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ラグビー初心者観戦記『プレーオフトーナメント二回戦☆トヨタvs日野@秩父宮』③〜赤き戦士は雷神をも恐れず〜

試合前の様子はこちら💁‍♀️

試合前半の様子はこちら💁‍♀️


1.後半〜赤きイルカは躍動する〜

空は薄墨色の雲に覆われ、冷たい風が相変わらず観客席に吹き込んできた。

前日の江戸川区陸上競技場では、首に火傷のような日焼けを作ってしまい、首元は情けないほど今も赤い。それなのに、この日は水筒に入れてきたホットコーヒーがやけに美味しい。

選手が再び入ってきた。

勝負の後半が始まった。

この日のトヨタは、どうもラインアウトの調子がわるい。しかし

古川早かったですね

日野の攻撃を古川選手のジャッカルでしのぐ。ところが、

またトヨタはラインアウトを失敗。

その後、日野はキックを使いつつ攻めあがろうとする。

ここで、《スター軍団トヨタ》の《スーパースター》が登場した。マイケル・フーパー選手!ひときわ大きな拍手が起こった。小さなオーストラリア国旗を掲げる人、ワラビーズのユニフォームを掲げる人。このレベルだと、『ご登場』を目撃しただけで得した気分になる。それにしても、だいぶ髪の毛伸びましたね😳

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外国人選手枠の関係でスターとスターが交代しなければならないトヨタ。贅沢すぎる。

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日野陣内トヨタボールのラインアウト、パスを受け取った6番ラウタイミ選手、日野の選手を猛烈なパワーで引きずりながら一気にトライまで決めてきた!

ハーフ団2人では止められないですね

見ているこちらも呆然とする。

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キックも成功。クロニエ選手の堅実な仕事ぶりにも驚く。

28-10 差がついてきた。

リスク背負っても攻めていきたいですね。

後半10分。ここで《あの人》が登場した。

日野 19番 北川俊澄選手。

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村上さんとアナウンサーは、しばし北川選手の経歴と思い出話に花を咲かせた。関東学院大を経てトヨタ自動車、そして2011年W杯代表。最近大学院でスポーツ心理学を修めたばかりとの事。

華々、と輝かしいばかりです。

アナウンサーの言葉は決して大袈裟ではない。スター街道を歩き続けた人生だ。

日野は速い攻めで前進、密集の中に躊躇なく飛び込んでいく北川選手の姿があった。

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日野はキックパスからあわやトライ、と思われたがトヨタが必死のディフェンスで阻止。

その後も日野は攻め続ける。左へ、そこには竹澤選手が待っていた。ゴールライン目前、猛烈なディフェンス。どんどん人が集まる。しかしトライは生まれない。

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ここで日野ボールのラインアウト、ゴールラインは目の前だ。

左隅からボールは右へ右へ、ジリジリと前進を続ける。ハリセンの音は止むことなく選手を後押しする。そして右へさらに右へ、既に中央部分を過ぎている。ここで勝負の瞬間が訪れた。

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プル選手はボールを奪われるがすぐ取り返してそのままパス、最後は右隅にチャンス・ペニー選手トライ!

ラインアウトのボールが放たれてから、トライの瞬間まで。

この時間、果てしなく長く感じた。シャッターを半押しのまま私はこのトライに至る道のりを左隅から右隅へずっと追っていた。

なんとかシャッターを切ったその瞬間、トントンと肩を叩かれた。

『すみません、動画の撮影は禁止されていますので、、』

えっ😨😨❗️

『あの、動画なんて撮っていないんですが、、』

係員さんに落ち度はない。デジカメは写真撮影と録画で撮影方法が変わらないのだ。主人が呆れたように声をかけた。

『もう、いい加減デジカメやめて一眼レフにしたら』

私がこの《小さな冤罪》に打ちひしがれている頃、スタジアムはこの渾身のトライに沸いていた。

今スタジアムで応援の声を控えるように言われましたけど、、声、出ますよね!
これは、心の叫びが出ますよね!

村上さんもアナウンサーも興奮気味だ。

難しい角度からキックも成功!

28-17

あと20分!

