映画を観る生活 - 2023.01編
まえがき
映画館に友達や家族と行く、ということをしなくなり「映画館とは1人で行くもの」みたいな感覚が自分の中にある。苦手、というわけではないが映画鑑賞後の「感想会」がそこまで得意ではなく、というのも自分は「本編鑑賞直後」の感想が、映画館から駅までの徒歩時間で大幅に変わることがある。「面白かった!!」が「つまらなかった!!」と逆転することはないのだが……。
特に映画をよく観る生活を始めたばかりの頃は、周りの人間の評価によって自分の感想も変わってくるというか、「そう言われてみれば確かにそうだ!」とブレブレだった時期すらあった。今ではそれもなくなり、素直に自分がどう思ったかみたいなことを感想として持ち、それを容易に入れ替えない姿勢として整いつつある。批評的な感想を聴いて「なるほど!」と思うことこそあるが、最終的には結局「自分が好きかどうか」に落ち着くのだから他人の評価などどうでもよいのだ……という精神を大事にしていきたい。
というわけで今年も映画を観る生活を続けている。
昨年の雪辱を果たすため、自分の周りの友人たちからすると「あいつもうややムキになっているぞ」と思われているかもしれないが、「年間鑑賞数=100本」を掲げてなんとか時間を作っていろんな作品と触れている。楽しい。
本記事では、2023年に入ってから観た映画の「鑑賞時の自分の思い出」を書いていく。大きなネタバレは書かないつもりだが、「予告編映像を見れば分かる程度の情報」や本編の展開に触れたり、「筆者の感想自体がある種のネタバレになる」恐れもあるので要注意。
1. Avatar: The Way of Water
鑑賞日:2023.01.11(映画館にて)
2022年のうちに鑑賞したかった作品のひとつ。前作=『Avatar』は公開当時には観ておらず、2022年秋に劇場公開されていた「ジェームズ・キャメロン3Dリマスター」なるものを鑑賞済み。
前作同様、脚本はいたってシンプルで難しいことがほぼない。これに退屈している人もいるようだが、この手の映画はもはや読み解くような鑑賞ではなく「映像体験=アトラクション」に近い感覚で観ている自分にとっては良い意味でちょうどよく、逆にこれ以上複雑な物語にされると「映像に夢中で話の展開に追いつけない」という事態になりそう。
自分の好みの話になるが、「映画本編時間」は劇場で観るものについては「長ければ長いほど嬉しい」派。自宅だとちょっとつらいかもしれないが、本作なんと本編時間は192分。それでもあっという間にエンドロールに入った感覚があるので、やはり没入感の凄まじさは言うまでもない。
2. Swiss Army Man
鑑賞日:2023.01.13(U-NEXTにて)
「ダニエル・ラドクリフは『ハリー・ポッター』以降、よくわからない役ばかり演じている」という話というか噂はやや有名で、本作は彼が「万能死体役」としてポール・ダノ演じる取り残された青年とバディを組み(?)無人島からの脱出を試みる映画である。そんな馬鹿な。いや本当だった。
登場人物はほぼこの2人で、『クレヨンしんちゃん』の3倍くらいの下品さに大人の生々しい話が加わったような内容の対話が多く展開され(※ダニエル演じる死体は突然普通に喋り始めるので)、文字通りボロボロになりながらも前へ前へと進んでいく。「万能死体ができること」をやや大喜利のようなかたちでポンポン見せられるのは正直楽しく、「無人島を脱出する話」と思って観ていると、良い意味で期待を裏切られる結末に。中盤までは割と「下品だなあ」と少し引き気味の自分が、最後には心温まる気持ちになるようにセラピー的に帰結するのだからこの作品は素晴らしい。
本作の監督は、後に『Everything Everywhere All at Once』でアカデミー作品賞を勝ち取るダニエルズ(2人組)だが、それを自分が知ったのは本編鑑賞後・Filmarksを開いたタイミングだった。なんという偶然。
3. The Menu
鑑賞日:2023.01.15(Disney+にて)
