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人と自然と料理に会いにいく。e-bike×オーベルジュツアー対談|牛山×番場×寺澤

2022年秋、蓼科高原の自然を体感できるe-bikeでのサイクリングと「オーベルジュテラ」のランチを組み合わせたモニターツアーが開催された。仕掛け人である3名が、ツアー造成の経緯や意図、今後の展望などを語った。

<メンバー紹介>
牛山 貴広競輪選手、「T's Stellar」代表
番場 琢レーシングドライバー、「T's Stellar」設立時代表、「バンツォ」代表
寺澤 宣法オーベルジュテラ」オーナー


出会ってすぐに声をかけようと思った

−みなさん経歴が多彩なので、まずは簡単に自己紹介からお願いします。

牛山:元スピードスケート選手で、今は競輪選手です。僕が育った長野の原村には、小学校の校庭に水を張ってスケートリンクを作るという文化があるので、3歳から朝・昼・晩スケートをやっていました。24歳でトリノオリンピックに出場した後、競輪に転向して、2018年に地元に戻ってきました。今は大体、月の半分くらいは競輪場に行って、残りは原村にいます。

番場:僕は生まれも育ちも東京で、レーシングドライバーとして色々なチームに所属しながら、25歳からはずっと横浜に住んでいました。超都会人です。親が亡くなって原村の家を相続したので、2020年のゴールデンウィーク明けに移住して、今は原村に2割、残りの8割は日本中のサーキットにいます。

−八ヶ岳エリアで観光業を行う「T's Stellar(ティーズステラー)」をお二人で立ち上げたそうですが、経緯は?

番場:レーサーとして講演などの仕事も増えてきて、若手の育成にも力を入れ始めた中で、地域の子どもたちのために色々な活動をしている競輪選手がいると友だちづてに聞いたんです。それが貴広(牛山)で、一度会ってみたいって話はしていたんですけど、実際会ったらすぐに意気投合しました。一緒に会社をやろうと貴広の方から声をかけてくれて、昨年「T's Stellar」を立ち上げました。

牛山:会って1秒で声をかけようと決めました(笑)。構想から立ち上げまでのスピード感はかなり早かったですね。
僕も番場さんも、親の片方を早くに亡くしているので、「人生いつまでもチャレンジしたいことをひっぱって、やらないでいるわけにはいかない」っていう意識がお互いにあったんじゃないかなと思います。

番場:あと、今までレーサーとして一人でやることが多かったので、「一緒にやろうよ」って言われた経験があんまりなかったんですよね。正直、めっちゃ嬉しかったんですよ。自転車のことは全く知らないし、ビジネスがどうこうっていうよりも、声をかけてくれたことが嬉しくて、全力でやりたいと思いました。内容とか聞かずに、もう「やろう」って感じでしたね。

−社名の由来は?

番場:「T‘s」は僕らの名前の「貴広」と「琢」の頭文字で、「Stellar」は星と星をつなぐ間のことを意味しています。考案者は貴広で、「地域の色んな星と星を僕たちがつないでいこうよ」ってオシャレなことを言ってくれました(笑)。

−お二人に共通する「T」からだったとは、素敵ですね!では寺澤さん、最後に自己紹介をお願いします。

寺澤:レーサーになりたかった男、寺澤です。レーサーって稼ぐのが大変なので、スポンサーになろうかなと思っていたんですけど、うちの奥さんが料理人だったので、一緒に「オーベルジュテラ」という宿をやって、気づいたら宿屋になっていたみたいな感じです。

−どこまで本当かわかりませんが…(笑)。

番場:ちなみにテラさん(寺澤)は今、僕のスポンサーをやってくれているので、夢は1個叶っていますよ。

寺澤:そうだね。来年も頑張ります!

ありきたりのルートではつまらない

−今回のモニターツアーの概要を改めて教えてください。

牛山:「オーベルジュテラ」からスタートし、横谷峡を徒歩とe-bikeで巡るツアーです。地域の歴史や文化などの豆知識的なガイドも加えながら、ゆっくり自然を楽しんだ後、「オーベルジュテラ」に戻って庭でランチを食べるというものでした。番場さんは当日だけ参加できなかったので、8Peaksのメンバーである齋藤由馬くんがガイドのサポートに入ってくれました。

齋藤がサポートガイドとして参加したほか、他の8Peaks familyメンバーもツアーを楽しんだ

−ツアー造成のきっかけは?

