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原巨人V2 成るべくして成ったセ界一


「いやぁ、まさか東京Dでの優勝に標準を合わせていたとはなぁ 流石だわ
まぁドラフトでもくじ外す徹底っぷりとかはいらないんだけども」

 なんやかんやありながらも原巨人が前年に続いてセ・リーグ連覇を果たした。

 今季は新型コロナの影響で開幕延期、無観客からのスタート、withコロナでの日程消化という異例のシーズンとなったが、全権監督である原監督の圧倒的な場数と経験による選手マネジメント力、チーム編成力が光るシーズンとなった。

 シーズン途中での積極的なトレードや、起用する選手の見極め(特に野手)の鋭さには度々感服させられた。
 例年とは違うシーズンで様々な制限があっても、「できる範囲」でやれることをやり尽くしており、同リーグの他球団の動向と比べてしまうと、言い方は悪いが優勝は必然だったとも言える。

 そんな2020年シーズンを振り返ってみたい。


1,不安多き開幕前

 両リーグ最速でマジックを点灯させ、首位の座を譲ったのは7月12日と13日の2日のみ(13日は移動日のため試合無し)と、独走で優勝した今シーズンだが、開幕前の評価は決して高くなく、不安材料の方が多かったのも事実だ。

 今季の春季キャンプ時に制作したnoteから引用するが、
「投打のレジェンドである上原と阿部、昨季チームの勝ち頭でリーグ2冠の山口、長年チームのブルペンを支えた鉄腕マシソンと抜けた穴は大きい。
また外国人選手はR.デラロサとC.C.メルセデス以外は全員退団(支配下選手のみ)となっており今季に関しては、退団選手>新加入選手 となった感は否めない。
理想的なチームバランスだった2009年読売巨人軍 │ https://note.com/9202/n/n47eaeeff5edb

 というように、FAで楽天 美馬学とロッテ 鈴木大地の獲得に失敗し、新戦力は日本での活躍が未知数な外国人3名のみ。
 更には限られた出場機会ながら21本塁打を放ったゲレーロを切っておきながらNPB経験が豊富なヤクルト・バレンティンの獲得を見送り、開幕時の外国人野手は新外国人パーラと育成上がりのモタのみ。と「本当に大丈夫かよ...」と不安を抱えたものだ。
加えて坂本勇人大城卓三の2名がコロナ微陽性判明...と追い討ちをかける。

 そんなチームがどうやって開幕から首位を走り続けられたのか。

2,前年の悔しさを晴らした者たち

 先程も言ったように、今季は開幕前に新戦力の補強を満足に行うことが出来なかった。
 そうなるとまずは現戦力でやりくりするしかない。特に昨年悔しい思いをした選手の復活が鍵になるのだが、そこが上手く噛み合った部分が大きいと思う。
※以下選手の2020年成績は全て10月30日時点

菅野 智之

19年 22登板 136.1回 11勝6敗 防3.89
20年 18登板 127.1回 13勝2敗 防2.05

2017年、2018年と2年連続沢村賞に輝いた名実ともに日本のエースだが、昨年は故障もあり自身プロ入り後初めて規定投球回にすら届かず、防御率も過去ワーストの3.89に終わった。それでも二桁11勝をマークしたのは流石だが、優勝会見での「今年に関しては何ひとつ貢献できてないなと思います。」との発言が全てを物語っている気がする。

しかし今季はフォーム改造に取り組み、開幕投手から13連勝というプロ野球記録を樹立するなど圧巻のシーズンに。日曜に負けたとしても、菅野が主に投げる火曜日は負けない為、嫌な流れを断ち切る役目も果たし、大型連敗も無かった。
大エース菅野が帰ってきた。
【吉川 尚輝】

19年 11試(41-16).390 0本 3打点 OPS.846
20年 103試(321-87).271 8本 32打点 OPS.736

毎年二塁のレギュラー最有力と期待されながら故障で離脱してしまっていた吉川尚輝。
今季は開幕戦で逆転2ランを放つ(このHRで菅野は勝利投手になり、後の連勝記録への架け橋となった。)など、目立った故障もなく一軍に帯同し続け、ほぼ全ての打撃部門でキャリアハイをマーク。
特に9月には2度のサヨナラ打を放つなど勝負強さをみせ、坂本との二遊間もリーグ屈指の安定感を誇りセンター丸も含めたセンターラインは日本でもトップクラスの磐石さとなった。
【中島 宏之】

