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くろたん1号

 黒滝の面積は約48㎢、森林面積は約45㎢、つまりほぼ森林で占められている。必然的に林業に携わる人が多く、営みが木と共にある。村民は数百年に亘り、杉や桧の植樹を進めてきた。先人の努力の甲斐あって、森林の9割が人工林となっている。だが、かつてしっかりと整備されていた木々は平成以降廃れる一方で、持ち主はいるけれども放棄状態の木が大量に林立している。これは国内全域で起こっている現状だ。

 そこで、そうした山に携わる者の頭痛の種に処方箋が与えたい。黒滝森林組合に吉野郡でもいち早く————珍しく!————目をつけ導入していただきたいものがある。それはキューブタイプの小型人工衛星である。さしずめ、名を『くろたん1号』としておこう。黒滝村専用人工衛星で森林組合内に管理所を併設できる。これにより村にある木々の情報が全て可視化できる。これまで一本一本現地で確認していたが、今ではくろたん1号室で一括管理というわけだ。木の成長・健康状態、それを取り巻く山の状態に至るまで一目瞭然である。これは林業従事者にとって間違いなく革新と呼べる技術であり、壮年の職員たちのテクノロジーリテラシー向上への頑張りが試されてもいるが、これについては東京や大阪といった都会からの受入人材である地域おこし協力隊の若者が汗を流してくれるはず。現時点では、山林状態を随時確認しつつ、くろたん1号をドローンと接続し詳細を確認。問題があれば現地に赴き解決する手法がとれる。今後は現地に行かずともロボット派遣で遠隔操作することも視野に入れ、そのための国からの助成金・補助金申請が開始されるのをワクワクしながら待とう。因みに衛星は現在、住友林業が木材で衛星を開発中で、原材料を黒滝産の木材にすればメイドインクロタキの人工衛星が誕生するわけで何とも誇らしいではないか。運用後は大気圏で燃え尽きるため、環境への負荷が少ないのが特長だそうだ。

 こうなってくると、高齢の、かつての山持ちブームでいきりたっていたおじいちゃんたちにはSFの世界となってしまっており、理解の範疇を超え流ことも多いかと思われる————SFに精通しているおじいちゃんは別————。それでも、天塩にかけた木々の廃れが復活していく様を見ることができるのを「長生きのご褒美」と言いながら嬉しがってくれることを期待する。ただ、おじいちゃんたちには解せないこともある。先祖代々作り替えてきた杉と桧の人工林を、再びその前の状態に戻していこうという動きがメインストリームになっていることだが、これはまた別の話。

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