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「遊」について

荘子

荘子を知っているだろうか。
中国の思想家荘周が書いたものとされ、
「老荘思想」と呼ばれて「老子」と並んで評される思想である。

この「荘子」は、今だからこそ通用するような思想だと思う。
昨日の星の王子さまにも繋がるところがある。

受け身こそ最強の主体性

荘子には、このような考え方がある。
「主体性」という言葉を聞くと、
自分から何か動いて影響を及ぼすようなイメージを持つ。

でもそうではなく、
「変化を受け容れる」というイメージこそが主体性である。
そう説いた。

意味がわからないかもしれない。
でも、考えてみて欲しい。

例えば、今このコロナ渦中において、
コロナというものに全く影響を受けずに行動している者はいるだろうか。

「コロナなんて気にしていない」ではなく、
「生活に置いて全く影響を受けていない」という人はいないと思う。

そのように、人間は必ず周りの環境に左右される。
周りに何も左右されない自由意志のようなものは、存在しない。
これは科学でも証明されているそうだ。

そんな、周りの影響に抗えない人間が主体的に生きるためには、
むしろ環境に抗うのではなく、それを受け容れることだと説くのだ。

目標を持たない

先の思想を突き詰めて行くと、
過去も未来も関係なく、現在を生きるということに繋がる。

ある意味で、過去や未来というのは、
それらを思い出したり、推測することで、
現在に抗っているということだと思う。

現在を良くしようとする行為自体が、
既に現在を否定し、現在を受け容れられてないのではないか。

目標を立てるのも同じである。
目標を立てるという行為は、逆算する考え方であって、
未来から現在を見る形になる。

そうではなく、今を受け容れて生きる。
それはすごく強い生き方でもある。


音楽で言えば、クラシックでもジャズでもいいが、
一緒に合奏する、セッションする時に、
他の人と、五感を交わしながら演奏するはずである。

目で見たり、音を聞いたり、一緒のビート感を共有したり、
それを、その瞬間瞬間で集中して行わなければ、
アンサンブルは難しい。

勿論どんな展開で音楽を繰り広げていくかということは
考えつつも、そのことばかり考えて、
今に集中しなければ、アンサンブルの崩壊を起こす。

武道の例えが秀逸だと思ったが、
柔道でも「相手の動きに対してその瞬間に反応する」
これはとても強いし、
逆に他のことばかり考えれば足元をすくわれる。

「遊」

荘子には「遊」という概念が存在する。
詳しく説明するのはここでは避ける。
また別の機会に書こうと思う。
簡単に言えば「時間と空間に縛られない世界」を指している。

「遊」という感じが指す通り「遊ぼう」という思想が込められている。
その中の一つの概念 「無用の用」
役に立たないと思うものこそが、大きな価値があるという考え方である。

荘子の話の中には、
匠石(大工の棟梁)と弟子の話が語られる。

ご神木である、巨大な木があった。
弟子は感動してそれを見つめ、その木を見にくる人も多かった。
しかし匠石はそこを黙って通りすぎていった。
弟子がその無関心さの理由を尋ねると、
「あれは役立たずの木だ。船を造れば沈むし、棺桶を作れば腐る。
役立たずだからこそ、こんなに長く生きているんだ。」と言った。

しかし、荘子ではこれを木の目線で責め立てる。
「俺を何と比べてるんだい?
きれいな建材になるような木は、
小枝を引きちぎられ、むしろ自分を苦しめている。
進んで世俗に打ちのめされている。

もし俺が役に立つような木だったら、
こんなに大きくならなかっただろう。
無用であることが、有用になったんだよ。」と。

星の王子さまと荘子

昨日の星の王子さまと繋げてみよう。

大人は、すぐに目に見えるものを追う。
「金」「地位」「名誉」
それに繋がるようなもの、それに「役立つ」ようなものを求める。

だからこそ、「無用の用」には気づかないし、
遊ぶことを忘れている。

こどもは、
こころで自分が感じ取った価値を見つけ、遊ぶ。

まさに荘子とは、そんな「こども」的存在であるように思う。

ホリエモン

なぜここで急にホリエモンが出てくるのか。
それは、同じような思想なのではないかと勝手に思っているからである。

ホリエモンこと堀江貴文氏は、
10年後の職業図鑑という本を落合陽一氏と共著で出しておきながら、
「未来を予測することに価値はない」
と言っている。

また、
「目標なんて持ったことがないし、
自分が楽しいと思ったことをやっている」とも語っている。

そして、
「稼げるような仕事を探すんじゃなくて、
自分がやりたいことをやればいいじゃん」
という言葉も良く飛び出す。

まさにホリエモン自身がそれを体現しており、
こどものような生き方をしていると思っている。

今だからこその思想

このような「遊」の思想は、
今だからこそ大事だと思う。

勿論仕事において、目標を立てないなどは当てはまらないかもしれない。

だが、自分の生き方として、
どんな困難が襲来しても、それに常に反応できる強さ、
そして今を遊べる心こそが、
これからの時代を生き抜く秘訣なのではないかと思っている。

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