初心者『ラグビー』を撮る③〜悪天候、でも撮りたい!〜
死ぬかと思った。
これは大袈裟な表現ではない。
雪国育ちでも、雪山登山にも親しんでいない私が、
横殴りの雪の中、80分以上屋根のないスタジアムで座っていたら、
言いようのない恐怖に襲われたのだ。
寒い!
ユニクロのウルトラヒートテックも、ムートンブーツも、ベンチコートも、この寒さには勝てなかった。
正直なところ、防寒や雨対策にはベストを尽くさないと、
『なんのためにここに来たのか』さえ分からなくなる。
防寒、雨対策に投資を惜しむな!
これがこの日の教訓だった。
2020年1月18日
Canonイーグルスvs三菱重工相模原ダイナボアーズ
朝方で雪は止む、という気象庁の予報を嘲笑うかの様に
雪は衰えを知らず、北風も止むことなく
秩父宮ラグビー場は
新田次郎『八甲田山死の彷徨』の如く観客を酷寒の恐怖にさらしていた。
ちなみに、右下の白い物体は、私物全てを放り込んでいる45ℓビニール袋だ。濡れ防止の必需品、という話は本当だった。
はっきり言って、こんな天候の中手袋なんて外せない。でも防水手袋をしたまま撮影は不可能だ。思い切って外すと手が数秒で震えてくる。
こういう時は、構図もピントも無視だ。
とにかくシャッターを切り、すぐ手袋をする。
初心者は、記録を残すことに意義がある、と開き直ることが大切だ。とはいえ
一瞬の作業でも手は濡れるので、だんだん手袋内部が濡れてくる。
まさか凍傷になるんじゃないか(なる訳ないが)
と、エベレストの植村直己さんみたいな気持ちになる。
この写真は一体どの場面を、誰をポイントにしたくて撮ったのか未だに分からない。でもなぜか気に入っている。
この写真、おそらく、キャノンがトライを決めて田村優さんのCG待ち、だと思う。2019W杯後狂乱気味に混みあっていた秩父宮も、この試合が第一試合ということもあり、流石に空いている。それでも10000人は超えていたらしい。5000以下、という今の観客制限がいかに厳しいか実感する。
観客も命懸けの観戦だが、選手達も内心泣きそうだったのではないか。選手達はボールが手につかず、田村さんもキックの調子が今ひとつだった。
とはいえ、
応援するキャノンは勝利した。行った甲斐があった。
銀座線内では体の震えが止まらなかった。芯から冷える、とはまさにこの事だ。
あとでこの日の写真を見返してみると、
別に何の山場を撮ったわけでもないのに、妙に愛着が湧く。
選手達と観客が
命に関わりそうな寒さの中で時間を共有した
決死の一体感
を感じるのだ。
こんな悪天候でも、応援に行ったのだ!
というファン心に浸っているだけかもしれないが。
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