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願掛けでアイドルを1年間断じていた人が解禁する日

アイドル全般、大好きだ。
アイドル好きを名乗ると、だいたい「え、どのグループ?」と聞かれるが
私は「全部」好きだ。

つまり、ハロプロもジャニーズもスターダストも48や坂グループもK-POPアイドルも
とにかく自分自身をアイコンとして「表現」をし
それを「プロデュース」していく姿の全般が好きだ。

アイドルのパーソナリティと自己表現、
それを最大限にいかすプロデュース、
そしてときに「偽り」となり「売り物」となるプロデュース

そんな力強さと危うさのバランス。
さらに「賞味期限」を伴う儚さ…
そんなアイドルに魅了されている。

もう少しだけ語ると、
アイドル個人に関して言えば
同じ振り付けのダンスをするにも表情はもちろん、首の使い方や膝の入れ方の違い
事務所等に関して言えば
楽曲の売り方やジャケット、○曲目やこのタイミングにおける歌詞、メンバーの配置など
とにかく研究するポイントが多く、飽きない。

さすがにこれは本題ではないので、このぐらいで割愛するが
以上が私がアイドルに惹かれ、取り憑かれている理由である。

そんな私が願掛けで1年間もアイドル情報を一切得なかったこの事実と心の葛藤を
ここに残しておこうと思う。

なぜ断アイドルをすることになったのか

■ 私の修行への思い

高校2年生の時、世界史の先生が授業中に「修行」の話をしてくれた。
たしか、その先生は大学時に修行的なものにはまり、
右足だけで生活や、誰ともしゃべらない生活をしていたらしい。

もう、超惹かれた。

先生の言う「修行」は
行為自体に何か意味があるわけでないのに
その行為を繰り返すことで意味を持たせ
自分と向き合っていた。
さらにその修行自体がコンテンツ化していて面白そうだった。
つまり、科学では解き明かせないような神秘性があるのに
なぜかエンタメ感があるというそのギャップに興味を持った。

とにかく、これが私の修行道の始まり。

■ 私の修行「断アイドル」の歴史

で、まず1番最初に修行をしたのが高校3年生のとき。
受験期だった。
とにかく周りの目を気にして自分のアイデンティティみたいなものがグラグラしていた私は
勉強に打ち込むことができず、心の安らぎをアイドルに求めていた。
問題集を開いては、景気付けにミュージックビデオをみてそのまま1時間経ったりしていた。

これではダメだ。そう思った私はここで断食ならぬ「断アイドル」を決断する。
早見あかり脱退公演DVDの「ももクロ春の一大事」をおとりに
受験が終わるまで、アイドルに関する情報・楽曲の一切を断じた。

この修行は、自分自身への「覚悟」と「願掛け」
自分の好きなものを我慢して受験を頑張ったんだという自信や安心感を得るためだ。

基本ルールは以下
①アイドルの曲は聞かない
・微妙なラインのLDHも対象内。(LDHを含むのは、個人的な心の問題です)
・バラエティの挿入歌、街に流れるBGMは不可抗力なので仕方ないものとする
②アイドルのでる番組はみない
・冠番組だけでなくゲスト出演している番組、それから主演のドラマが対象
・CMは不可抗力だが、目を逸らしたり、音量を下げるなどの努力を行う
・音楽番組は歌わない時でもワイプで出てきたりするため、出演回は基本的に見ない
・ラジオやYoutubeチャンネルも同様の扱い
③ネットでアイドル情報を得ない
・タイムラインに流れてくるもの、リコメンドされてしまうものは不可抗力とする
・新曲情報、衣装、配列、ライブ情報、エピソードなどはみない
④アイドル誌を読まない
・アイドル専門誌じゃなくてもanan等に出てくるアイドルも表紙は仕方ないが特集はみない

こうして第一期断アイドル時代は幕を開け完全に遮断して
なんとか無事大学合格し、晴れてアイドル摂取活動を復活した。

そして第二期断アイドル時代。
大学3年生になる春、ゼミだ。
スタートダッシュを決めたかった。
自分の興味の持った分野を、探究すると言うスタート地点にインコースで立ちたかった。
だからここでも2ヶ月間ぐらい全ての情報を断じた。

この2回の断アイドルによる願掛けは、自分にとって本当に良い方向に進んでいた。

だから私にとって、「頑張りたいとき=アイドルを断じる」
それがトリガーになっていた。

もちろんアイドルの熱が消えているわけではない。
・「アイドル」が「売り物」という社会
・女性と男性アイドルのタイムリミットの違い
・日本社会のステレオタイプによる多様化のなさ
・ゴミとなるCD
・過激化する応援と理想のための誹謗中傷
むしろアイドルから派生していろいろ考えるようになった。

■ そして今回の断アイドルの件

だから、この活動に拍車をかけようかな、と思ってもみたが、
社会人になって初めて、ここは頑張りたい、と強く思うときがきた。
というか、頑張りたいというより少し気合いと自信が欲しかった。
自分の怠慢さとか、そういうものを全て無くしてやんないと負けちゃう、そんな感じがしたタイミングだ。
成功したかったから、とにかくいつものラッキールーティーンである
この断アイドルの願掛けをすることに決めた。

その期間のキリがいいのが1年間だったわけ。

期間中、何回も上司に「そうやって好きなものを禁止するのはよくないよ」って言われた。
それは一理あるけど、自分にとってこれは新しい自分になるためへのステップであり
他人にとやかく言われるものではない。
私と私の勝負である。

