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ミュージカル『この世界の片隅に』観劇_東京千秋楽

ミュージカル『この世界の片隅に』
5月30日(木)の東京千秋楽を拝見してきました。
(という下書きがイマイチまとまらぬまま一ヶ月半……言葉足らずな部分も校正不足も多々ありますが、何とか体裁を整えてUPすることにしました)

初日観劇後、中日にも1公演拝見。(Wキャスト陣は初日と同じメンバーでした)
別キャストさんたちを拝見するのは千秋楽が初でした。
どちらのキャストさんもそれぞれ素晴らしかったのですが、その違いを楽しむのもWキャストの醍醐味かなというわけで、各々感じたことを色々と。

2人のすず

初見時は昆さんのすず。周作の「すずさんは、こまいのう」という台詞の通り、本当に「こまい」感じ。
大丈夫かな?大丈夫かな?と(勿論ご本人がでなく、そこに生きる「すず」を)心配になってしまうくらいのホワホワ具合。
でも、真の強さが見えるシーンもありました。

大原さんのすずは、こちらはこちらでやはり「こまい」。なかなかうまく表現する言葉が見つかりませんが、似ているのに、似ていない。2人のすず。どちらのすずも印象的で、Wキャストを拝見する醍醐味だな〜と思いました。

2人のリン

すずの「ここは竜宮城かね?!」なんて台詞もありますが、
何となく、竜宮城にいそうなのは平野綾さんのリン、現実世界にいそうなのは桜井玲香さんのリン。
平野リンの方が、より浮世離れしていて妖艶な雰囲気、桜井リンはより人間らしさがあって親しみやすい雰囲気を感じました。
個人的には、ちょっとミステリアスな雰囲気も感じられる平野リンの方が好きです。

周作と水原

初日(&拝見した中日):海宝直人&小野塚勇人
千秋楽:村井良大&小林 唯
という組み合わせだったので、この2組での比較。

すずへ対する想いの違い
海宝さん小野塚さんは、内に秘めた「好き」
村井さん小林さんは、より表に出ている「好き」
と、個人的に感じました。
ちゃぶ台を囲んだシーンも、納屋でのシーンも、水原が帰った後のすずと周作のシーンも……水原が入湯上陸で北条家に立ち寄るシーンで受ける印象が、キャスト毎にかなり違って、その違いが面白かったです。

海宝さん&小野塚さんの方が、より(私がイメージする)昭和の男感があるような?
村井さん&小林さんは、本気で嫉妬してヤキモチを妬いている風に見えて、2人のもどかしさなどが感じられ、また違った良さがありました。

[黒村径子]の存在感

音月さんが演じる黒村径子。
終盤のナンバー『自由の色』の素晴らしさは初日の感想でも述べた通りなのですが、要所要所のお芝居が本当に細かい!!
すずの嫁入りのシーンでは、舞台端の方にいらっしゃる際でも滲み出る嫌味な小姑感!
建物疎開にあって、離縁して北条家へ来るシーン。一見未練もなく潔くみえる台詞を吐きながら、隣組の方々からの好奇の目を受けてサッと表情が曇る。
玉音放送を聞き、終わった終わった!とあっさり立ち上がったように見えて、晴美を想って悲痛な面持ちになる。
ここには書ききれないほど、台詞がないシーンのお芝居も本当に素晴らしくて、ずっと目で追ってしまいたくなる存在でした。
十数年リスペクトしている、大好きな役者さんです。

【何もかんも、知らんうちに変わっていきよる】

海軍病院に入院したすずの義父。ここへ居ったらいろんな事がわかると、「大和の沈没」を聞かされた後の、すずの台詞。
知らされていないだけで、隠されているだけで、実は着々と世界は動いていて、気付いた時には世界は変わっているかもしれない。
どこか現代社会にも繋がるような気がして、背筋に冷たいものが走りました。

「分かりやすい」舞台とは

今回の作品、「初見ではストーリーが追いにくい」「時系列が分からなかった」というような感想をSNS等でチラホラ見かけました。

完全初見でも全体を通して楽しめましたし、
寧ろ、年月の明言や用語の説明などもあり丁寧な印象を受け思いましたが、人によって感じ方はそれぞれなのだなぁと。
SNSなどで他の方の感想を気軽に知ることができるのは、現代の面白いところですね。
(あ、でも、「水原を見たら逃げろ!」と、「お兄さんを見たら逃げろ!」は、観劇後原作を読むまで何のことやら分からなかった)

分かりやすい(というより説明過剰な?)舞台が必ずしも正義ではないような気がするけれど……(ストプレとミュージカルではまた少し観客の意見も違うのかも?)
(そう思うと、そもそも世間でいう「分かりやすい」舞台ってなんだろうな。と、色々考えあぐねる日々です。)

人生、日々勉強

今回の作品で初めて知ったことも色々とありました。
まずは『建物疎開』。
歴史の授業でも習った記憶はなく、私の故郷は疎開先になるような所謂田舎エリア。地元でも聞いたことがなく、この歳まで知らずにおりまして……学童疎開などは勿論知っていましたが、家の取り壊しなどもあったのですね。

それから『隣組』の歌!
すっかり「ドリフ大爆笑」発祥の歌だと思っていて……(ドリフさえリアルタイム世代ではない)
原作を読まずに初日を拝見したため、(何でここでドリフの曲の替え歌??)と思ってしまいました。

「靖国へいく」「英霊」の表現等々もそうですが、
全く知らなかったもの、何となく言葉の響きだけ知っていたものなど、今回の作品を観劇し、知らなければならない歴史がまだまだたくさんあるなと。
新たな作品に出会うと、本当に色々と勉強になります。様々な知見を深められるところも、観劇の良いところですね。

笑える、平和

すずの兄の戦死の知らせが届き、遺骨になってかえってくる場面。中を確認しようとしたら出てきたのは不格好な石。ツルツルのに取り替えよう!と一笑い起こるシーン。

実際にあの世界にいたら、安否を心配していた親族があんな形でかえってきたら、果たしてあんな風に笑えるのだろうか。そう思うと、私にとってはどうしても笑えないシーンです。
(演者さんたちのお芝居としてもコミカルなシーンとして仕上げているので、ここで観客含め笑うことがいけない、というわけではないと思う)

あのシーンを、笑って観られる空間がある。この平和を、噛み締めたいなと思います。


【原作】 #こうの史代 #この世界の片隅に
【音楽】 #アンジェラアキ
【脚本・演出】 #上田一豪
浦野すず: #昆夏美 #大原櫻子
北條周作: #海宝直人 #村井良大
白木リン: #平野綾 #桜井玲香
水原哲: #小野塚勇人 #小林唯
浦野すみ: #小向なる
黒村径子: #音月桂
#日生劇場 #ミュージカル #観劇 #観劇記録


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