見出し画像

鳥羽和久さんからのコメント

島崎智子の待ちに待ったベスト盤が届く。
ベスト盤と言えば、テーマに一貫性がなくてとっ散らかっているものが多いが、これはぜんぜん違う。ベスト盤なのに愛がど真ん中に居座っている。
彼女がどうやって人と関係を紡いできたのか、そのことが音楽にくっきりと刻まれている。
そして島崎智子の音楽の魅力はなんといってもキラキラとしたメロディの美しさ、そしてメラメラと喜怒哀楽が混ざり合った感情の矛盾をそのまま表現する大胆な展開。
これらの魅力がこのベスト盤にはギュッと詰まっていて、きっと聞く人に伝わると思う。伝わってほしい。
---鳥羽和久 子どもたちと日々勉強する人。著書に『おやときどきこども』(ナナロク社)など。


ありがとうございます!
鳥羽和久さんがめっちゃ音楽家だったことが最近の会食でわかり、
だから聞き所が通なんか〜、と理解しました。

鳥羽さんはどんどん身軽になってくみたいで、現れたとき、なんか子供が居ると思ったら鳥羽さんでした。
チェックの上着の下にチェック違いのチェックのズボンを履いており、
そうめんを本屋に忘れてることも忘れていて
本屋さんが会食場所まで届けてくれて
そこで初めて気付くという無邪気っぷりを発揮していた
嬉しかった。

楽しかったねえ、楽しかったねえ、愉しかった愉しかった
彼の人生を勝手に走馬灯にしてしまい、安心した。
つまりは、そのままでええんやなー
鳥羽和久さんと話すとそういう気持ちになる
鳥羽さんと話したい、って、大勢が求めるのはもっともだと思う。

以下、去年、福岡とらきつねでの対談をテキストで公開しました ぼりゅーみぃで内容濃い
動画でみてくれた人もぜひ読んでください
「あの子もあの子もあの子も自分の片割れなんですよ。」のくだりがめっちゃ好きです。超共感。


この度は、コメントありがとうございました!!
励みにしてこれからも精進します!!

——————————

鳥羽 では、そろそろ始めましょうか。最初だけマスクを取ってご挨拶します。
じゃあ今から、島崎さんとお話をしていきます。見てるみなさん、よろしくおねがいします。

島崎 よろしくお願いします。ふふ(笑)。

鳥羽 福岡へようこそ。

島崎 こちらこそ来させていただいて、ありがとうございます。

鳥羽 今日ここに来るまでに、いろいろ島崎さんありましたけど。

島崎 コロナ、かかっちゃいましたー!

鳥羽 そうですよね。じゃあ今からちょっとマスクをつけちゃったので、マイクを使ってお話させていただきます。

コロナかかっちゃいましたね。

島崎 かかっちゃいました。

鳥羽 いつ退院したんですか?

島崎 9月3日ですね。(2021年)

鳥羽 けっこう経ちましたね。いやもう、島崎さんがかかったっていうニュースが、わたしにとってはめちゃくちゃ激震で。そのあと毎日お祈りしてました。

島崎 ありがとうございます(笑)。

鳥羽 ほんとにお祈りしてたんで。

島崎 みなさんのおかげで…。ほんとに孤独に…脆いんやなってことがよくわかりました。あっはっは(笑)。

鳥羽 一度逃走した?

島崎 あのね、ちょっと誤解のある言い方しちゃったんですけど、電話で「やっぱやめる」って言ったんですよ。罹ってすぐに保健所から連絡があって「お前、ホテル行け」って言われて、まぁ行くわぁって言ってたんですけど、出発が明後日の予定やったんですよ。

で、ホテルに全部持って行かないといけない。寝間着とか、掃除する道具とか(苦笑)。無いものなので、Amazonに注文してたんですよ。まぁ明後日には間に合うやろうと思ってたら、また急に電話かかってきて「明日」って言うんですよ。

そのときに「明日やったら、まだ荷物揃えへんのです」って言ったら、沈黙やったんですよ(笑)。

鳥羽 沈黙怖い。

島崎 でしょ?それでこれ有無を言わさんやつやって思ったんですよ。わたしちょっと恐怖心が強くて、しかも隔離された出られへん個室じゃないですか。

案内で先に言われたのは、「部屋によっては窓もすごく小さかったりするんですけど、大丈夫ですか?」みたいなことで。すごい息苦しくなっちゃって、「こ…怖い!」ってなっちゃったんですよ。それやったら、すぐお医者さんが来れへん不安があっても、解放的な家のほうが心理的にいいんじゃねぇ?と思って。

それで(電話で)「閉所恐怖症のケがありまして〜」とかって言って(笑)。

鳥羽 そっか。それでも入院しようってなったのは、どういうキッカケだったんですか?