断アイドルを始める2019年4月1日の前日、
3月31日23時59分まで曲を聴いた。
モーニング娘。の「ザ⭐︎ピ〜ス!」
これは断アイドルを開けたら1番最初に聴くと決めた曲。
1年間仕事を頑張って、満ちた気持ちの自分を想像して、曲を耳から精一杯吸い込んだ。

■ 断アイドル解禁に向けて

今回の期間の設定は、自分が担当しているプロジェクトの遂行完了日としていたわけだが、
時が来る前に私は体調を崩して休職することになった。

自分自身の戦いに敗れたのだろうか。

わからない。

だから、断アイドルを止めることができなかった。

修行行為は、
その場にはいることはできないが、プロジェクトの成功を祈り続けるものであり、
自分自身への変化を願うものだ。
まだ終わらせられなかった。

休職期間中もプロジェクトが遂行するまでは
断アイドルを行おうと思い、続けた。

ただ、コロナの影響でプロジェクトの完了というものがわかりにくくなってしまった。
そして自分も復職を果たしていた。

こうなってくると
覚悟を示し、安心感を得るための願掛けだったはずが、
今はだらだらとただ慣れてきた生活を繰り返しているだけになっていた。
過去2回のものと違い、修行の意味が薄れていた。

どうしようかなぁと。

復職してから2ヶ月。もう6月が目の前だ。
もうなんのために断じてるんだろう。
むしろ、毎度断じていることを意識するたび
自分がもともと願掛けをした場所とは関係ないところにいることに引っ張られてしまう。
しかし、
自分はこの断アイドルで何か果たしたのか?成長したのか?
この問いにずっと答えられずにいた。
願掛けと共に努力が流れていくような気がして。

ちょうど良いタイミングを失い
達成感を得るものがない今、
断アイドルを終える、わかりやすい理由がない。
だけど、ずるずると無目的に行なっていて意味をなしているとも思えない。

思考はいったりきたりを続けていた。

目の前にある事実を見よう。
私は最後までプロジェクトに携わることはできなかった。
しかし、アイドルというコンテンツを遮断し
懸命に仕事へ打ち込んできたことは嘘じゃない。

カタチとして見えないかもしれないが、
休職も含めて、自分自身はずっと成長しようともがいている。

もう次に進もう。これが今の私のアンサー。
変わっていこう。

結果が全て?
うっせぇよ。

ここで自分の思っていなかった感情にたくさん出会って
やりきれない思い抱えて、
自分がどうしたらもっと自分らしくなれるのか
どうしたら一緒にいろんな人と助け合える私になれたのか
1年間を思い出すたび、1個づつ反省してる。
悲しみや悔しさは頭の隅に追いやっても追いやっても頭を痛くして
寝るしか解決策を持てない自分をどうやって受け止めていこうか
ここから続く自分の人生をどう歩もうか
考えているんだよ。

ウィズコロナの社会を想像してアクションを?
自粛生活をどう有意義に生活するかで成長度合いが変わる?
この言葉を使える人たちと今の自分を比べたくない。

また自分を信じてみたい。
あんなことやりたいって前向いて歩いてみたい。

解禁するよ。
私の大好きなアイドル達よ。
私の人生を支えてほしい。

■ 断アイドルを解禁する、その日

最初に聴く曲は決まっている。
だが、緊張している。

このあとの感情は今まで出会ったことない感情だと
行う前からわかるからだ。

だから怖い。
でも知りたい。

Youtubeの検索窓に入れた「モーニング娘 ザピース」
2020年5月31日9時18分
再生を押そう。

なんだよこのMVは!!!
なんでこんないい曲なのに、こんなMVなんだよ!

それなのに、泣いている。もうガンガンに泣いている。
鼻水が詰まりまくっている。

想像していた、達成感に溢れ、しっとりと涙が流れるようなものじゃない。
自分の吐き出していない思いがどっと溢れ出し、浄化されていく感じだ。

そうなんだ、意味なんてない。
人生を無理に。急いで意味づけることをしなくていい。
人によって、タイミングによって、自分のウェイトを占めるものは違うし
明日になったら思うことも違う。
真面目なことで悩むことと、ピザをLかMかで悩むこと
全く違うことだけど、同じように悩み、選択し、
幸せを願って生きていく。

なんだよ、めっちゃいい曲だ。
もうめちゃめちゃいい曲だ。

余韻と共に今後の自分に目を向ける。

そんなに自分の感情に責任持たなきゃいけないか?

今日真剣なことで悩み苦しみ、悲しみに明け暮れても
明日そんなの忘れてスーパーに行くことを楽しいなぁと思って
自分って幸せものだって思って良いわけで。

自分に正直にいよう。自分のそのときどきの気持ちを大切にしよう。
それでいいんだよ。
自分の歩みたい道を自分のペースで歩もう。

■ 最後に

断アイドル。
今回は意図しなかった終わり方だ。

だけど今、少し明るい気持ちだ。
窓を開けて外の空気を吸った。
晴れやかな気持ちだ、外は曇り。
うん、これが人生。

この1年間は無駄じゃない。
断アイドルをしてよかった。
懸命に走ったことを自分自身に証明している。
誰にもみえなくても、自分はこの1年を知っている。

断アイドルが明けた。
また、私が生きていくために共に歩ませてほしい。
世の中のアイドルたちよ、最大の愛を込めて。
ありがとう。

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