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サークル・オブ・ライフ_4 黒滝リゾートと心分布図概論

 黒滝村にも活気がある地区とそうでない地区はある。中でも特に人が集まっているのが長瀬区と寺戸区だ。長瀬はレジャー施設が整っていて、下を見るのも恐ろしく、しかも長い吊り橋やアスレチック、ホテル、道の駅、コテージ群に河原を使ったバーベキュー、なぜか川の隣にプール等、様々だ。主に屋外で遊びたい人向けと言える。因みにアマゴ養殖場もここにあり、見学もできる。一方の寺戸は村役場や小学校、森林組合や郵便局に公民館、消防団、医療機関等が立ち並んでおり、心臓部といった感が強い。医療機関から隣の堂原区へ少し進むと、全国で“負の遺産”呼ばわりされている公共事業、野外劇場と音楽ホールがポツンポツンと立っている。ほとんど使われる事なく風雨にさらされ続けること凡そ25年。物は立派なのにこのまま風化していくものだと思っていたが、改めて見てみると建物自体は立派な出来栄えなのだ、使わない手はないではないか。実はこの村には温泉もある。ただし源泉掛け流しではない。つまりどこに造ってもよいのだ。劇場とホールがあり近くに医療機関や公民館がある。おまけに消防車・救急車もある。実は給食センターもあるので食事も作れる。そこにもし温泉があれば……そう、温泉・医療・劇場が一体化した巨大なリゾート施設の出来上がりだ。私の脳裏にあるのは古代ギリシャから受け継がれた古代ローマ帝国が、かつて誇った温泉遊戯場である。ただ、それを再現しようということではなく、吉野の山村寒村である黒滝に、せっかく上質なエンターテインメントを提供できる素地が整っているのなら、これはやらない選択はないということなのだ。私の目には、ただ風が吹き抜けるだけの場所に巨大リゾート施設が浮かび上がっていて、村内外の人々が楽しそうに行き交う姿が視えていた。視えてはいたが、道は中々に険しいだろうということも見えている。それはラガードや心の貧困層からの力強いストップだ。

 ご存知の方もいると思うが、ラガードとは『イノベーター理論』で言うところの、最も変化を好まない層のことである。例えばFAXができた時、開発段階からワクワクしながら投資や試作体験、予約をしている層がイノベーター。世に出た瞬間に購入し電話に加え用紙のコピーをそのまま送信できるテクノロジーの恩恵にあずかるのがアーリーアダプター。その様子を見て羨ましくなったり安全だと安心し購入使用し始めるのがアーリーマジョリティ。かなり遅れて使い始めるのがレイトマジョリティ。ここまでくればFAXは世に浸透していると言える。そして最後に、用紙の送信にあくまでも郵送や手渡しにこだわり続け、FAXは結局使わないか、拒みながらも渋々使う、もしくは使わないのがラガードである。

 次に心の貧困層だが、これは『心分布図』に出てくる。人は千差万別、カテゴリーに分けるなんてとんでもないという意見もあるし半分は正しい。しかし“人”とは“ヒト”でありホモ・サピエンスのことを指しているのが一般的で、如何に一人一人個性が異なるとはいえ、さすがに大まかに分類することはできる。そして何より人は概ねカテゴリ分けが大好きだ。前置きはともかく……心分布図では、自らのやりたいことに集中し、ひたすらミッションのゴール目掛けて突き進む『キラキラ層』。そんなキラキラ層に憧れ羨み、自身もそうなりたいと願いながら、そうなれないことにもどかしさを感じている『キラキラ層に準ずる流動層』。持ち前の慈愛と共感力の高さで他人のことを想い、癒し、尽くす『心の富裕層』。そんな心の富裕層に憧れ羨み、自身もそうなりたいと願いながらもそうなれないことにもどかしさを感じている『心の富裕層に準ずる流動層』。ひたすら他人の足を引っ張り横槍を刺し水を差す『心の貧困層』。心の貧困層ほどではないものの予備軍と言える『心の貧困層に準ずる流動層』の6層に大別できるとされている。補足として、心の貧困層は確かに他人の足を引っ張るが、それは善人悪人問わずである。キラキラ層のアスリートや学者、俳優、政治家などの足も好んで引っ張るが、悪政を敷く独裁者や悪性のサイコパスな経営者等の足も見事に引っ張ってくれる。彼らは最早本能で行っているので、おそらく淘汰されずに一定数生まれ続けていると考えられる。

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