島崎 えっとね、2週間近くご飯食べられへんかって。

鳥羽 えー、そんなに? それはなんで食べられなかったの?

島崎 吐き気がすごかったの。ちょっと時系列ぐちゃぐちゃになんですけど…あ、救急車呼んだりとかもしたんですよ。酸素値がすごい下がって。だけど搬入されなくて。
毎日毎日ネットで症状を報告するんです、保健所に。

鳥羽 そうなってるんだ。

島崎 それで保健所から「やっぱり君、ホテル行きなはれ」って電話があったんです。それで今となっては本当にそうですね…ってなって(笑)。

鳥羽 そうかそうか。

島崎 それでホテル行って、「点滴打ってくれ」って。「食べられへんから、ヤバいって感じてる」って言ったら、「じゃあ病院行き」ってなって、そのまま入院になったんですよ。検査とかババババってして。

鳥羽 そうなんだ。だいぶ酷かったんだ。

島崎 そうですね。あのね、はじめにね、メールが来たんです。SNSで「コロナになったわ」って言ったら、その日ちょうど退院した女の子からメールが来て、「とにかく人に頼らないとダメだよ」ってアドバイスもらったんですよ。

でも、ちょっと意味分からなくて(笑)。だけど、結局なんか大丈夫なフリしちゃうんですよ。そいでね、悪化したのね。あれ、これ何の話だっけ?(笑)ちょっとまって、今全然頭はたらかなくて。

鳥羽 え?今ふつうにめっちゃ喋ってたよ(笑)。

島崎 喋ってたよね。こういう状態になるねんよな。あはははは(笑)。

……えっと、だから平気なフリしちゃうから、入院になってしまうくらい悪化したんです。

鳥羽 平気なフリってどんな感じなの?

島崎 なんやろ…ニコニコ〜みたいな。

鳥羽 心配しないで〜みたいな?

島崎 例えば「咳どれくらい出ますか?」って聞かれたときに、めっちゃしんどいくせに、「たまに出るくらいっすかねぇ」みたいな。

鳥羽 なんで?

島崎 自分はしっかりしてなきゃいけないみたいな。

鳥羽 心配かけたくないとかじゃなくて?

島崎 いや、心配かけたくないとかじゃなくてね。わたしはけっこう大丈夫やでって…。

鳥羽 思いたい?

島崎 そうそうそう(笑)。そうなんですよ。そのときに、彼女が「人に頼らなアカンで」ってメール送ってきてたことが、ハッとして。

ようやく入院してから、がんばって様子見に来てくれる看護師さんに「吐き気がすごくて、全然食べられへん」っていうのを一生懸命伝えるんです。けど、けっこうなんかふわっとしてんのよ、言い方が。だからどんなに苦しいかが伝わらへんかってん。

鳥羽 そうなんだ。

島崎 「ホンマにヤバいねん」ってとき、夜中にやっとナースコールを押して、「吐いても吐いてもまだ吐くので、助けてください」って(笑)。それ言ったら、胃の薬の点滴を同時に打ちましょうってなったんだけど、え?そんな手があんねやったら、もっと早くやってくれ!って思ったけど(笑)、まあわたしの言い方がね、ポップなんすよねぇ。

鳥羽 ポップ。

島崎 ポップやねん。「辛いっすわ〜」みたいな。あっはっはっはっは(笑)。

鳥羽 全然深刻じゃない。

島崎 深刻じゃない! なんかこんなに辛いときこそ…。

鳥羽 もしかして、人に頼ったらダメって思ってる?

