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ライラック杯~審査員~moe賞

短歌と私。
書きだしたのは、親の介護と子育てをしていた頃でした。
生きる杖みたいなものでした。
上手く書こうというより31文字のなかに、時には
よろこびをかみしめ 時には 辛さを吐き出して
現実逃避や喜びの謳歌だったと思います。

世の中のこと、自分の不甲斐なさ。
自分への応援歌。家族のこと。嬉しさ。
そんなものをうたってたと思います。。。
間違いなく「詠むこと」で、それは私を支えてくれました。

そんな私が、noteに来て、創作も含め 思いつくまま短歌を書いて
そのうち企画に参加するうち、ある日、企画のボスから「審査員」を
拝命いたしました。
そして、これまた、なにも考えずに引き受けていました。
 でも、ずっと思ってたことですが、私には順位など
付けられるはずがありません。
というより、つけたくない。
だって、素晴らしい作品ばかりで ひとつひとつがたっている。
思いがこもってて、そこに創作の命があるんだもの。
でも。。。。
じゃあ、私は、素直に 私の感性、魂が響き合ったうたを選ぼうと思いました。
 あとずさりするほど素敵で、むせ返るほど春の息吹を感じさせる
多彩なうたばかりのなかで そっと、そこにいて待っているうた。
「そうそう、こんな場面あったわ」ってきゅんとしたうた、
そこから音楽か画が表れてきそうなうたを選ばせていただきました。
そこに居てにこにこしている自分がいそうなうたを、です。

 31文字のドラマ。
 ほわっとあなたの傍でも笑いかけていたらいいなと思いつつ。
では。

僭越ながら「moe賞」です。

 読んで下さってありがとうございます。


第六位

涼風に桜散る前その刹那
歩みを止める時のその様

満開に咲き誇りあたりを薄紅色に染めるさくら。
まさに今、それを散らす そよとした風が吹く。
その時、その瞬間、風が止んだ?
風のささやきを聴いて、立ち止まる。失いたくない。この瞬間の花。
立ち止まる
そのひとのその様のなんと静止画のような風情。印象。

私は時が止まったような、いや 止まれと言ってるようにも思えました。
 自然への畏敬を感じます。その視点。はらはらと散る様の風情がなんと胸キュンです。

第五位

ただいまの響き確かめ安堵する 
無口な吾子の今日の出来事


そうなんですよ。
「ただいま」の声の加減で子の機嫌がわかるんです。
ランドセルを置くなり「おやつは?」って叫んだ時代と違い難しくなる思春期。「今日はどうやった?」なんて聞けない雰囲気の時もある。
 ああ、そうかあ。。そっとしとこ、いいや元気そうだし、、って台所に立つ。せめて美味しいご飯を食べさせるくらいしかできない時代、あったな。親の想いはどこもおなじなんやろなと思いました。楚々として控えめで親の万感の思いが伝わるうただと思いました。
大好きです。

第四位

落書きの言の葉たちは羽があり 
本の余白を自由に翔ける


作者はこのうたを詠まれたきっかけになったご自身の小説を引用して
このうたへの想いを書いておられます。

図書館でのこと。「久しぶりに手に取った「海辺のカフカ」。
253ページ目に、鉛筆で薄く「好きです」の消し跡。
それは見つけてもらうのを待っていたのだろうか。
言葉たちは魂を宿し、私に教えてくれる。
本に閉じ込められた愛は永遠になるのだと。」

なんか私たちの青春時代に読んだ本の思い出が図書館の
風景と共に浮かびます。文学の香りがします。。
そして 私事ながら、,ひっそりと我が家の押し入れに眠る息子の高校時代の教科書の存在を思い出しました。
 その余白には漫画や言葉の落書きが書かれてあります。
なにやってたんだろ、ってその時は笑ってました。
きっと授業中、窓の外を眺めながらでも書いたんかなと。
 この歌を読ませて頂いて、そんなことを思い出しました。
まるで、その余白の言葉や絵が生きて飛んできそうな気がしました。
 このうたに出会えて子育て時代に戻れてうれしかったです。