番場:八ヶ岳エリアに連泊する中で、宿の周辺以外でも地域を楽しめるイベントがほしいっていう話が出たんだよね。

寺澤:そうそう。宿は同じでなくても、例えば「池の平ホテル」で1泊、うちでもう1泊というような転泊の場合にも、その間をつなぐようなツアーがあるといいよねと。ありがたいことに、うちには年に数回泊まりに来てくださるお客さまも多いので、そういった方にも新鮮味を感じていただけるようなアクティビティを提案したいなと思いました。

番場:その第1弾ということで、今回は「オーベルジュテラ」に宿泊されているお客さま向けのツアーを企画しました。最初は全部歩く予定だったけど、それだけじゃつまんないよねって話になり、e-bikeも絡めることにしました。

−巡るルートはどのように決められたのでしょうか?

 番場:貴広と一緒に色々なルートを探ったんですけど、“自分たちが楽しいと思うルート”っていうのが大前提だったので、最初はアスファルトだったのに、だんだん砂利道になっていったんだよね(笑)。

ツアーを率いる牛山

牛山:そうだっけ(笑)?番場さんが言うように、楽しいものを提供したいっていう気持ちが強いから、瞬時にコロコロ変わるんですよ。

番場:1個のルートを造成するだけでも、すごい時間がかかるんです。スタート地点とゴール地点が決まると、まずグーグルマップでその間の道を探って、ツアーの時間に応じて距離を設定して、このルートはどうだろうっていうのを、車で走ってみるんですね。だけど、ここは交通量が多いとか、道が険しいとか、全然面白くないとか、実際に見ると色々問題が出てくるんですよ。
今回も探しに探したんですけど、「横谷峡遊歩道って自転車で下れるんじゃない?」って話になって。テラさんの知り合いに横谷峡に詳しい人がいたので、歩いて何分くらいかかるか聞いて、「じゃあそこ半分歩きで半分e-bikeにしたら面白いんじゃない?」みたいな。

−本当に、その場その場で決めていく感じなんですね。

牛山:そうですね。他にも色々検討したんですけど、モニターツアーってなると、私有地やペンション区、財産区は入れないので、そういったところを避けていって、最終的に今回のルートになりました。ツアー開催前には、寺さんも一緒に試走しましたよ。

番場:あれは面白かったね(笑)。僕らの乗っているのがマウンテンバイクだったので、歩きの方の道も「そのまま行けるんじゃない?」って話になっちゃいまして、階段とかもあるのに、マウンテンバイクで下ったんですよ。ビビりまくりながら、こけそうになりながらも(笑)。ほら、僕と貴広はありきたりじゃつまらないって気持ちが強いじゃないですか。テラさんだけ唯一めっちゃ反対したけど、無理やり連れて行ったっていう。

寺澤:(笑)。

“もっとよくしたい”が合言葉

−そんな寺澤さんはランチ担当でしたが、どんなところにこだわりましたか?

寺澤:最初は展望台でランチを食べる予定で、サンドイッチとか手軽に食べられるものを用意していたんですけど、紅葉シーズンで当日は人の量が半端なくて。ここでテーブルなんて出したら顰蹙(ひんしゅく)を買うだろうなと思って、急遽うちの庭で提供することになりました。アウトドア用のテーブルと椅子しかなかったので、テーブルクロスを敷いて花を置いて、そんな風にしっかり着席するんだったら、料理も少しコース仕立てにした方が体験価値も上がるなと思って、旬のマスカットのデザートを即興でお出ししました。

オーベルジュの庭でランチをふるまう寺澤

 −その他メニューのこだわりは?

 寺澤:せっかく八ヶ岳エリアまで来ていただいているので、ここでしか食べられないものを出したいとは常に思っていて、地元の食材を中心に、「たてしな自由農園」の野菜や「レストランピーター」のベーコンなど、8Peaksのメンバーの食材も使ってサンドイッチを作りました。これがきっかけで地域のお土産屋さんやEC サイトでもお買い物をしてもらえるようになったらいいなという思いもあります。

地元食材にこだわったサンドイッチ

寺澤:あと山の中なので、ちょっとしたアウトドア感も楽しんでほしいと思って、スープも保温タンブラーで提供しました。みなさんに喜んでいただけて、結果的には庭でやってよかったなと思いました。 

番場:僕らガイドチームもそうだし、テラさんもそうなんですけど、“もっとよくしたい”みたいなマインドが根底にある気がするんですよね。言われたことをやるとか、とりあえずこなすんじゃなくて、もっとよくしようって全員が思っているので、その都度進化していっちゃうみたいな。柔軟な人じゃないと混乱するかも。あれ?さっきと違くない?みたいな。

寺澤:今回に関しては、僕の急な提案にうちの奥さんが快く協力してくれたので、奥さんを褒めてあげてください。

中之島ランチ×カヌーツアーの時にも、ランチのディレクションを担当された岩井穂純さんの奥さまが、料理人として大活躍してくださいました。 

番場:みんな奥さんがすごすぎるだけなんじゃない?