島崎 すごい思ってるんやなってことが今回わかった。

鳥羽 そのせいで死ぬところだったっていう。

島崎 そうなの(笑)。だから出だしの彼女からの「頼れよ」だったんやなって。

鳥羽 その彼女はもしかして島崎智子という人は、人に頼ることを知らない、頼れない人だっていうのがわかってた。

島崎 わかってたんやと思います。長野県のシンガーソングライターなんですけど。

鳥羽 そっかそっか。

島崎 結論を先言うと…全然先ちゃうけど(笑)。コロナって病原菌やし、イヤじゃないですか。あんま良いものではないじゃないですか。しかも人にうつるし、迷惑じゃないですか。だから、良くないものな気がすんねんけど、実際かかったら、人にしっかり頼らないといけないっていう経験ができて…。

……あ! だからうつすから会われへんじゃないですか。会われへんから孤独になるって思うじゃないですか。実際、隔離病棟でさみしかったけど、なんかそれがね、人の心と心を深くつなぐ、強固に結びつける役割を、コロナくんはやっとる!って思って。

それでバトンゲームやってるみたいやって鳥羽さんにメールした気がすんねんけど。なんか人と人、心と心で繋がろうぜ〜って。(ペットボトルを持って)これウイルスくんやねんけど(笑)。

鳥羽 ウイルスくんって歌なかったっけ?

島崎 あるある(笑)。全然シャレになれへんわって思いますけど、これ病原菌ですがこれは仮の姿で、このバトンもらったら人のつながりを実感できるよ〜って。バトンゲームやっとんねんやって。

鳥羽 それは横になってるときに?

島崎 いつ思ったんやろ?(笑)あ、治ってから。2週間ぶりに、ご飯食べられた日があって。

鳥羽 そのときおめでとう〜って思ってた(笑)。

島崎 朝ごはんの3分の1なんですけど、食べれたときにわーっていろいろ思ったんですよ。そのうちのひとつ(がバトンゲーム)。

あっ!違う違う違う!「だいたいのことが些末で、なに今までごちゃごちゃ考えてたんやろ、アホらしい!あっはっは」ってなったのがご飯食べれるようになったときで、心と心を強固につなぐバトンゲームやっとんなっていうのは、退院してから。

退院もフライング退院やったんですよ。ほんとはもうちょっと入院してなくちゃいけなかったんだけど、お医者さんが「出たかったら出てもええで」って言ってくれて。大部屋やってんやんか。コロナ同士やからええやろって感じで(笑)。それでいろんな人がいて、雄叫びおばさんが来たんよ。「うわー!」とか「ゔ〜」とか夜中。これはいっしょにいたら、こっちがやられるわって思って、出る出る〜ってちょっと無理して出たんよ。

だから出てから、すごい不安定になっちゃって。そのときに、手を挙げないとひとりなんやって思って。入院してるときは誰か知らんけど大部屋におるし、毎日朝昼晩ご飯持ってきてくれる人がいて、朝・夜には検温だの血糖値はかるだのレントゲンであるだの(人が)来るから、なんにもしなくても、ひとりぼっちじゃなかったんですね。

でも家帰って、会えないじゃないですか。一応会って良いってことで出たんですけど…。だから手を挙げたの!「会いたい!会いに来て!」って。そのときにバトンゲームやって思ったの。まぁ、いつ思ったかは重要じゃないか(笑)。

鳥羽 そのときに思ったのね。そうかそうか。それまで気づかなかった感情みたいなものにいっぱい気づいた感じ?

島崎 うん! 歌のなかでは「さみしい、さみしい」ってよう言うとんやけど、実際は…あんまり言ってなくて。でも、一回入院でみんなといっしょの生活体験しちゃって、楽しかってん!体はしんどかったけど、いろんな人がいろんなこと言って、いろんな人がいろんなことやってて、ちょっと幸せやった。だから(家に戻って)この孤独ホンマ  イヤや…ってなって。

孤独ってひとりぼっちってことじゃなくて、ひとりぼっちはほんとはイヤなのに、平気なフリをしてるのが孤独やって思って。

鳥羽 うん、うん。

島崎 だから手を挙げて「誰かいっしょにいて〜!」って。

鳥羽 手挙げられてなかったんだってことに気づいた。

島崎 そう、気づいたんです。

鳥羽 そっか、そっか。

島崎 人と人って、なんかしてもらったら、なんか返してとか、めんどくせっ!って思ってたんですよ。そんなん愛じゃないって思ってた(笑)。だけど、愛の一部やなって思った。わかりやすい人としての愛の手法のひとつっていうか。

