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三冬尽く

「今日は寒いねぇ。」
 外に出た途端にくしゃみをした3歳の娘。少し面白おかしく感じてしまい、私は笑いながら娘にそう言った。
「ちゃむくないよ!おねーたんだから!」
 鼻を垂らしながらも、意地になって言うお喋りな娘の鼻を私は拭く。部屋に吹き込んだ風が、少し前より暖かくなっている気がした。
「うんうん、お着替えできるようになったからおねえちゃんだね。」
「ママ、もうゆきうる?」
 会話が突然変わるのには慣れっこだ。いや、娘にとっては突然ではないのだろう。
「そうだねぇ、もう雪は降らないんじゃないかな?」
「ゆきだるまちゅくりたい!」
「また雪が降る時が来たら遊ぼうね。」
「いちゅゆきうるの?」
「ん〜、あと何回寝たら雪降るかなぁ?ママもわからないよ。」
「おねーたんのクラツになったらゆきうる?」
「そうだね、お姉ちゃんクラスにもうすぐなるから、それからお祭りと運動会したら雪が降るね。」
「ゆきうるのまつ!」
「さゆちゃんは凄いね。待てるなんて大人みたい!」
「おねーたんだから!」

 最近娘の中で流行っている言葉を聞きながら、私たちはまだ冷える道を手を繋いで歩いて行く。
慌ただしい毎日の細やかな時間に、今日は少しだけ目を向けれたなと、私は笑みが溢れるのだった。


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