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【第31回】クリエイティブな会社の経営―常に高みを目指す、死なずに―

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第31回 クリエイティブナイト
ゲスト:塩田 周三氏(ポリゴン・ピクチュアズ代表取締役社長)

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今回は、米国アニメーション専門誌 Animation Magazine が選ぶ「25 Toon Titans of Asia」の一人に選定され、第25回文化庁メディア芸術祭 功労賞を受賞したポリゴン・ピクチュアズ代表取締役社長 塩田周三氏を迎えて「クリエイティブな会社の経営」をテーマに語り合います。

35周年を迎えた「ポリゴン・ピクチュアズ」

西澤:今日のトークテーマ「常に高みを目指す、死なずに」って、もう最高ですね。僕は自分でデザインしながら経営も手がけているので「クリエイティブな会社の経営」についてはすごく興味があります。

塩田:まずは、今日参加してくださっている方々の中に「ポリゴン・ピクチュアズ」を知らなかったという人はいますか。……うん、5人くらいか。簡単に説明すると「ポリゴン・ピクチュアズ」はアニメーションCGの制作会社で、300人前後のスタッフが働いています。この規模のCG制作会社は日本最大なんですよ。『プーさんといっしょ』とか『げんきげんきノンタン』を作っていたり……あとは『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』や『Lost in Oz: Extended Adventure』では TV 界のアカデミー賞として知られるデイタイム・エミー賞を受賞したり……。実は、それなりに成果を出している会社です(笑)。

『シドニアの騎士 あいつむぐほし』Ⓒ弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

西澤:クリエイティブな会社はブラック企業のイメージがつきやすいと思うんですけど、そのあたりはいかがですか。

塩田:限りなくホワイトに近い経営を目指しています。スタッフたちには男女や人種の多様性を尊重したり、働く時間を気にしたりしながら制作していますね。

西澤:外国人のスタッフもいるんですね。

塩田:2割くらいですね。僕らの仕事自体がインターナショナルなので、スタッフもインターナショナル。現場は英語と日本語がとびかっているので翻訳ができるスタッフもいます。

西澤:ポリゴン・ピクチュアズは、記事公開時の2023年で35周年(※2023年8月現在、40周年を迎えた)ですが、塩田さんが社長に就任されたのはいつ頃なんでしょうか。

塩田:2003年からですね。一時期は来月の給料が払えるのかもわからないような経営難に陥りましたが、何度も乗り越えてきました。今日は、ポリゴン・ピクチュアズの歴史を振り返りながら、僕が経営をするうえで大切にしていることをお話したいと思います。

「出自」がすべて

塩田:ポリゴン・ピクチュアズの始まりは1983年、河原敏文によって設立されました。この河原さんがかなり変わった人でした。設立当初はあまりCGらしいことはやっていなかったのに、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に英語を勉強しに行って、なんとなく受講した3DCGのクラスが面白くてその分野にのめり込んでしまった。新しいことへの挑戦がとにかく好きな、めちゃくちゃな人なんですよ。

西澤:思いきりがすごいですね。

塩田:そう。で、色々あってポリゴン・ピクチュアズが倒産しそうになったときに河原さんは退散して、二代目社長に笹沼泰助さんが就いたんですけど、その笹沼さんから2003年に「お前、やれ」と言われて(笑)。赤字真っ只中で引き継いだわけですが、それでも創業者である河原さんのDNAは大切にしようと決めました。

西澤:DNAというと?

塩田:うちのミッションステートメントは「誰もやっていないことを 圧倒的クオリティで世界に向けて発信していく」なんですよ。時代に応じて、誰もやっていないことは何なのかを考えて発信していく。高みを目指して、いつでも勝ちに行く。いわば、これは河原さんのエネルギーなんです。日本の法律では、会社を「法人」と呼び、一人の人間を「個人」と呼びますよね。どちらにも人という字を当てていて、会社にも人格があるという考え方をもっている。僕はこれを「その通りだな」と思っています。会社は、それを生み出した人の DNA に多かれ少なかれ支配される運命にある。子どもが親元を巣立ち、親とは別の存在になったとしても、最終的には親に似てしまうのと同じで、河原さんの強い意志が「ポリゴン・ピクチュアズ」を生かし続けてきたのだと思っています。だからこそ「出自」は大切にするべきなんですね。

\ 引き続き、塩田さんのクリエイティブな会社の経営の考え方に迫ります /
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