さっき、(木下)弦二※さんともお話したけど、音楽で感じれる愛ってなんかしてあげたから、なんかしてもらうっていうレベルじゃないから。その愛を知ってると、それ以外の人間同士の、なんやアレしてコレして、こうなったからこうなってあーでこーでってのが、うるさーい!ってなんねん(笑)。

※ミュージシャン。トーク収録直前に、島崎、鳥羽、木下の3人で40分ほどおしゃべり

島崎 だけど、それの大切さっちゅうか、わたしはそれをすごい求めてたんだなっていうのを認めた。だから手も挙げられるっていう感じ。

鳥羽 病院ってそういう意味じゃ、手を挙げられる場所っていうか。

島崎 そうですね! それ超あったかも。それでさえ、かなり前半我慢してたから、わたし挙げられへんかったから。ナースコールとかよう押せへんとかあったけど、(手を挙げる)練習させてもらった感じかなぁ。

鳥羽 なるほどね。そこにいて何か濃密な人間関係とか愛情があるはずがないのに、手を挙げるだけで、人が来てくれたり、なにか助けてもらえたって感じるのは、逆にそっちがほんとなんじゃないかって感じもする。

グチャグチャ〜ってしてないんだけど、病院で行われることって、わたしがなんとかをするからしてあげるっていう形でもないから。でも手を挙げる練習をしたってすごい経験だね。

島崎 はい。でもね、死ぬ!ってなったら、手を挙げるもんやなぁって。

鳥羽 でもさ、退院したら手挙げられなくなるから、辛かったね。

島崎 辛かったんですよ。だけど、がんばってあげたんよ。迷惑がられるのわかってたけど、めっちゃがんばって手挙げました。それでわがまま聞いてもらえて、ものっすごい安心しました。寝れたもん、深く。まぁ良かったすねぇ。

鳥羽 そのまま挙げ続けて、ね。

島崎 うん、挙げ続けたい。その助走で、ベスト盤のリリースをすごい人に頼ったんですよ。「コメント書いてください」※とかもね。なかなか勇気…。

※島崎智子ベストの著名人コメント欄に鳥羽もコメントを寄せた。


鳥羽 やっぱり勇気いるんだ。

島崎 いりました、はい(笑)。鳥羽さんはそういうの大丈夫ですか?

鳥羽 いや、どうかなぁ。人にお願いすること。お願いとかするかなぁ?

島崎 わたし、今気づいてん。鳥羽さんのこと、なんにも知らんわぁって思って。収録でもし鳥羽さんがよかったら、わたし、鳥羽さんのことを聞きたいわけよね。

鳥羽 へぇ〜。

島崎 違うねん! 本には鳥羽さんのことは書いてないわけよ。ネットの連載にも鳥羽さんのことは書いてないわけ。だけど、読んでたらにじみ出て感じるものはあるんですよ。で、知りたい!と思って。どないなっとんのやろって。

鳥羽 なにを知りたいんだろう(苦笑)。別にいつものように、この20年間子どもたちに勉強教えながら、そのときに子どもが傷ついてたら、いっしょにムカついたり、勉強わからんくてもうどうしよ…って子といっしょに喋ったり。とにかく子どもたちといっしょに喋ってきたっていう平坦なことを20年間ずっとやってるだけなんで、あんまり喋ることないっていう感じはあるんだけど。

島崎 だから、それが謎なの!なんでそこのポジションについたのかなっていう。

鳥羽 なんで…。まったく狙ってないもんね。学生時代から続けてるから、間になんとかとかないから。まぁ学生時代にちょっといろいろあって、精神的におかしくなった反動で始めたこともあるから…。

島崎 やっぱり! そういう部分があるんかぁ。

鳥羽 それは完全に。病院に通ってた時代とかあるんで。

島崎 そっか。それは当時どういう感じやったんですか?

※自分のことをしゃべりたがらない人に、必死にノックする島崎智子


鳥羽 きっかけは大学院のなかで、いちばん仲良かった友人とかと決裂したようなことがあって、全否定されたみたいな。全否定されたゼロになるような経験がそのときにあって。

島崎 ゼロになる経験?

鳥羽 今まで自分が信じてたこととかが、ことごとく。全部価値観を否定されたみたいな。

島崎 それはひとりの人に?

