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【第40回】「なじむ、にあう、ほどよい」

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第40回 クリエイティブナイト
ゲスト:木住野彰悟氏(グラフィックデザイン事務所 6D 主宰)

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今回は、「KIRIN Home Tap」のロゴデザインや「小田急電鉄ロマンスカー」の交通広告などを手掛ける、グラフィックデザイン事務所 6D 主宰・木住野彰悟氏をゲストに迎え、「なじむ、にあう、ほどよい」をテーマに語り合います。

西澤:今回は、僕がずっとお会いしたいと思っていた、木住野さんをお招きしました。まずは自己紹介をお願いします。
木住野:僕の職業は、グラフィックデザイナーです。グラフィックにもジャンルの幅がありますが、主にはVI(ビジュアルアイデンティティ)やパッケージデザイン、そして、建築物や公共の広いスペースのなかにサインをつくる、「サイン計画」と呼ばれる仕事を手がけています。今日は僕の仕事の事例をベースに、「なじむ、にあう、ほどよい」のテーマを紐解いていきます。

紡ぐをかたちに〜結城 澤屋〜

木住野:まずは、茨城県結城市で高級織物「結城紬」の老舗問屋を営む「奥順」のプロジェクトをご紹介します。結城紬は、奈良時代から歴史を持つ国の重要無形文化財です。「奥順」では、明治40年から反物づくりを続けていて、5年ほど前に「これからは自社で新たに着物ブランドも展開したい」とVIの相談をいただきました。
実際に工房を見に行くと、そこでは女性が蚕から指で糸を紡いでいました。1本の反物をつくるのにかかる時間は、平均2〜3カ月。長い歴史と圧倒的な作業量、繊細な手しごとの光景があまりにも印象的で、新ブランド「結城 澤屋」のロゴマークには、長い糸と紡ぐ指のモチーフを提案しました。

<当日のスライド画像より>ロゴマーク

西澤:シンプルでかっこいいですね。

<当日のスライド画像より>紙袋

木住野:紙袋に展開したアイデアがこちらです。中に入れるプロダクトが十分素晴らしいので、ロゴマークで演出する必要はまったくありませんでした。結城紬の反物は、1本何百万円の世界ですから、それを包む紙にはこだわりたくて、予算内で一番上質な素材を選びました。

「にあう」デザイン〜久松湯、つくばみらい市立陽光台小学校〜

木住野:これは、東京都練馬区にある公衆銭湯「久松湯」です。「都内の銭湯10選」などで必ずランキング入りするほどの有名な銭湯なのですが、建て替えにともなってロゴマークとサイン計画を担当しました。当初は、家紋のデザインをオーダーされていたんです。

<当日のスライド画像より>ロゴマーク、サイン

西澤:クライアントからのリクエストですか。
木住野:ええ。以前、別案件で石川県金沢市にある和物の時計店「はなもっこ」のロゴマークを家紋で作ったことがあり、その実績を見て、「こんな感じで、うちにも家紋があるから家紋でロゴを作ってほしい」という依頼でした。家紋を使えばきれいなデザインになりやすいし、銭湯との相性も悪くない。ただ、テーマのひとつにも出てくる「にあう」の話で、銭湯を考えると、「町のお風呂」であることを表さなければいけない。この公共性が強いものに、家紋のような個人的な象徴をロゴとして使用することに違和感がありました。僕はいつも、マークやパッケージは中身をそのまま表すことがとても重要だと思っています。
西澤:なるほど。たしかにそうですね。
木住野:そこで、オーダーいただいた家紋の案とは別に、新たな温泉マークをイメージして、ひらがなの「ゆ」が湯気に隠れているデザインのロゴマークを作りました。

<当日のスライド画像より>サイン

木住野:はじめは、提案を却下されました。それでも家紋の案に対してブラッシュアップが入るたび、このロゴを出し続けていたんです。

西澤:毎回?

木住野:もちろん、毎回です。すっと忍ばせて説明をしていました。いい加減「もうダメかな」と思っていたのですが、急に「『ゆ』のほうにしました」と連絡がきて、その理由もわからないまま採用をいただきました。僕は、オーダー以外にいいアイデアが浮かんだら、必ず提案するようにしています。勝手にブラッシュアップをしながら提案を続けていると、こうして採用いただけることもあるんです。

茨城県にある「つくばみらい市立陽光台小学校」の事例をご紹介しましょう。「小学校で起こる問題は区切られた空間だ」という発想から、教室ごとの壁が斜めに半分オープンになっています。廊下なのか教室なのかという、不思議な空間ですよね。


\ 引き続き、渡邉さんのコンテクストデザインの考え方に迫ります /
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「CREATORS FILE」をまとめて見るには、こちら(外部サイト)




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