編集者が”編集”以外で活躍するようになった背景を考える〜Part2. BtoBビジネス

こんにちは、なんばです。

毎年楽しみにしているクラフトフェアが、2年連続で中止になってしまって、しばらく何を楽しみに過ごせばいいか途方に暮れている今日このごろです…。

さて、前回は編集者がBtoCビジネスで活躍している背景について書いてみましたが、今回はそのBtoB編です。

早速問題です。以下の画像は何の雑誌でしょうか?

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森山未來さんが特集されてますね。表紙もすごくおしゃれです。


正解は…

「KARTE」というWEB接客ツールを提供しているPLAIDさんが季刊で発行しているオウンドメディアでした。

続いて問題です。ちょっとマニアックジャンルですが、飲食店経営者向けのWEBメディアを抜粋してみました。これらの共通点はなんでしょうか。

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ひとえに飲食店経営者向けと言っても、中身のコンテンツをみるとすごーく細かくジャンルがわかれています。


正解は…

すべて、飲食店向けにBtoBビジネスを展開している企業のオウンドメディアでした。メディア運営者が展開しているビジネスはこんな感じです。

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オーダーシステムや売上管理などのIT関連のツールを提供しているところもあれば、飲食店向けの機材や備品のECサイトなどもオウンドメディアを運営しているんですね〜。


最近、みなさんも仕事で調べ物をしているときに、たまたま見つけた資料をDLしたり、ウェビナーを視聴したことはありませんか?

そしてそのときに会員登録を求められて、登録するとメールマガジンがずっと届くようになったり、中には電話がかかってくることもあったかもしれません。

なぜ、そんなことが起きているのか。それは、BtoBビジネスの営業活動に、オウンドメディアの活用が広がってきているから、です。

その背景には、対面営業ができなくなったことによる「インサイドセールス」の強化があります。

今までも企業は、新規顧客を獲得するために、リード(見込み顧客)を集めることを行ってきていました。イベントに出店したり、専門メディアに頼って集めることが多かったのですが、イベントはコロナでできなくなり、またリードを獲得してもその後対面営業ができないことで、成約までの効率が下がっていきました。

そこで取り入れられたのがオウンドメディアを活用したインサイドセールスです。リードが求めていそうな情報をコンテンツ化することで、自然検索でサイト来訪してもらいます。そして役に立つコンテンツを渡す代わりに個人情報をもらい、MAツールなどで情報を管理。メール配信を通じて継続的にサイトに来てもらうようにし、そのリードが接触するコンテンツを追いながら、検討段階が進んだところで営業が電話をかけてアプローチする、みたいな手法です。

「でもそれって、ひたすらSEO対策用の記事作って、オウンドメディアの集客すればいいんじゃないの?編集者いらないじゃん」と思われるような気がしましたので、今どのようなオウンドメディアの使われ方があるのかにも触れながら、背景を考えていきたいと思います。

Point1.リードを「集める」だけでなく「育てる」

企業と人の信頼関係は、一朝一夕でできるものではないですよね。ましてやWEB検索でたまたま見つけた記事を読んだだけでは、その記事が何のメディアの記事なのか、その記事を出しているのはどういう会社なのか意識することはないと思います。

そこで企業は、オウンドメディアにSEO記事をたくさんアップして集約するだけではなく、集めた顧客に会員登録してもらうことで顧客のメールアドレスを入手。顧客に役に立ちそうな情報を、メールマガジンを通じて継続的に配信することで、オウンドメディアに何度も来訪してもらい関係を築いていきます。

オウンドメディアで提供する情報は、業界ニュース記事のこともあれば、成功企業の担当者が語るウェビナーやホワイトペーパーなどの資料・イベント開催などもあり、発信する内容と形式の充実が求められます。メディアとしてどういう顧客体験を提供するのか、記事を読んだりウェビナーに参加した顧客にどういう読後感や学びを感じてもらいたいのかを戦略立てて設計して、コンテンツラインナップを考えることも必要です。またそもそも顧客にメールマガジンを通じてサイトに来訪してもらうためには、それぞれのコンテンツが魅力的でなければなりません。成功企業の担当者や業界内で影響力がある人などをキャスティングして、寄稿してもらったりウェビナーやイベントに登壇してもらうことも、魅力的なコンテンツづくりを左右するので、人脈も求められます。

そこで、BtoB企業の中では専任の編集者をつけてオウンドメディアを運営するところが増えてきました。SEOの仕組みが理解できる必要があるので、WEBメディア経験があり、かつメディアコンテンツの全体戦略が考えられるスキルが求められ、記事制作からウェビナー・イベントなどのディレクションやクオリティコントロールをしなければならないので、ハードルはなかなか高い印象です。。

しかも、オウンドメディアでは顧客に役に立つ情報だけ発信し続けて、信頼関係を築くだけでは駄目なんです。コンテンツに触れてもらう中で、自社サービスの検討をしてもらい、営業活動につなげていかなければなりません。