鳥羽 うん、ひとりの人に。っていうのがあって、それでしばらくはずっと閉じこもってて。カビの生えまくった布団のなかにずっと閉じこもって、それこそ急性の栄養失調で病院に運ばれたりしたこともあるけど。引きこもりっていうより、もっとひどいやつ。それになったときはあったかなぁ。

それをひっくり返すようなエネルギーが生じたときがあって、そのときに始めた感じではあるんだけど。

島崎 だからか。鳥羽さんのなにを読んでも共通して感じるのは、鳥羽さんのセラピーにもなってるんだろうなっていう。

鳥羽 完全にそうで、今までで出会った子たちのことを書いてるって思われがちだけど、完全に自分の分身がたくさん本のなかにいて、あの子もあの子もあの子も自分の片割れなんですよ。だから逆にあんまり対象化せずに、自分自身も親か子どもか大人かわからないみたいな感じでそのまま書いてる。

子どもを見てる側のふりをしているけど、実は子ども側に完全にいたりするんですよね。

島崎 なるほど。(精神的におかしくなった)反動でってことは、ご自身がドーンってなったものを、いったんはフラットにしてからっていう感じではないってことですよね。 

鳥羽 全然。フラットなときとかなかった。

島崎 それで20年きたんですねぇ。

鳥羽 なんか40歳過ぎて、急にやっと安定してきたかな。

島崎 それはなんかきっかけあるの?

鳥羽 全然。なんかわかんないな。それまでと変わりなくやってて、それこそ教えてる子どもの親より若かったし…なんだろうな……。あらゆることに自信がなかったんだろうけど、40になったころから、自分が今までどうやって子どもたちに接してきたかっていうのが、それこそ文章書いて言語化できるようになって、それから急に安定しはじめたところがあるなぁ。

島崎 そっか。ちょっと距離ができたみたいな感じなのかな。

鳥羽 うん、たしかに。

島崎 作品と書物にして出すと、リリースできますよねぇ。

鳥羽 そうそうそう。それは全然知らなかったこと。昔から思ってること?

島崎 リリースしまくりましたよ(ゲロ吐くみたいなジェスチャー)。

鳥羽 ね。アルバム何枚出てます?

島崎 わっかんない、あははは(笑)。20枚は いってないですよ。

鳥羽 それくらいかなって思った。17〜8くらい。

島崎 リリースって「発売!」ってイメージあるけど、こっちからしたら「手放してるだけじゃ!」みたいなね(笑)。

鳥羽 たしかに。ちょっと前に最近書けないとか言ってたときがあったけど。

島崎 はい。

鳥羽 なんでそんなモードになってたのか、今なら説明できる?

島崎 えっとね……。つい2、3日前に新曲ができたときに思ったのは、わたし、人と関わらないと書けないんですよ。その人との関わりっていうのは、新しくないといけないんですよ。

鳥羽 へぇ〜。でもそれはすごいわかる。

島崎 同じ人でも関係性が変わっていったら大丈夫なんですけど、同じ人と同じ関係、そこで滞っちゃうと、多分できへんねやろうなっていうのが今回コロナでわーって関わったから…。

あと、コロナの前にベスト盤でもすっごいたくさん新しい人にも会いにいったし、人と関わったんですよ。それがぐちゃぐちゃ〜ってなって、オェってなった(笑)。出てきたって感じだったと思います。

鳥羽 なるほどね。それはすごいわかります。この前9月のはじめに2週間くらいいろんなところに旅しにいったけど、そのときは逆になにも生まれなくて。

子どもたちとふつうに授業してるだけでも書くことって生まれるけど、会わなかったらなにも生まれないって思った。しかも新しくないとダメっていうのもそうだね。

それこそ15年間ずっとやってて、900人くらいの子どもたち教えて、それがずっと溜まってたから。インプットばっかりだったから、出せ出せっていうのが40過ぎて出てきたから。出してスッキリしたみたいなところはありますね。

島崎 さっきな、ここに弦二さん座って、ここに鳥羽さん座って、わたしここで見てたやん。そのときの鳥羽さんの聞き方がな、「あぁ〜(なるほど)」と思って。こうやって聞けば、人の話を最後まで聞くということができるんだなぁと思った。

