛えられていた。

遠く北スタンド前では、日本代表チームが練習を始めていた。

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ジェイミー・ジョセフHC、久しぶりのお姿、やはり貫禄満点。『ライオンズ戦』という夢の対決、輝かしいものにしなければ。

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いつもはナオさんと共にヤマハで汗を流す『スクラムの慎さん』こと長谷川慎さん。日本代表コーチとしてこの試合に臨む。ナオさんより4歳年上、来年3月50歳になる。この姿に、改めてその存在の重さを知る。

サンウルブズの練習期間は10日もあっただろうか。コーチには佐々木隆道キヤノンFWコーチ、またヤマハの現役SH矢富勇毅選手がコーチ役として参加していた。早稲田ファンには感慨深い。あの《2006・清宮早稲田、日本選手権でトヨタ自動車を撃破》からもう15年が経つのだ。試合前から《荒ぶる》雰囲気を醸す大学生だったお二人。矢富さん36歳、佐々木さん37歳。あの時の監督きよみいの年齢にもうすぐ追いつく。

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先月までの《敵》が《味方》となり力を合わせ代表チームに挑むこの試合。しかし《味方》はある意味《敵》でもある。この中の選ばれし者だけが《日本代表》という夢の扉を開けるのだ。

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グラウンドは新鮮なエネルギーに満ちていた。やはり若さとは素晴らしい。過去より未来の時間が長いのだから。

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グラウンド中央では、すでに現役を引退し、東芝ブレイブルーパス広報として活躍する大野均さんの記念セレモニーが行われようとしていた。

日本代表歴代最多キャップ98

あまりに偉大なその記録。大学からラグビーを始め、流してきた血と汗はW杯2015イングランド🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿大会南アフリカ戦に結実した。

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スーツ姿のキンちゃんは清々しい表情で会場に現れた。ラグビー協会森会長から花束を贈呈される。

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花束贈呈後のスピーチ。3桁の失点を喫した2004年スコットランド戦にも触れていた。

心に染み入る味わい深いスピーチだった。

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(上掲写真 『Number』より引用)

練習は終盤に入っていた。

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大事な試合とはいえ、シーズン中の緊張感とは違うのだろう。ナオさんとミスターの表情は穏やかで柔らかい。

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大学入学時、既に日本はサッカーJリーグとW杯が国民の耳目を集める時代に入っていた。それから30年近くの年を経て、今なおラグビーに打ち込む人生。これからは新リーグ成功に向けて新たな試練が待っている。

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(2001年サントリーサンゴリアスvsウェールズ代表戦の試合映像より)

練習が終わり、両チームの選手達は円陣を組んだ。

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桜が早々に満開となるのか🌸、狼がその牙で花を散らせるのか🐺。

喜びと悲しみが行き交う『今』を積み重ねて『明日』になる。気がつくとそれは『人生』になる。

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これから始まる80分間、必要なのは、《勝利への執念と覚悟》、『明日』への扉を自らの力で開けるのだ。

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『わしは、この座にいるたれよりも合戦の場数を踏んでおる。(略) 踏んできて得たことが一つある。それはどのように味方が苦境に立っていても、味方の最後の勝利を信じきって働くことだ。わしはこの一戦で、山内家の家運をひらく。』(司馬遼太郎作『功名が辻』(三)より抜粋)

3.若き狼、サクラ🌸咲かせず

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選手が入場する。先にサンウルブズ。主将はカーク選手。

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続いて日本代表=Japan15。主将はリーチ選手。

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試合が始まった。

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別府合宿の疲れ、なのか。ジャパンのボールは中途半端に宙を浮く。

対するサンウルブズはエネルギッシュに動いている。

双方キックを多用しながらも、先にサンウルブズが攻勢に出た。

尾崎選手が抜ける!

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ジャパンもボールを奪取、巧みにパスを繋ぐが後が続かない。

離合集散、とでもいうのか。

そのタイミングが合わない。その結果がノックオンやノットリリースザボールといったペナルティーで顕在化する。ジャパンの方が微妙に体が重く見える。

本来パワーはジャパンが上だ。とはいえ、サンウルブズはベン・ガンター選手を軸にジャパンに圧をかける。BK陣も再三攻め上がる。

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前半の主役は、サンウルブズの《司令塔》山沢選手だった。絶妙な場所にボールを蹴り出し、チャンスを作る。

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ジャパンは、田村選手のキックが今ひとつ波に乗れない。全体の動きにも連携が欠ける。

試合開始から18分。

サンウルブズのリアキ・モリ選手が奪ったボールは左へ、山沢選手が蹴る!その絶妙に弾んだボールにジャパンのレメキ選手が触れるも取れず。そのこぼれたボールに最後追いつきゴールラインに飛び込んだのは荒井選手‼️