19年 43試(54-8).148 1本 5打点 OPS.555
20年 92試(261-76).291 7本 28打点 OPS.778

移籍初年度の昨年は西武時代のレギュラー定着後ワーストの成績に終わり、悔しさを胸に臨んだ今季は春季キャンプから新任の石井琢朗コーチとマンツーマンで打撃改造に取り組み、OP戦から開幕後も好調をキープ。流動的だった一塁でチーム最多の出場を果たし、前年を大幅に上回る成績を残し雪辱を果たした。
私は開幕前から常々2009年の谷佳知のような存在になって欲しいと期待していたが、数字では及ばなかったものの、貴重ないぶし銀として攻守に渡って大きく貢献してくれた。


3,ニューフェイスの台頭

 上記の選手だけでなく、前年まで一軍経験の無かった(少なかった)選手の台頭も大きかった。

【戸郷 翔征】

19年 2登板 8.2回 1勝0敗 防2.08
20年 17登板 95.2回 8勝6敗 防2.92

前年は高卒一年目ながらリーグ優勝決定試合でプロ初登板初先発という史上初の鮮烈なデビューを果たし、それから6日後の阿部慎之助引退記念試合にてプロ初勝利を果たした近未来のエース候補。
高卒2年目となる今季は開幕ローテーションに入り菅野に次ぐ2番手という地位を掴んでみせた。
広島の新人森下と新人王争いを繰り広げ、自己分析能力や課題の修正力も高く、とても20歳とは思えない投球を幾度となく見せてくれた。
シーズン終盤はややガス欠気味になったものの菅野の後継者として非常に大きな期待を背負う投手だ。
【大江 竜聖】

19年 8登板 10.2回 0勝0敗 1H 防6.75
20年 40登板 34.2回 3勝0敗 8H 防2.86

前年は開幕一軍入りを果たしプロ初登板をマークしたが、結果を残せず8試合のみの登板に終わった。
しかし今季はサイドスローにフォーム改造するが、これが大当たり。7月24日に一軍昇格すると、勝ちパターン、リード時、同点時、ビハインド時、回途中、回跨ぎ、連投...とフル回転。その起用法には多くの批判が集まり私自身も疑問を持ったが、出された場所でしっかり結果を残した。特にピンチでの回途中登板の場面での火消し能力の高さには何度も助けられた。何度もありがとう
と言いたい。
【松原 聖弥】

19年 一軍出場なし
20年 77試(245-63).257 3本 19打点 11盗 OPS.691

野手で今季台頭した若手というとやはり松原の名前は挙がるだろう。
2018年の日米野球エキシビジョンゲームにてメジャーリーガー相手にランニング3ランホームランという衝撃デビューを果たしたのも最近のことのように思えるが、今季が公式戦でのプロ初出場となった。
個人的には、松本哲也の様なタイプの選手だと思っていたがパンチ力があり、柵越でのプロ初ホームランも記録。中盤からはライトのレギュラーを掴み、守備も経験を積むにつれ上達していった印象だ。故障がちで途中帰国したパーラの穴を見事埋めてみせた。


4,シーズン中の積極的なトレード

 開幕前の補強は上手くいかなかったものの、今年の巨人軍を語る上で外せないのは開幕後に立て続けに行ったトレードだ。開幕して1週間足らずで成立したトレードが楽天との"池田駿ウィーラー"のトレード。こちらについてはトレード発表直後にnoteを制作しているのでそちらを見て頂きたい。
ウィーラーが巨人軍にもたらすもの │ https://note.com/9202/n/na8f7478cc378

 2件目は7月14日に同じく楽天と"高田萌生高梨雄平"のトレード、3件目は驚いたファンも多いと思うが、9月7日のロッテとの"澤村拓一香月一也"のトレード。更には9月末に三度楽天との金銭トレードで田中貴也が移籍している。

