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『薄暗い通路』
約1500字のショートショートです。
夢をもとに書いた作品を集めた無料の夢日記マガジン「夢の中」を作成しました。
これからの作品にご期待ください。
気がついたら無機質で閉鎖的な通路にいた。
薄暗く、コンクリートの地面は少し濡れ、冷たい空気が漂う通路の先には長い階段があった。
階段へ続く扉のない枠の上部には出口と書いた緑色のランプが光っていた。この通路自体も不気味だが、私の後方—歩いて来たであろう場所—と階段だけが真っ暗で異質な空気が漂っていた。
「こんなところから早く抜け出そう」
恐怖心はあるものの、ずっとこの場所にいるのは嫌に思うので真っ暗な階段の方へと歩き始めた。
真っ暗な階段の先から、ドサドサと鈍い音が続いて聞こえて来た。
「何かが降りてくる」
そう思っていたが実際は違った。
予想外すぎて頭が追いついていない。
なんせ青白くなった人間が階段から転げ落ちて来たのだから。
その人間を見てすぐに、それが私だとわかった。
数カ所から血を流し、紫色になった痣≪あざ≫が至る所にある私の少し先に横たわるその人間は私で間違いないだろう。
一瞬にして眩暈と吐き気を催した。
眩暈がひどくなり膝から崩れた目の前が暗くなった次に瞬間からこの通路に初めて来た時と同じ光景だった。
眩暈はなくなっていて、ビデオが巻き戻されたような、場面が瞬時に変わったようだった。
「時間が戻りでもしたのか」
その予感は的中していた。
そうとも知らず私は同じように階段に向かって歩き始めた。
扉のない枠をくぐって階段の1段目に足をかけた時、一足の革靴が転がって来た。
革靴が一足だけ転げ落ちてくるなんておかしい。
階段から足を下ろして少し下がると、戸のない枠に躓≪つまず≫いて尻餅をついた。
「嫌な予感がする」
その予感の通り、革靴に続いて転げ落ちて来たのはやはり自分だったが先程とは少し様子が違う。
腹をを刃物で刺されたような血痕がベッタリとついていたのだ。
血痕の大きさからして、複数回刺されたのだろうか。
そんなことよりも階段の先には殺人鬼がいるかもしれないと慌てて立ち上がり階段とは逆方向の暗闇に走っていくと途中何かに蹴躓≪けつまず≫いた。
少し濡れている地面にうつ伏せになった私は、胸部を少し打って呼吸ができなかった。
少しして、呼吸ができるようになり治った頃、目の前が少し明るいことに気がついた。
見たことのある光景だが、今度は分厚い扉が目の前にあった。
「この場所から出られるのだろうか」
この数十分の間に、悲惨なことが立て続けに起こっている。
早く抜け出せるのなら抜け出したい。
転んでいた私はゆっくりと立ち上がって分厚い扉の前まで歩いた。
把手≪とって≫に手をかけた次の瞬間。
—ガチャン—
向こう側から扉の把手≪とって≫を捻って開けようとしている誰かがいるようだった。
しかし、こちらが捻って扉を開けようとしてもその分厚い扉はビクともしなかった。
「こっちはほぼ行き止まりじゃないか」
元来た方へ引き換えそうかとその分厚い扉に背を向けた時だった。
—ガチャン。ウァァァァ。—
不気味な音を立てて扉が開いた。
恐る恐る振り返ると、扉は開いたままで誰もいなかった。
「おいおい。なんなんだよ。」
少し苛立ちながら、扉の方へ近づきその先に何かあるかと確かめた。
階段があった。
それもまた暗く、どこまで降っているのかわからない程の。
やはり引き返すか、それとも賭けに出て降りるか迷っていたその時。
誰かに、刃物で刺された感覚がしたと同時に階段から落ちていった。
しばらくして意識は無くなった。
気がついた時にはまた、あの通路の、あの階段の目の前にいた。
しかし今度は“出口”の電燈が赤に変わっていた。
不気味さが増した通路と階段には、無数の私の骸≪むくろ≫が転がっていた。
——それは無傷で血を吐いているもの。それは腹を刺されているもの。それは背中を刺されているもの。——
思わず3歩後退りした、次の1歩で私は後ろ向きで階段から落ちた。
私はその長く暗い階段を転げ落ちながら、何度も何度も体を階段に叩きつけられた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回もまた読んでいただけると嬉しいです。
梔子。
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