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【第25回】アート界の裏側を知る、学ぶ! 「アートとマーケットのつなぎかた」

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第25回 クリエイティブナイト
ゲスト:金島隆弘 氏(アートディレクター )

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今回は、金沢美術工芸大学美術科芸術学専攻准教授として現代美術領域・キュレーションを担当する(※2023年8月現在)、アートディレクターの金島隆弘氏を迎えて「アートとマーケットのつなぎかた」をテーマに語り合います。

日本と世界のアートフェア

西澤:金島さんは、アート業界のなかでもレアキャラ中のレアキャラで、かつ同世代でもトップを走っています。今日はあまり表に出ないアート業界や、日本や世界の現代アートについてお話しいただこうと思います。

金島:よろしくお願いします。私は「アートフェア東京」のエグゼクティブディレクターを5年経験した後、「アート北京」のディレクターを2年間務めて日本に戻ってきました。アートフェアでは、ギャラリーが扱うアーティストの作品をブースごとに展示・販売します。美術館と大きく異なるのは、販売の場であるということ。各ギャラリーでテーマを設け、販売に結びつけます。毎回、ギャラリーごとの小さな展覧会を見られるわけです。

西澤:なるほど。アートフェアは世界にどれくらいあるのでしょうか。

金島:例えばアメリカだと、ニューヨーク、マイアミ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シカゴなどです。都市ごとに扱う作品が異なり、現代美術や工芸、インテリアとアートのコンビネーション的なフェアもあります。なかでも世界最高峰と言われているのが、毎年6月にスイスのバーゼルで開催される「アート・バーゼル」です。出展数は300件ほどですが出展の競争率が高く、世界中の富豪がプライベートジェットに乗って集うほど高い評価を得ています。動く金額も東京や北京とは桁が違い、「1週間で1年分稼ぐ」と言われています。バーゼルで開催された後は、富豪たちの別荘が建ち並ぶマイアミビーチのほか、近年では香港にも進出しています。

西澤:「バーゼル」はすごいブランドなのですね。

金島:世界の現代美術のトレンド発信地です。「アートフェア」と言うと現代美術を扱うイメージですが、フェアによって特徴はさまざまです。オランダの「TEFAF(欧州ファインアートフェア)マーストリヒト」 のように、博物館クラスの古美術品・アンティークがそろうアートフェアもあります。

アート界と市場、値付けについて

西澤:アートの業界について教えてください。

金島:アート界は主に美術の作品を展示する「美術館や国際展」、作品が生まれる場としての「学校やスタジオ」、そして作品が取引される「マーケット」で構成されています。この生態系の中で美術の形式や価値が決められる仕組みになっていて、ここで作品・言葉・お金・人が動きます。アートフェアはこの「マーケット」の部分にあたります。

美大などを卒業したアーティスト収入を得るための方法のひとつに作品をギャラリーに扱ってもらうことがあります。ギャラリーはアーティストと一緒に、制作した作品を展示する役割があり、また、アーティストの作品を管理したり、コレクターから預かった作品をアートフェアで販売したりすることもあります。そしてアートフェアは、多数のギャラリーを束ねてコレクターや投資家など広く社会に作品を紹介する役割を担っています。

西澤:なるほど。

金島:美術品の売買のほか、ギャラリーとの出会いの場でもあります。キュレーターが、ギャラリーが扱う新しいアーティストを見つけて美術館の展覧会につなげていくパターンもありますし、オークションや美術品の相場を知り、作品についての新しい情報を仕入れる場としても機能しています。

西澤:アート自体は古くから存在していますが、開かれたマーケットが形成されたのはいつ頃からでしょうか。

金島:昔の美術家はパトロンに育てられることが多く、また宗教的要素も強かった。アートフェアがさかんになってきたのは戦後で、それ以前は「博覧会」という形式がありました。例えば明治政府は各国で開催された万国博覧会に出展し、さまざまな美術品を紹介しましたよね。それが現代では形を変えて直接的に作品が売買される「アートフェア」となったわけです。

西澤:市場が形成されたのはわりと最近なんですね。

金島:広い意味での作品のグローバルな流通の歩みは、アートフェアの歴史と重なると思います。アートフェアやギャラリーは、アーティストが制作した作品を最初に見せて販売に結びつける「プライマリーマーケット」です。一度購入した作品をオークションに出品するのは二次流通、つまり「セカンダリーマーケット」と呼ばれています。作品の取引において業界ではよく「プライマリーか、セカンダリーか」「アートフェアか、オークションか」といった表現を使います。また日本の場合では、百貨店が作品販売のチャンネルとして強く機能しているのがマーケットの特徴です。

\ 引き続き、金島さんによるアート界の裏側のお話に迫ります /
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