【Z.ウィーラー】

20年 90試(251-62).247 12本 36打点 OPS.729

詳細は上記noteに綴っているとして、途中加入ながら二桁本塁打をマークし、一塁、左翼、代打と起用法は流動的だったがここぞでの一発が出ていた。また懸念されていた守備だが、本職ではないものの一塁、左翼共に投手を助けるスーパープレーが幾度となく見せた。
また、ムードメーカーとしても期待通りの活躍を果たしてくれ、チームを上昇気流に乗せてくれた。
来季の契約は微妙だが新外国人の保険や兄貴分的なポジションで残留させるのが一番いい気がする。昨季のゲレーロのようにならなければいいが...
【高梨 雄平】

20年 41試 34.1回 1勝1敗 20H 2S 防1.57

本当に近年稀に見る神トレードだったと思う。
楽天で出番が減少していた高梨は新天地巨人軍で腕を振りまくり、救世主となった。
東京ドームでは今季無失点(10月30日時点)、移籍後15試合連続無失点などリリーフエースとして我々に絶大な安心感を与え、信頼を勝ち取った。
(この高梨と大江については書きたいことが多すぎるので別でnoteを制作しています。)
'20年Vを語る上で欠かせない救援陣5兄弟と隠れた"次男坊" │https://note.com/9202/n/nf6c4ef32f5e8

 そして香月一也もファームではロッテ時代よりも少ない打席で本塁打数が上回るなど環境が変わっても対応力を見せており、左の大砲という点でも現在巨人軍には居ないタイプなので将来が非常に楽しみな一人だ。
 また、その香月とトレードでロッテに移籍した澤村拓一は巨人の功労者だったが今季はなかなか本来の投球ができていなかった。しかし新天地でのびのび投げて
 結果が出ている点を見ても環境を変えてあげるという原監督の判断は間違っていなかったと再認識できる。


5,随所で見られたチーム内での相互カバー力

 前年のリーグ優勝時、チームを引っ張ったのはやはりサカマルオカ(坂本・丸佳浩岡本和真)だった。
誰かが停滞してもカバーし合いながらペナントレースを戦い抜いた。

 そして今季も開幕後まず丸が大ブレーキ。(リーグ優勝会見にて、開幕当初骨折していたことが原監督の口から語られた。)
「まぁ丸は去年もスロースタートだったしな。」
と思っていた私だが、7月に入っても丸は打率は.200台前半〜.250の間を停滞しており少し焦りつつも不安は無かった。
 事実、その間は岡本が打率.400キープと打ちまくりカバーしていたのだ。
 ここまでは昨年同様いい傾向だったのだが、もう1人のコアである坂本はというと開幕ダッシュにこそ成功したが、その後は急降下。6月末からは.250前後を行ったり来たりとなかなか上がりきらない。

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 そうこうしているうちに唯一好調をキープしてきた岡本が打率.300を切ってきた8月になったが、依然サカマルは停滞気味。この間のチームは7試合連続一桁安打(8/2〜8/9)と遅めの梅雨入りとなるのだが、それでもこの間チーム自体が落ちなかったのは、菅野戸郷の二枚看板が粘りの投球で試合を作ったからだ。

 8月は第一週から第四週までチームは日曜勝ちなしだったのだが、週明け初戦に先発した菅野が4戦4勝と、嫌な流れを完全に断ち切ってくれた。
 昨年助けられた野手陣に恩返しという言い方が合っているのかは分からないが、見事にカバーしてチームを立て直す。
 また戸郷も8月は4戦4勝&防御率0.37という化け物のような成績で月間MVPこそならなかった(月間MVPは菅野)が素晴らしい投球を見せてくれた。

 すると打線のコア達も徐々に調子が上がってくる。8月の終わりから3名とも打率は右肩上がりで9月に突入。

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 すると8月25日〜9月16日までの20試合で9連勝含む17勝2敗1分と一気に上昇気流へ乗っていき、11日には原監督が球団最多となる監督通算1067勝を挙げ球史にまたひとつ名を刻み、15日には早くも優勝へのマジックナンバー38を点灯させたのだ。(この間打線も10試合/20試合で二桁安打と完全に息を吹き返している。)

