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アンビグラムのネタの思いつき方


こんにちは、Σです。今回はアンビグラムのネタをどうやって思いつく・考えるかについてまとめてみます。
(個人的な方針として「漢字を含む2文字以上の語句」で制作することが多く、それが前提になっている部分があります。)




1. 既定のお題で制作する

「みんビグラム」「毎週お題」など題材が決められている場合、題材を考える必要がありません。初心者でもアンビグラムにしやすいお題が選ばれており、また他の制作者の作品を参考にすることもできてとても考えやすいので、まず迷ったらこれらのイベントやその過去お題で制作してみるとよさそうです。

アンビグラム用のお題に限らず、「10分作字(現在休止中)」や「今年の漢字」などを題材にアンビグラムを制作することに決めておくことによってもネタ切れには困りません。
また、まわりの人にお題を出してもらったりするのもいい方法です。


2. 題材のジャンルから考える

私も寄稿させていただいている「月刊『アンビグラム』」が好例です。
お題として出されたジャンルに関する語句をひたすら連想してみたり、関連するWikipediaなどのサイトや書籍などを眺めてみたりして考える方法がオーソドックスでしょうか。
私はクイズの問題から探すことも多いです。答えになっている語句は一定の出題価値があり作品の題材にしやすいですし、事物が簡潔に説明されている問題文中に含まれる語句からも題材を探しやすいです。簡単に探すには、クイズゲームアプリ「みんなで早押しクイズ」の問題をまとめている「【みんはや】問題集」「QuizStocker」などのサイトの検索機能が利用しやすそうです。
また、最近ではチャットAIに関連語句を挙げてもらう方法もあり、共存型を制作するために語句の対を考えてもらったりといろいろな活用方法があります。
その語句単体ではアンビグラマビリティを感じなくても共存型アンビグラムの題材になるので、特に二字熟語などをメモしながら語句を検討するとよさそうです。

年中行事や「◯◯の日」などにちなんだ制作も同様で、語句を連想して制作することになります。


3. ひたすら語句を思い浮かべる

初期の拙作は主にこの方法でネタ出しをしていました。
最初期はメモ帳にひたすら思い浮かんだ語句を書き出して、メモ帳をいろいろな方向に回転させることで考えていました。頭の中で文字を回転・鏡映するのに慣れていなくてもやりやすい方法だと思います。

初期のメモの一部。「評価」の原案などが見える

だんだんと慣れていくと、やがてほとんどの工程を脳内で行えるようになってきて、こうなればいつでもネタ出しができます。
ずっとこの方法を用いていると、普通にしていて引き出しを開けられる自分の語彙がほとんど出尽くしてしまうため、ときどき「熟語だけで考えていたが、間に仮名が入る単語も検討してみる」「単語だけでなくフレーズにも着目してみる」など方法を変えてみたり、ちょうどいい深さの語彙を探ってみたりするといいかもしれません。


4. 目・耳に入った語句から考える

「3. ひたすら語句を思い浮かべる」方法と似ていますが、語彙に限りがないのが強みです。思い浮かべるうえでの連想の始点をここに求めるのも有用です。
Twitterのツイート、テレビや動画のテロップ、曲の歌詞、商品のパッケージ、書籍や新聞など、日常生活は文字に溢れています。ある程度慣れてくると意識せずともそれらからアンビグラマビリティの高い語句を自然と見出してしまうもので、この記事も無意識にアンビグラマビリティのフィルターを通しながら読んでいる方が多々いるかもしれません。
私の場合クイズのために、Twitterでクイズや単語をツイートするbotをいくつもフォローしており、それらから着想を得ることも多いです。他にも「漢字1文字bot」「青空の抜粋室」などのbotがオススメです。


