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【第33回】「自分の仕事をつくる。一緒に冒険をする」

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第33回 クリエイティブナイト
ゲスト:西村佳哲氏(働き方研究家)

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今回は、働き方研究家の西村佳哲氏を迎えて「自分の仕事をつくる。一緒に冒険をする」をテーマに語り合います。

働くことについて考えてみたかった


西澤:実は、西村さんのことはずいぶん前から知っていたんです。こんな角度でクリエイティブに切り込んでいる人はなかなかいないと思って、雑誌の連載や著作を興味深く読んでいました。「働き方研究家」という肩書は、何をきっかけに生まれたんですか?

西村:30歳まで鹿島建設に勤めていて、そのときに「次の時代のオフィス像を考える」という部門間を横断する研究プロジェクトに関わりました。色々とリサーチしていく中で気づいたのは、海外のオフィスはコミュニケーションにウェイトを置いていることでした。日本のオフィスの給湯室といえば、一般的にはうす暗い場所というイメージですよね。でも、海外のオフィスには給湯室というか「パントリー」が、最も人が集まる場所に配置されています。ティーバッグやドリップコーヒーといった飲み物類はもちろん、マフィンなどのお菓子もあって、社員の滞留時間が長くなる設計になっている。すると、必然的に別の部署の人たちのやりとりが増えて、空間が活性化するんです。

西澤:確かに。

西村:戦後間もない頃、日本のオフィスは「対向島型レイアウト」が主流でした。いまだに大手企業はそうなっているという話を聞いたときは衝撃でしたが、一方でこれは成長期の会社にはいいと思うんですよね。

<対向島型レイアウト>画像提供:西村佳哲氏

西澤:と、言うと?

西村:新入社員がこの島の中に入ると、周りからは新人の様子が見えるし、新人も周りの様子がよく見える。少し離れた席には偉い人がいて、階層が視覚化されている。教育しやすい環境になっているんです。だから、今から人材を育てて成長していくぞという会社にとってはいい。でも、成熟期を迎えた会社やスクラップ&ビルドのときには、これは向いていない。「次の時代のオフィス像」とひとくくりに言っても、それぞれの環境に適したレイアウトがあることを学びました。こんな感じで「働き方」の研究は、まずは空間から入ったんです。そのうちに「仕事って、働くってなんだろう」というテーマをもっと考えたいと思い、30歳で会社を辞めました。

西澤:どのくらいお勤めになったのですか。

西村:6年くらいですね。辞めて1年半が過ぎた頃だったかな。ふと、夜中に企画を思いついて「AXIS」というデザイン誌の副編集長にメールで長文を送ったんです。そうしたら翌日の午後には「午前中の会議で承認がおりました。ぜひよろしくお願いします」と返事がきて、初めての連載を持つことになりました。

西澤:即決で! そのときは、まだ著作はなかったわけですよね。どんな企画だったんですか。

西村:デザイン雑誌には通常、デザインされ終わったものばかりが掲載されていますよね。でも、僕は「そんなの意味がない」とずっと思っていたんです。モノが飽和している今、求められているのは「どんな環境で生み出されているのか」「どんな方法で仕事を進めているのか」という「過程」の部分なんじゃないかと。だから、様々な人たちの仕事場を訪問して働き方をインタビューしてみようという企画を考えました。

西澤:どんな方をインタビューしたのでしょうか。

西村:印象に残っているのは、日本のインダストリアルデザインの確立者と言われる柳宗理さんですね。東京都・四谷の事務所を訪ねました。

<柳さんのオフィス>画像提供:西村佳哲氏

西澤:この当時は何人くらいのスタッフが?

西村:2人だったと思います。なぜ柳さんを訪ねたかったかというと、柳さんは工業デザイナーなのに「図面を描かない」という話を聞いたことがあって、本当なのか確かめたかったんです。で、実際にお会いして「図面を描かないと聞きましたが」と言うと「うん、描かない」とおっしゃる。「それでどうやってるんですか」と尋ねても「うん、作るんだよ」と。「僕は美大で工業デザインを学びました。先生が作っているようなお鍋は、中心線をとって……」と話しても「うん、それは間違ってるね」って。もう次の言葉が見つからなくなってしまって。


\ 引き続き、西村さんの働き方研究に迫ります /
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