 ボジションや役割など関係なくチーム全体でカバーし合いながら苦しい夏場を乗り切ったその様は昨年同様まさに"ONE TEAM"だった。


6,故障者のカバー

 当然、各ポジションでのカバー(特に故障者)も見事だった。
 先に書いたが離脱したパーラの穴は松原が埋め、貴重な右のセットアッパー大竹寛が離脱した時はチーム最多登板の鍵谷陽平や、シーズン途中にリリーフに再配置転換された田口麗斗が、シーズン序盤過酷な場面での起用が多くフル回転した高木京介が離脱してからは大江や高梨がその穴を埋めた。
 また、開幕直後に離脱した小林誠司の穴は大城がメインで正捕手に座り、打撃でも結果を残しながら、投手によっては炭谷銀仁朗岸田行倫もマスクを被るなど、昨年の"捕手併用制"の経験が生かされた場面のように感じた。

 加えて、9月16日〜10月2日の間、虫垂炎でチームから離れた元木大介ヘッドに代わり代役を務めたのが阿部慎之助二軍監督だったのだが、これは近未来の"阿部ヘッド"、"阿部監督"まで見据えた研修と捉えると合理的だし、この間結果的にマジックを17も減らしている事からも良いカバーだったと言えるので、原監督の決断力はさすがだ。(ドラフト会議でも育成指名は阿部二軍監督にやらせている。)


7,奮起するアラサーたち

 もう若手と呼ばれる時期は過ぎた中堅選手たちも所々で奮起した。
 いわゆる93年組と呼ばれる世代では増田大輝が代走メインながら盗塁王争いを繰り広げる活躍で代走のスペシャリストを襲名。若林晃弘田中俊太も守るポジションの幅を広げ、より多くの出場機会を得ていった。
 投手ではやはり中川皓太か。終盤から故障で離脱するものの37試合登板で自責点4、防御率は1.00と昨年よりもさらに安定感を増して、ピンチの時には笑みを見せるなど不動のセットアッパーとして心身共に成長した。

 また、個人的にずっと応援している立岡宗一郎の復活が見れた事は本当に嬉しかったし、言ってしまえば今季1の喜びを爆発させた瞬間だったと思う。
これからも応援し続けます。
暗黒打線の希望だった立岡宗一郎 さぁ甦れ │ https://note.com/9202/n/n995f606e5cd1


8,絶えない話題性

 原巨人とはいつの時代もファンや世間に話題性を与えてくれるエンターテインメント性に富んだ組織だと思っている。

 まぁ、これは別に何かの引用とかではなく私の戯言なのだが、今季の巨人軍も非常に話題性の絶えないチームだった。

原監督 川上哲治氏の球団監督最多勝利記録を更新
・坂本勇人 通算2000安打達成
・菅野智之 プロ野球新記録 開幕投手から13連勝
・戸郷翔征 新人王チャレンジ
・岡本和真 二冠チャレンジ (本塁打王&打点王)
・増田大輝 盗塁王チャレンジ
・投手 増田大輝
・丸佳浩 一人セ五連覇
・戸根千明 二刀流挑戦

etc...

 また来季も我々に多くの楽しみを与えてくれるだろう。


9,最後に

 ここまで非常に長くなったが、正直今季(特に終盤)はなかなかマジックを自力ではなく他力本願で減らしたり、シーズン通して磐石を誇ってきた守備で綻びが一気に出だしたり、謎の投手継投や一軍↔二軍の入れ替えの判断基準...等フラストレーションの溜まる場面も多かったのも事実だ。

 まぁ優勝したのだからそれでいいと言えばそこまでなのだが、日本シリーズに対しての不安は山積みである。
 何とかセ・リーグの意地を見せて欲しいものだ。

 リーグ優勝も当然目標ではあるが、シーズンの最終到達点は日本一。
 不安は多くとも、これまでのようにチーム内でカバーし合いながら挑戦者の気持ちで思いっきりぶつかっていって欲しい。

 最後に優勝直前に登録抹消になった立岡宗一郎の奮起と、今後の活躍を切に願い締めとします。

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