5. 探す

辞典・字典や書籍、ウェブサイトなどを、題材探しを目的に開いて観察する方法です。
いかにも「題材」っぽいおしゃれだったりかっこよかったりする語句を探したい場合は、そのまま「おしゃれな言葉」「かっこいい言葉」と検索してみるほか、個人的には季語から探してみる方法もオススメです。
ランダムに語句が表示されるサイトだと「ランダム単語ガチャ」「Word Cascade」などが有名でしょうか。英単語だと「Random Word Generator」などのサイトもあります。
他にも「Wikipedia」「Wiktionary」「Weblio辞書」「Weblio類語辞典」(Weblioはスマホから連続でランダム表示するにはデスクトップ版サイトで閲覧する必要あり)などのサイトは項目をランダム表示する機能があります。後述の理由でWeblio類語辞典がオススメです。
通常の国語辞典やWikipediaなどのサイトの難点は、知りもしない(題材にしにくい)語句が大部分であることや、各項目に対して説明が付されていて、語句だけが並んでいるより題材を探しにくいことにあります。これらを解決するのに個人的にオススメなのが漢字学習用の教材で、学校で配布される/購入する入試頻出漢字の単語集などは、出題価値のある一般的な語彙がずらっと並んでいて、非常に題材探しに理想的です。また、同様に類語辞典も実用を想定した語彙が並び、題材を探しやすくオススメです。


6. 文字やパーツから考える

特定の文字やパーツ、それらの組を軸に考える方法です。
「おンビグラム」や「残ビグラム」のように特定の文字の流行に乗るときや月刊『アンビグラム』で漢字1文字のお題が出たときなど、後述する熟語検索なども便利ですが、その特定の文字をさまざまな方向からじっくり観察して他の文字に見えてこないかと考えることもあります。

「お」をさまざまなパターンで図地反転させ、さまざまな方向から観察している様子。赤く囲った図形が「空」に見えたところから「お空」を制作した。

たとえば「魔」という文字を点対称に描けることを知ったとき、「魔」が中心に来る語句を考えたり探したりして「黑魔術」で制作するような方法をとることも多いです。
もちろん自分の語彙力で考える方法もありますが、役立つツールが多くあります。「漢字書き順辞典」「熟語一覧 - 人名漢字辞典」「漢字ペディア」などの漢字から熟語・語句を検索できるサイトや、「伏字検索○○○」「ナンクロかな/漢字単語検索」「ナンクロ単語検索」などの漢字でブランクワード検索できるサイトが便利です。
他にも「掛」/「無」が90°回転の関係にあることに気づいて「掛け値無し」で制作する場合や、「忘」/「変」が180°回転の関係にあることに気づいて「忘却/変色」で制作するような場合のように、文字の組から考えることもあります。
このように文字や文字の組を単語や単語の組に昇華できなかったときなどには、「文字列生成型」と呼ばれる技法で制作することもあります。文字列生成型とは、既存の語句で制作するのではなく、アンビグラマビリティが高くなるように文字を組み合わせていって自分で文字列を考えていく技法のことです。オルドビス紀さんが名手として多数の作品を制作されています。

パーツから考える場合もあり、たとえば拙作「眉唾」は、点対称である「口」が真ん中に来るように、口偏の漢字が2文字目に来る熟語を探して制作しました。
このようなときにパーツから漢字を探すには、「漢字辞典オンライン」「Jigen.net」「Kanji Kensaku」などのサイトを用いることができます。
また、「艹」/「扌」から「荷担」「薬指」「花押」などを探すように、パーツの組(あるいはパーツと文字の組)から語句を探すには「ことばさがし」というLINEのbotがとても便利です。


7. 型・技法から考える

型や技法を先に決めて、それに合う語句を探す方法です。この方法だと、無意識下にフィルターを通すだけではなかなか気づけないような難しい型や技法でのアンビグラマビリティにも気づくことができるのが強みです。
たとえばアンビグラム情報局の毎週お題に選んだ「千人力」は、回転重畳型のお題を出したいと考え、回転重畳型ビリティの高い文字を探して「人」という文字を見つけました。「人」という文字を含む語句を探す作業は先述の「6. 文字やパーツから考える」のとおりです。
このように型や技法から文字を探す場合、使用頻度の高い漢字教育漢字から探すと、その文字を含む語句が多く、文字から語句を探す工程で困りません。
また、文字ではなく語句の構造などで探すこともあります。たとえば拙作「特殊相対性理論」はこの配置にするために七字熟語から、「ヤンソンの誘惑」はカナと漢字の密度・文字数の構造から語句を探してきています。

文字の見た目ではなく語句の意味につなげることもあり、たとえば72°回転型という型から連想して「五放射相称」や五弁花を咲かせる「葵」などで制作した例などがあります。


たいていは以上のような方法で考えています。細かく分けて説明しましたが、つまるところ四六時中アンビグラムのことを考えていれば何かしらのきっかけから思いつくということかもしれません。
みなさんが素敵な作品を思いつく一助になれば幸いです。


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