鳥羽 へぇ。(僕は)なんも言ってなかった、なんにもしゃべってなかった。

島崎 いや、めっちゃ良いこと言っとったで、ピンポイントで。…でも弦二さんのことまで喋ったらアカンか(笑)。でも、弦二さんがうわーって出して、ぽんって。(福引器を)ガラガラガラって回しても出てこうへんなって思ってたら赤い丸がパーン!って出てくるみたいに出てきた瞬間があったじゃないですか。それをしっかり鳥羽さんはキャッチしてた。さすがっ!って思って。プロはちゃうわ!って思って(笑)。

鳥羽 でも、さっきちょっと言ったけど、島崎さんは悩んでる人に対して、びっくりするくらい「それだー!」って的確なことを言っちゃうから。

だからね、歌の仕事をずっとやってほしいけど、言葉だけでも人を助けられるくらいの人だなって思いながら、めっちゃ感心してます。

島崎 それはめちゃめちゃうれしいです。基本的にアホやから。

鳥羽 いや、アホじゃないと思う。

島崎 音楽ないと表現できへんと思ってるから。

鳥羽 ほんとに今日ツイッターに書いたけれども、天啓の言葉を持ってる人。そんな感じでパーンって降りてきてしゃべってるみたいな感じだから。

島崎 ほっほっほっほ(笑)。なんかね、嫌われるの怖くなくなったんですよ。

鳥羽 なんでかな?

島崎 コロナで。ご飯2週間ぶりに食べれたときにおいしくって、だいたいは些末なことやったってなったときに、なんでごちゃごちゃそんな悩んでたんやろっていうその根っこは、「嫌われたくない」の一点だったんです。

それ、もういいじゃね?ってなって。生きてるし!みたいな。死なへんかったし! メシも食えるし! 別に嫌いになった人はしゃあないやん!ってなったんやろうな。

それで今日は言えたと思って。なんかね、わたしもあんま言えないんですよね。

鳥羽 前、『おやときどきこども』のオンライントークをして、こっちが半泣きになりながら、島崎さんが喋ってるときとかも、めっちゃ言葉が来るー!って思って。

島崎 ほんとですか(笑)。

鳥羽 あれ聞いた人たちめっちゃ衝撃受けてて。島崎さんヤバみたいな。

島崎 あっはっは(笑)。そっか、そうでしたか。それはよかったです。やっとんねんな。

鳥羽 そう、やってるやってる。

島崎 そっか、やってんねんけど、否定してたんやな自分でな。わかったわかった。

鳥羽 あとわたし個人の感想で言うと、島崎さんが嫌われたくない呪縛から解放されはじめたのって、今回っていうよりもうちょっと前、1〜2年前から始まってた気がするんだけど。

島崎 マジっすか。そうなんや。

鳥羽 歌とか聴いたり、ちょっとした言葉を見たりすると。そんなことない?

島崎 自覚はなかったですね。

鳥羽 もしかして歌が生まれなかった原因とかとも関係あるのかなって勝手に思ったり。だいぶ許されてきてるのかなと思って、それで考え方が変わってるのかなとか、いろいろ考えたりいしてたんだけど。

島崎 あぁ。…それもあります。

鳥羽 もうちょっと長く見て、この2〜3年変化ありました?

島崎 えっとね…ちょいちょいいろいろあるけど、コロナって2年経った?

鳥羽 いや、1年半前か。

島崎 えっとね…ベスト盤のプロデューサーでワタさん(渡来宏明)っているんですけど、その人と2年前に出会って、頻繁っていうわけではないんですけど、けっこうコンスタントに認めてくれるんです。そのやりとりはけっこう大きかったと思います。

どういうふうに観測されてるかっていうのは、言葉で言ってくれないと、こっちで妄想するしかないじゃないですか。わたし、家族との関係ちょっとアレやから、ファンのみなさんからの認知でできあがった人格で生きてるんですよ。

でも、島崎智子ファンのみなさん、基本的にけっこうシャイなので(笑)。すごい応援はしてくださってるんです。でも言葉でね、コンスタントに生きてていいんや、生きてる価値があるんやってことを、表現してくれる存在ってあんまなかった。