とある孤島にある「予約が取れない」高級レストラン。そこに訪れることができるのは、富豪や経営者・俳優など一握りの人間だけ。ただその日は、1人だけ「招かれざる客」も島に向かっており……というホラームービー。
劇場で予告編を観たことが数回あり、当時から気になっていたのだが気づいたときには近所の映画館での上映が終わってしまっていた……が、なんともう配信されている!と気付き慌てて鑑賞。最近の映画(特に海外制作の作品)は、劇場公開から配信されるまでの期間がかなり短く感じる。大変ありがたい。
孤島にある高級レストランというワンシチュエーションもので、だからこそなんだとは思うがこのレストランをはじめ孤島にある建物内のデザインがとてもとてもこだわられていて素晴らしい。「絶対に何か起きるだろう」と思わせるやや不気味で無機質な印象と、洗練さを併せ持つデザインになっているなと感じた。
現代アート的な解釈による料理、それを客の過去と絡めてくるアイデア、そして何よりすべての料理が美しく描写してくれる。しかし最後のあれが出てくるまで全然お腹が減らない、「食べたいと思う料理」がなかなか出てこない。そんなある種のお預けを喰らいながら見せられているような、やや狂ったレストラン映画であった。
4. 非常宣言
鑑賞日:2023.01.18(映画館にて)
パンデミック系のジャンルという時点でただでさえ怖そうなのに、飛行機に乗ることがそこまで得意でない自分、なんでこれを観たのかと問い詰めたくなるような映画であった。本作は、飛行機内で起きる「他人による意図的なバイオテロ」によるパニックムービーである。内容は大変おもしろいのだが、「他人」や「飛行機」に少なからずの恐怖心を覚えがちな人にはややオススメしづらい。
バイオテロを実行するキャラクターをイム・シワンさんが演じているが、これが素晴らしく、自分に韓国語の知識やニュアンスを感じ取れるスキルがあれば……と悔しくなったほどである。声色や表情、特に「目」が最高に怖い。「実際にこういうヤバい人、いそう」感がとてつもない。彼が出ているシーンはもれなく良かった。あんなにキレイなお顔立ちをされているのに……。
本編中、とある人物たち(どの立場にいる人かどうかはネタバレ防止のため伏せる)がある重大な決断をするシーンには悲しむことしかできず、「どうしてこんなことに……」とやるせない気持ちが本編内と完全にシンクロし、とてつもない虚無感に襲われる。いわゆる「人間怖い」系映画として容赦なく恐ろしい、素晴らしい出来になっていると思う。
5. The Guardians of the Galaxy Holiday Special
鑑賞日:2023.01.24(Disney+にて)
クリスマスに合わせて観ると決めたはずなのに、クリスマスからほぼ1ヶ月後のタイミングで鑑賞。
失意にある主人公=スターロードことピーター・クイルを励ますために、彼の仲間2人が地球に降り立ち、ケヴィン・ベーコン役のケヴィン・ベーコンを拉致するというとんでもなくめちゃくちゃな話。しかし過去作を、もっと言えばジェームズ・ガン作品を観ているとこの突拍子のなさはノイズではなくむしろ良い調味料くらいに捉えることができるのはもうそれは確立した作家性のように思えて好印象に感じる。
『The Guardians of the Galaxy Vol.2』のときに味わった「映画作るのウマ〜〜〜〜〜!!」とバンザイしてしまう感覚が、本作にもあった。個人的には近年で最も注目している監督の1人になっているので、5月に控えるシリーズ最終作『Vol.3』、そしてDC映画などなどにこれ以上にない期待を寄せる。
あとがき
先日、タブレット用アームを購入した。ベッドに取り付けることで、仰向けに寝て布団をかぶった状態で映画が観られるという環境である。その日のコンディション的に「眠るには早いけど横にはなりたい」みたいな日が珍しくなく(きっと加齢のせい)、そういうときにバッチリなアイテムである。「映画はでかい画面で観るべきだ!」というこだわりを捨てれば、これで全然良いなあと思い直した。
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