そこでメディアの情報の中には、自社が提供するサービスの必要性や、導入して課題解決した企業の事例などを混ぜ込んでいくことで、潜在的なニーズがある顧客のホット度を高めていき、リード育成をしていきます。そのために、「コンテンツペルソナ=メディア読者として想定する顧客像」を設定して、その顧客がサービス検討するにあたりどのような情報収集行動をするのかを具体的に想定しながら、カスタマージャーニーマップに落としていく必要があります。そしてその行動に合わせてコンテンツのラインナップを用意して、どういう検討フェーズの人にはどういう手段でコンテンツを届けるのがよいのかをマーケティングをしていかなければなりません。そして個別の顧客ごとに、コンテンツの閲覧履歴をみてホット度が高そうか低そうかを判断して営業アプローチにつなげるため、アクセスデータと顧客管理DBとの連携も必要になります。

顧客にとって役に立つたくさんのコンテンツ群と、自社サービスの紹介コンテンツをオウンドメディアで掲載することで、顧客とコンテンツの”接点”を増やし、それぞれの顧客がいつどんなコンテンツをみたのかをMAツールやCRMツールで会員IDごとにデータ管理。ホット度が高そうな人には、適切なタイミングで個別に情報を届けたり営業アプローチしたりする。それが、インサイドセールスで活用されるオウンドメディアです。(ややこしくてすっかり説明が長くなってしまいました…)

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つまり、企業のオウンドメディアの編集者には、SEO知識とコンテンツ戦略の設計スキル、記事やウェビナーの制作のディレクションとクオリティコントロールに加えて、リード育成のためのコンテンツのマーケティング戦略を考える必要があるんです。「さすがにそんなスーパーマンはいないよ!」ということで、実践している企業では、編集者とマーケティング担当者で分業していたり、私が所属している会社のような支援会社と組んで、チーム体制を作って運営しているところが多いように思います。

取組みはすごーく大変ですが、オウンドメディアを通じて顧客獲得に成功して、事業拡大している中小ベンチャー企業も多く、これからの営業活動としてますます注目されていくのではないかなーと思っています。

Point2.カスタマーサクセスの手段として使う

NetflixやSpotifyのような、SaaS(=Software as a Service)型のサブスクリプションモデルのビジネスは、BtoB向けのITツールでも増えてきました。有名なのはkintoneとか会計freeeとかですが、このようなサービスを提供する企業にとって、収益を伸ばすための手段は以下になるかと思います。

契約者数(新規)を増やす

LTV(契約者ごとに利益を生み出す量=契約継続期間)を伸ばす

月額課金型のサブスクリプションモデルの場合、新規契約者を増やすことももちろん大事ですが、LTVも非常に重要です。そしてLTVを高めるためには、解約されないために顧客満足を維持、もしくは高め続けなければなりません。

顧客満足を高めるためには、サービス自体の改良で使いやすくし続ける必要もありますが、そもそもサービスを使い続けた結果、顧客企業のビジネスが成功する必要がありますよね。そのためには、ツールを導入してくれた顧客企業が、導入後どのようにサービスを利用しているのか、どのようなことに課題感を感じているのかをキャッチアップしなければなりません。機能面でのフィードバックであれば、使用状況などのデータからある程度推測もできるかと思いますが、実際に使っている担当者に直接聞けるのが一番良いですよね。

そこでオウンドメディアを活用すると、導入事例の取材として担当者にアポイントをとることができるので、どういう場面で使っているのか、何が重宝していて何を改善してほしいと思っているのか、リアルユーザーに直接ヒアリングすることができます。そこで集まった声を元に、サービスの改善を進めたり、新規顧客を取るためのマーケティング活動に活かしたり、様々な活用が考えられます。

また取材が記事化されると、取材を受ける顧客企業側では、ツールを積極的に取り入れている、デジタル化が進んでいる企業として対外的にPRすることができますし、オウンドメディア運用企業としては類似の課題を持っている新規顧客に対して自社サービスを検討してもらうための参考情報を提供することができるので、まさにメリットだらけです。

冒頭でご紹介した、KARTEさんの「XD」というオウンドメディアも、記事の合間に自社サービスの導入企業へ取材をされているので、このような目的もあるんではないかなーと思っています。


以上、BtoB向けビジネスにおけるオウンドメディアについて考えてきましたが、Point1の「リードを育てる」を目的に運用しているケースが大半で、Point2の「カスタマーサクセス」は、たくさんあるコンテンツの一部分で取組みしているところが多いように思います。

今までBtoB企業のオウンドメディアでは、広告に予算を投じ続けるのではなく、集客資産としてSEO記事をたくさんアップしてサイトパワーを高めたい!という目的で運用されていることが多かったように思いますが、最近はそこから一歩踏み込んで、メディアに来てくれた人をいかにもてなして、サービスを好きになってもらうかに目線が向いているような気がしています。


さて、前回から編集者が”編集”以外で活躍する例を、BtoCとBtoBで見てきましたが、それぞれ編集者に求められる役割やスキルも全く違うので、奥が深いな〜と感じます。また、編集者に求められることがただ制作物を作ることだけではなくなってきているので、自分自身が色々なことにトライしていかないと、引き出しが追いつかず…。毎日四苦八苦していますが、面白いことができたらいいなと思いながら頑張ってます。

↓よかったらBtoC編もごらんください↓


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