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7/3☆ラグビー日本代表vsアイルランド代表☆試合の舞台『アイルランド』関連の本を探す☆

1.知ってるようで知らない

アイルランド🇮🇪イギリスの隣なのに、日本にはあまり馴染みがない。

ウイスキー、アイリッシュダンス、くらいか。

W杯2019日本大会。日本代表は静岡で当時世界ランキング2位だったアイルランドを撃破。このニュースはむしろヨーロッパで驚きを持って報じられていた。

そのアイルランドと、7/3に再び、今度はアイルランドの地で顔を合わせる。

アイルランドはどんな国だろうか。関連する本を探してみた。

2.アイルランドの血が流れる限り

まずこの一冊。

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アメリカ南部を舞台に、南北戦争に端を発した激動の時代を生きた1人の女性を描いた名作。もちろん、黒人差別的な描写は問題となっているので、今後この作品が『名作』として出版され続けるかはわからないが。

主人公スカーレットの父ジェラルド・オハラはアイルランド移民だった。

南北戦争勃発時の1861年には既に還暦、『39年前』にアメリカにやってきたとの描写があるから、

渡米時は1822年、21歳。

アイルランドは、すでに17世紀にはクロムウェルによりイングランドの事実上の植民地と化していたが、1801年に併合されイングランドの一部とされた。

ジェラルドは祖国の併合前後に生まれたことになる。

ジェラルド渡米後の1840年以降、度重なる凶作でアメリカへの移民は増大、国民は貧困に喘ぎイングランドへの不満は高まるばかりだった。

娘の教科書に、当時の挿絵が掲載されていた。


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(東京書籍『世界史A』105ページより)

1916年アイルランド義勇軍、市民軍の『イースター蜂起』、19年から21年の独立戦争を経て、1922年に北部を除き《アイルランド自由国》として自治領となる。

1937年に新憲法を制定して独立を宣言、

第二次世界大戦後の1949年、正式にアイルランド共和国として独立した。未だ燻る北アイルランド問題を抱えつつも、治安はほぼ安定し、金融、製薬等の産業を発展させ今日に至る。近年は風光明媚な観光地として日本からのツアー旅行も数多く組まれていた。

ちなみに、外務省のホームページで確認したところ、日本がアイルランドから輸入している製品第一位は【光学機器(コンタクトレンズ等)】と知り驚いた。

この小説の主人公スカーレットの父ジェラルドは、アイルランドを揶揄したプロテスタント系の役人を銃で殺して《お尋ね者》になり、着の身着のまま、先に亡命していた兄二人を頼って渡米している。

彼はスカーレットにこう語りかける。

『わしがアイルランド人であることを恥じたことがあるか。むしろわしは誇りとさえ思うている。お前にも半分はアイルランドの血が混じっていることを忘れてはならんぞ。一滴でもアイルランドの血を体内に持つ者にとっては、その住む土地は母親とおんなじなんだ。』

先祖代々の土地を奪われ、宗教を否定されたアイルランドの人々、しかし祖国への誇りを失うことはない。

ジェラルドのように、祖国愛を胸に秘め新天地で生き抜く道を選んだ者は、その後どう生きたのだろうか。

3.そこに残りし者達

さて、

本国に残った者たちはどうしていたのか。

20世紀初頭のダブリンに生きる人々を描いた名作がある。

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アイルランドの文豪ジェイムス・ジョイス。

最近ジョイスはブームなのか、上記表紙はちくま文庫のもの。新潮文庫では、

原作通り『ダブリナーズ』という題名となって新たに出版されていた。

筆者少年期の記憶をもとにした物語から始まる全15篇の短編は、終始重苦しい。

*親しくしてくれた老神父は枯れたように死んでいったのだが、彼には辛い過去があった(『姉妹』)

*学校をサボって友人と冒険に出かけたが、そこで出会った男は、、、(『ある出会い』)

とはいえ、貧困と沈滞、諦めが支配するダブリンに生きる人々は、逞しく、したたかでありながら情にもろい。

家族、友人、近所の人々、互いに静かに支え合いながら『今日』を生き、朝が来てまた『今日』生きる事を繰り返す。

*アル中の父、幼い兄弟を抱えて苦しい日々を生送る『彼女』は、一緒にブエノスアイレスに行こうと言ってくれた船乗りの恋人と港で会う約束をしたが、、(『イーヴリン』)

当時の彼らに『未来』というものは見えたのだろうか。

この本が出版されたのは第一次大戦勃発の1914年。既にジョイスもアイルランドを離れていた。

そして、第二次大戦が勃発した2年後の1941年に58歳で亡くなっている。

戦後のアイルランド共和国成立を見届けることはできなかった。

4.『国』を背負うということ

アイルランドの苦難に満ちた歴史を辿ると、代表選手達がラグビーの試合でみせる

強靭な肉体と精神力の発露がどこからくるのか

少し理解できるような気がする。

『国』を代表して戦う。きっと彼らにとってとても大切な舞台なのだ。

その『国』自体を再び手に入れるために長年国民が流した血と涙、それを思うと。

7月3日の試合、グラウンドに立つアイルランド代表に敬意を表さずにはいられない。

その高き誇りに見合う良い試合となるように、日本代表の奮闘を祈るばかりだ。






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