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サンウルブズ、左隅にトライ‼️

梶村選手が荒井選手に駆け寄る。

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山沢選手は難しい角度を確実に決める。

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0-7 サンウルブズが先制‼️

ここまでの勢いからすれば当然の帰結だった。

この日は、サンウルブズ指導陣だけピッチ外のベンチに座り戦況を見守っていた。

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試合は依然サンウルブズ攻勢。リアキ・モリ選手、ガンダー選手の剛腕がサンウルブズに勢いをつけていた。

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この後、ジャパンはようやく敵陣深く入るもその後が続かない。ライリー選手のキックでサンウルブズは陣地を挽回。ナオさんは頻繁に選手を入れ替え始めた。特別ルールなので何回でも選手は出入りができる。

ジャパンはサンウルブズのペナルティーを機に攻め上がった。サンウルブズのペナルティー。ジャパンはショットを選択する。

場内はちょっと《微妙》な雰囲気になった。

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田村選手キック成功。

3-7

ジャパンはフィジカルで攻めてくる。マフィ選手、ムーア選手、ファンデルバルト選手、ヴァルアサエリ愛選手が矢継ぎ早に襲いかかる。後半サンウルブズにこの肉弾パンチ🤛が効いてくるか。

ジャパンはキックで敵陣に入る。ボールが出た地点で旗をあげたのは現役選手、トヨタ自動車ヴェルブリッツ滑川選手はシーズン中も《審判との二刀流》で活躍。今日は審判としてこの試合に臨む。

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34分、山沢選手のドロップゴールは失敗。

もうすぐ前半が終わる。

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ジャパンはその後密集でボールを奪われる。奪ったのはベン・ガンダー選手。

攻め上がるサンウルブズ、尾崎選手が見事に抜け出し、相手選手を複数引きずりながら前進、ボールは右へ、まずライリー選手がゴールライン寸前まで進む、ボールは左へ。荒井、山沢、尾崎と繋ぎ、山なりにパスされたボールは大外で待つ竹山選手へ!

竹山選手は一直線に前へ飛び込んだ。

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サンウルブズ、二つ目のトライ‼️

仲間達は満面の笑みで駆け寄る。

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山沢選手、またしても難しい角度を成功させた。

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3-14

ここでホーンが鳴った。

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この展開、試合本来の目的から見たら微妙かもしれないが、会場はサンウルブズの躍動に賞賛の拍手を送った。笑顔と共に彼らはグラウンドを離れていった。

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ジャパンは円陣を組みしばらく動かなかった、

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ハーフタイム、サンウルブズのチアリーディングチームが華麗な技を見せ、記念の試合に花を添えた。

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4.サクラ🌸咲けども、狼🐺は死なず

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開始早々、いきなりジャパンのフィフィタ選手が敵に当たりにいくと見せつつ真ん中を切り裂くように走った。ジャパン一気に敵陣へ。

しかし、ベン・ガンダー選手がラインアウトをスチール、2度目のラインアウトはジャパンが獲得したもののその後がうまく繋がらない。

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ここでサンウルブズのペナルティー。ジャパンはショットを選択。

右隅、やや距離がある。田村選手キック失敗。

この後、尾崎選手が一気にライン際を走り抜ける。ボールをもらった山沢選手は短くキック、自分で取りにいくがトライには至らない。攻めるサンウルブズにジャパンは猛烈なタックルを浴びせ応戦。

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47分、ここで前半大活躍のハーフ団が交代した。中嶋選手と前田選手若手成長株が入る。

ジャパンはボールを早く回してきた。しかし、ベン・ガンダー選手がまたしても密集での攻防に勝利。

試合開始50分経過、ジャパンはほとんど敵陣に入らないでいる。

ここでジャパンもハーフ団を交代、齋藤選手と松田選手のコンビで巻き返しを図る。

サンウルブズは再び攻勢を強め、尾崎梶村のサントリーコンビが疾走、敵陣深く侵入した。

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ラインアウトからボールは右へ、

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中央で受けた梶村選手が軽くキック、松田選手の頭を飛び越え転がるボールに反応したのはライリー選手、そのままゴールライン内に走り込んだ。トライか⁉️

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ノットコントロールの判定。 ノートライ。

このトライが決まっていたら、その後の試合の展開は多少違っていたかもしれない。

ここから徐々にジャパンは攻勢を強めてきた。

後半開始から15分が経過していた。

57分。

ジャパン敵陣に侵入

フィフィタ選手、タタフ選手、とフィジカルもスピードもある選手が前進を図る。

ここでサンウルブズのペナルティー。

ジャパンボールのラインアウト。

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ボール獲得からジャパンはモールでゴールラインへ押し込んでいく。最後は左から抜けた堀越選手が飛び込んだ。