第三位

3歳がつぼみチューリップの横を
 大股でゆく進級の朝

なんて言えばいいの?
もう、愛らしい!のひと言しか浮かびません。未満児クラスからの進級でしょうか?2歳から3歳って違いが大きいんですよね。なんでもいやいやしてた頃の2歳児。
私の田舎では、2歳はふたつ児の世倒し」って言われたくらい目が離せない年ごろ。それが、3つになると少し落ち着いて大きくなるのね。
「もう三歳なんだもん!チューリップさんよりおおきいぞ。ねえ、ママ?」って聴こえてきそう。大股がいい。胸を張って歩くんだ。えへん!おめでとう!
春の花壇の花とお子さんと空が浮かびそうな短歌、親御さんのフレッシュさがにじみ出て素敵なうたです。

第二位


またあしたまた来年もひゃくねんも
守りたいから一緒いたい

様々なことを許し、心から見守ってくれる大切なおともだちへ
ライラック短歌を贈ります。」って文中にあります。泣いちゃいました。
noteって人ぞれぞれなんですよね。創作の場であり、こころ許せるひととの
交流の場であり。
生活のひとつではあるけれど、ひとそれぞれ、大切な場所になってるのが
わかります。
少なくともここで出会った素敵な仲間を大切に思い作品を届け自分らしく(自分を大切に)生きてる今を謳歌して生まれた短歌。
noteに限らず自分にとって大切なひとへの愛のうたですよね。
すごくその人柄が表れてて大好きなんです。もう、大好きのひと言。可愛い!

第一位


天空の庭より落ちる花の雨
薄紅うすぐれないに染まりたる空

もう息を呑む美しさ。目の前に天女の姿が浮かび、そこでの宴が浮かび
そして、それがさくらいろの花の雨となって降る。
なんなの?
精神世界をみてるの?うっとりするよりほかにいいようがない。。
 ふと見上げれば薄紅に染まる空。
美しさと妖しさがはんなりと迫って、吉野の桜のはなを思い出しました。
なんか、天空ってそうなんやろな、と思いました。圧巻の第一位。。



次は、心潤し ああ ひとりではないんだと思えた短歌です。


形よくできた時ほど寂しくて
亡父の好物オムライスなれば

さみしいよ。
美味しいと言ってもらいたくて一生懸命作ったの。でも 上手く作れたのに、もうあなたはいないんだ。
「美味しかったよ」ってもう一回聞きたかった。。。

 もう一度会いたいな。おとうさん。上手くできたんだよ、食べてほしいよ。・・って声が聴こえそう。父親っこだった私は泣けちゃいました。

風が鳴るエフエムの音消した朝 
昨日の憂い知ってのことか
 
私は ラジオ深夜便です。かつて眠れずかけて寝た日々を思い出します。
今は、やっと週3日くらい、つけずに眠れるようになりました。
いつか、そんな日って くるんですね。
ふと アンカーの その声に起こされて、ああ 眠れたんだと思う朝。
明け方の風の音とやっと朝が来たかという安堵と。。
風よ知っていたのかと言ってるような。。

花びらの舞い散る下をうきうきと
苺大福買ってくるきみ
 
可愛いねえ、なんか見て居る彼の、目を細める様が浮かびます。
「うきうき」がなにかを含んでていいな。

前髪を切り過ぎたかと気にしつつ
鏡の前で春ショール巻く
 
前髪に手をやりながら、ああ、切り過ぎたかなあってつぶやいてる。目に浮かぶわ。
 わかるわあ。

ビニールの傘にはらりと春形見 
舞ひ落つ雨と奏でる調べ
 
なおみワールド。あでやかでひそやかで美しい。上品な色気。大好き。

我が頬を拭う祖母とで見たままに
降る桜見て年経ふるを思う
 
おばあちゃんってやさしさの塊ですよね。我が子の時には必死で
駆け抜けて、味わう暇もなかった。
孫はその子を受け継いで愛しくてたまらない。我が子よりも大らかにみられる。ただ愛しさしかなくて。ただ傍で笑ってるだけで。なんでも許せる。
拭ったのは さくらの花びら?それとも。。私、最初 なみだかと思いました。




拙い文をお読み下さりありがとうございます。素敵な詩歌がそこにある。
暮らしのなかでの思いやつぶやきを素直に詠まれたのを感じます。
読んでいると、私のうれしい時、辛いとき31文字に思いをこめて遣り過ごしてきた年月がいつしか浮かびます。共感ってすごいなと思います。もしかしたら、世界でたったひとつの「賞」になってればいいな。
短歌を詠まれたみなさま。この文章を読んで下さったみなさま
ほんとうに ありがとうございました。


最後に 歌を寄せられたみなさま、ありがとうございました。解釈が違っていたらごめんなさい。




めぐり来た季節の輝きに感謝。



ありがとうございます。













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