寺澤:旦那は自由人が多いよね(笑)。 

牛山:やりたいことしかしていない。

寺澤:そうそうそう(笑)。あと、負けず嫌いなんじゃないですかね。せっかく来てくれたからには、絶対感動させたいっていうのは、8Peaksのメンバーは全員共通していると思います。これでいいか、みたいな人は一人もいない。

庭でのランチの様子

−ガイドチームのお二人は、事前にランチの試食はされたんですか?

寺澤:朝、二人で来てくれた時かなんかにサンドイッチを出しましたよね?確か。

牛山:食べた、食べた。

番場:あ、あれがそうだったんだ!って、あんまり記憶にないけど(笑)。ただね、いつ食べてもテラさんのところのご飯はめっちゃうまい。 

寺澤:ありがとうございます。

番場:奥さんがね。 

寺澤:そうだね(笑)。僕は運んでいるだけだから。

牛山:いやいや(笑)。食事の時間を最大限楽しんでもらいたいっていう、テラさんの粋な計らいで、さらに美味しく感じるんだよ。

“隠れ素敵人間”をつないでいきたい

−今回のツアーで見えた課題はありますか?

番場:まずガイドチームは「安全性」ですね。終了後、「車通りが多くて怖かった」という意見をいただいて、さっきテラさんも言っていたように、試走の段階では紅葉シーズンじゃなかったので、ここまで車の量が増えるとは予測できなかったんですよね。
僕らもまだルート造成を始めたばかりで、ガイドとしても勉強中の身なので、今回のフィードバックを一つの学びとして活かしていきたいと思います。

牛山:やっぱり、それだけで楽しさがすっ飛んじゃうんですよね。「車、怖かったな〜」っていう思い出だけが残っちゃう。なので、安全な道しか走らないように今後徹底していきます。

番場:せっかく貴広が自転車業界にいて、僕が車業界にいるので、単にツアーを企画・運営するだけではなくて、例えば交通事故防止に関わる活動だったり、僕ららしい地域貢献もできたらいいなと思っています。
あと野望としては、テラさんみたいな素敵な人が、八ヶ岳エリアにはもっとたくさんいると思うんですよ。そういう“隠れ素敵人間”とのご縁をもっと増やして、「T's Stellar」としてつないでいけたらいいですね。。

牛山:海外とかに旅行に行った時でも、いい場所だったり風景っていうのはもちろん覚えているんですけど、結局はその場所にいる“人”が一番印象に残ると思うんですよね。

寺澤:わかる~。

牛山:「オーベルジュテラ」にいらっしゃるお客さまも、宿や料理はもちろんなんですけど、テラさんや奥さんに会いたいから来るっていう人が結構多いんじゃないかなと思うんです。
自転車で走ることってすごく楽しいんですけど、それだけじゃなくて、ポイントポイントで出くわす人、別に特別な人でなくても、農家のおばあちゃんとか、そういう人たちとの出会いを提供することも、僕たちの役目なのかなと思っています。

番場:今回のツアーでも、テラさんがすごく愛想が悪かったら、せっかくの奥さんの料理も美味しさ半減していたと思う。

寺澤:(笑)。競輪でナンバーワンになった人と、レーサーでナンバーワンになった人が、一緒に自転車でガイドしてくれるなんて、なかなかないじゃないですか。僕からしたら、もうこの段階でお客さまは絶対に面白いんですよね。だから、来て面白いのは当たり前なので、どう集客していくかってことを、8Peaksのメンバーとして考えていかなきゃいけないなと思っています。 

番場:ご覧の通り、牛山隊長はこうドシッとしていてですね、誰もが憧れるようなとてつもない懐の深さがありまして、僕はネズミのようにすばしっこく、ひたすらレスポンスの速度だけで生きているような人間なので、面白い化学反応が生まれるんじゃないかなと思っています。これから日本中をびっくりさせる二人になりますので、ご期待ください。以上です!

一同:(笑)。

写真:五味貴志


参考動画

八ヶ岳 e-bike

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