日野はジャッカルを成功させ再びボールを獲得。

ここでテレビは、箕内監督&ヘリングコーチを映し出した。お二人が並ぶと『これから何のロックフェスが始まるのか』というワイルドな雰囲気が漂う。

日野は敵陣でマイボールラインアウト、そして、、

押す!押す!そして、プル選手のパスから一気に川井選手は走った!その美しいコースどり。見事にトヨタ防御網の間隙を縫って飛び込む素晴らしいトライ!

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キックも成功。

ついに28-24 4点差‼️

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ここからが本当の勝負ですね

たしかに、村上さんの言葉は真実だった。

2.後半〜雷神は覚醒する〜

当然トヨタはギアを上げてきた。ここから個人技満載で猛攻を開始する。

グラウンドを見ると、選手が何人か倒れている。顔を歪める選手が目立つ。疲労はピークに達しているだろう。

あと15分弱。しかし、まもなく、

抜けた!トヨタはラインアウトから鮮やかにトライを決めた。

リード選手からのパスを、直前まで足を痛めていたはずのラウタイミ選手が走って一気に前に持っていった、最後は23番トンプソン選手余裕の独走となった。キックも成功。

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35-24 再び11点差

あと10分。

北川選手は眉間に皺を寄せ、腰に手を当てている。

トヨタの攻撃は続く。速いパスと短いキック、気がつくとゴールラインに近づいている。

対する日野はミスが続く。

そしてトヨタボールスクラム。

そこからは早かった。滑川選手は前が見えていた。するするっと抜けてトライ。キックも成功、

42ー24 決定的な追加点だった。

残りは3分。

22番田邊選手が入ってきた。グリーンロケッツとの雨中の激闘、その決着をつけた人。

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しかしトヨタの攻めはまだ終わらない。

キックからボールをキャッチした高橋選手がそのままトップスピードで走り抜けた。トヨタ連続トライ!

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キックも成功

49ー24  もう勝負は決している。

ラグビーは後半20分からほんとの地力が出てくるんですよね

村上さんのコメントは今季ラグビーを見続けた私の実感そのものだった。

3.後半〜イルカの旅立ち〜

ここで試合終了のホーンがなった。しかしトヨタのペナルティー、

日野、最後の攻撃。

マイボールのラインアウト、北川選手もその列に加わる。

ラインアウト何回やったんだろうか、と

村上さんが感慨深げに口にする。

このボールをキャッチしたのは北川選手だった。身長195cm。日野は押した。ハリセンの音も大きくなる。トヨタのファンも拍手で後押しする。

日野、郷選手のトライ!

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キックは北川選手に任された。村上さん曰く、引退する選手がラストゲームで最後にキックを任される、世界的にあることらしい。

ボールの軌道は、右に外れていった。

ノーサイド

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49ー29 トヨタ自動車ヴェルブリッツの勝利

北川選手は、笑顔で仲間達と一人一人と抱き合った。そして、観客席の方に歩みを進めた。

いつの間にか空から薄日がさしていた。雨は結局降らなかった。

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降っていたのは《拍手の雨》。

若き日、雷神としてグラウンドに咆哮を轟かせた男は、時を経て真紅のイルカになった。

まだ若きイルカの群れを牽引し、『勝負』という名の《荒海》を、泳ぎ泳いでたどり着いたこの日。

ねぎらいと、感謝と、惜別と、激励と、

あらゆる想いが込められたハリセンと拍手の音色。

それは暖かく、切なく、秩父宮ラグビー場にいた私達ファンの心奥深くに、ジンワリとしみこんでいった。

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〜あとがき〜

日野レッドドルフィンズ

前主将、村田毅選手のnoteをきっかけにこのチームを知ることになりました。

昇格して間もない成長途上のチーム。しかし、知的でかつユーモアにあふれる各選手のSNS上の発信は、ラグビーチームの新しいモデルを感じさせます。

ずっと書いてみたいと思っていたレッドドルフィンズの観戦記。書き進めながら、この《進歩への渇望》あふれるチームへの期待が膨らみます。

新リーグ、その厳しい環境の中で、チームの一層の躍進を心からお祈りしています。














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