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ジャパン、今日はじめてのトライ‼️

松田選手は確実に決めた。

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10-14

ここでサンウルブズは再びハーフ団2人を荒井・山沢コンビに戻した。

試合開始60分を経過。やはりジャパンの攻撃時間が増え始めた。

サンウルブズはオフサイドのペナルティー。ジャパンはラインアウトを選択。

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フッカーは先程トライを決めた堀越選手。

ラインアウトから右へ。ボールを受けた中村選手が相手選手二人を引き連れたままゴールラインに飛び込んだ。トライ‼️

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松田選手のゴールは失敗。

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15-14

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ジャパンこの試合初めてリード‼️

しかしこのままでは終わらなかった。リスタートキックを取ったのは竹山選手、その後ジャパンのペナルティー。

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サンウルブズはショット選択。

キッカーは竹山選手。

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見事成功。

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17ー17 同点‼️

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時間はあと10分少々。

この後、ジャパンは速いパス回しで一気に左へ攻め上がるが、またしてもサンウルブズがボールを奪取。

しかし、キックしたボールを獲得した山沢選手にジャパンは一気に襲いかかりボールを再獲得。タタフ選手がそのままゴールラインまで疾走した。

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トライ‼️

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キックは失敗。

22ー17 5点差

時間は残り8分、ここからジャパンは攻め続けた。

サンウルブズのペナルティー。ジャパンはショットを選択。

松田選手はキック成功。

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25ー17 8点差

残り時間はあと4分。

再びサンウルブズのペナルティー。

ジャパンボールのラインアウト、やはりジャパンのフィジカルが効いてきたのか。

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ジャパンのモールは、呆気ないほどスムーズにゴールラインに突き刺さった。

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松田選手のキック。その瞬間、サンウルブズ選手は全員で走り、餞別の【雄叫び】をあげた。エジンバラでの健闘を祈って。

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松田選手キック成功。

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32ー17

ここでホーンが鳴った。試合終了。

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ジャパン15の勝利。終わってみればダブルスコアに近かった。

選手達は、健闘をたたえあった。

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選手達は皆笑顔だった。

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どの顔にも《今、この時》を生きる輝きがあふれていた。シャッターを切りながらそれを羨ましく思った。

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後ろ髪引かれる思い とはまさにこの事。

私と夫はここで席をたった。観戦初心者の私は早めの新幹線切符を予約していた。試合の余韻に浸っていたら間に合わない❗️

タクシー乗り場は既に列ができていたがタクシーは段取り良くやってきた。

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もう5時を過ぎていたが、静岡の空は初夏の爽やかな色合いをまだ残していた。

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今日の試合、勝ち負けは二の次。選ばれし者達をこの目で見届けた80分間。とっておきの『才能の宝石箱』を開け、その眩しい輝きに目を奪われる、リーグ戦でも日本選手権でも味わえない贅沢な時間があった。

後ろを振り返ると、愛野駅に向かう観客の列が歩道橋に長く連なっていた。遠き家路を急ぐ『旅』がもう始まっていた。

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〜あとがき〜

学生時代から司馬作品を愛読してきた私にとって、掛川はいつか訪れたい場所でした。

なお、秋葉山の秋葉大権現は神仏習合の神であったため、明治の神仏分離令により、ここは『神社』と定められ、御祭神も『火之迦具土大神(ヒノカグツチノオオミカミ)』とされて今に至ります。江戸の町は火事が多かったため、人々の秋葉神社への信仰も厚かった、との事です。

試合会場は袋井、広重が描いた江戸の昔と変わらぬ緑豊かな風景に心も和みました。

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《歌川広重筆・東海道五拾三次より『袋井・出茶屋の図』》

ちなみに、ナオさんのキャラは山内一豊ではないでしょう。その潔さと決断力は、むしろ同じ時代に生きた上杉景勝の臣《直江兼続》に似ている気がします。とはいえ、一豊が興した土佐藩は坂本龍馬、武市半平太などの志士を生み、明治維新の原動力ともなりました。ヤマハ発動機ジュビロを新たな時代のビッグチームに成長させてほしい、そんな願いを込めながら筆を進めました。

ミスター、この言葉の後には苗字か称号的名詞が続きます。私があえてこの続きを考える必要はありません。ミスターは、新リーグあるいはさらに上のカテゴリーで必ず結果を残し、それに見合った素敵な称号をファン達が贈ってくれるでしょう。

(大野均さんの南ア戦の写真は雑誌『Number』から拝借しました🙇‍♀️🙇‍♀️)




































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