それでね、「生きてていい、生きてていい」って観測されつづけていると、そういう感じになるやん。「なんねや!」って思って。

鳥羽 うんうん、なるほどね。僕、けっこう島崎さんのへの思いを表現してるほうかなって思ってるんだけど。

島崎 はい、していただいております。なんか最近みんなしてくれるねんよ! どうした?(笑)

鳥羽 周り(のファン)もそれこそ成熟してきたのかな。

島崎 はっはっはっは(笑)。そっか、いっしょに育ってんねんや。

鳥羽 そういう時期かも。

島崎 そっか、そうかもしれないですね。今ほんとにみなさんにいい観測をちゃんと言葉で表現してもらえるように。

鳥羽 たしかにね。島崎さんの音楽に出会ったときは、自分もなんにも言えなかったな。あの音楽は出力まで時間かかる。5年以上かかったなぁ。

島崎 あっはっはっは(笑)。そっかぁ。うんうん、たしかにそうね。

鳥羽 そうやって出してもらえるようになったのもあるんだ。

島崎 それけっこう大きいですね。あとね、もう一個コロナがやっぱり大きかったからね。わたし基本的にライブは、コロナだから辞退しますっていうのはなくって。

一回だけね、自分からキャンセルしたことがあるんです。それは東京の一回目の緊急事態宣言が出る直前で、3月27日の西荻窪アートリオンっていうお店なんですけど、そのときにわたしテレビ見てたんですよ。テレビのある家にちょっと滞在させてもらってて。テレビ見てたら、コロナ怖いやん…って(笑)。あ、志村けんさんが死んだんかなぁ。どのタイミングだったかは忘れたけど、これはさすがにライブできへんっていうか、自分でものごとわたし決められへんって思って。

誰かからどう思われるかしか基準がなくて、わたしはこう思うからこうするってできへんって思ってん。

ほんで、できへんのやったら、今はできへんそういう自分ってことで、世間の目が怖いから辞退しましょうっていうふうに決めて、辞退したんです。

ほんだらね、次の日スーパー行ったらね、すごい人混みなんです。それ見たときに、ふっと我に返って、わたしは一杯食わされたのかって思って。ライブやってよかったやんって思って。

そこから絶対わたしからはキャンセルせえへんって決めて、ライブやってたんです。「こんなご時世なんだからライブ来てとか言いにくいんですけど…」ってアホアーティストが…アホじゃないけど(笑)。いっぱいいるんですけど、お前やるんやったらな、しっかりやってな、「やります!来てください!」って言えや!って思ったから(笑)。

鳥羽 まったく同意見です。

島崎 わたしも覚悟を決めて、コロナかかるんやったら、かかります、と。うつしてしまったら、うつします!という決意でライブをやるから来てって。あれ? これなんの話やった?

鳥羽 えっ?ここで? めっちゃいいとこだったよ。

自分からはキャンセルしないって決めて、遠慮しながら言うんじゃなくて、うつしてもうつされても…。

島崎 違う違う! ずっと前、この話をしはじめたきっかけ(笑)。なんやった? こういうことがしょっちゅうしょっちゅう。

鳥羽 でもね、今の話に関連して思い出したのは、島崎さんが「みなさんこんばんは」って始まった「わたしはコロナにかかりました」っていうみなさんに送ったメール。

島崎 メール配信ね。

※島崎さんはコロナのことを綴った文章をファンたちにメールで配信しました。

鳥羽 それの後半で、うるってなっちゃって。


────────────

絶望は全部吐き出した なんか、変わった

一番良かったこと…いや。一番がいっぱいあるんだけど、そのうちの一つ

「わたしだって本当はコロナ怖かったんだよ」

っていう言葉が、声になって出たんです。

トイレでげえげえ吐いている最中に

その時、めっちゃ泣きました。

大部屋に戻っても、夜中、声殺していっぱい泣いた

ハンカチいっぱい濡らした

やっとちゃんと泣けたー。。って思って、慢性化してた緊張が抜けたのを感じた

────────────


鳥羽 ここ読んだときに、うわ〜と思って。ああ、そうわかるっていうか、そうだよねって思って。

島崎 よかったです。わたしね、音楽で人救いたかったの。今まで生きてきて、そんな気持ちになったことなかったんですよ。

コロナでライブ行けない人も出て、わたしは最悪ライブできるから、無秩序をやれるんですよ。

※ 音楽(ライブ)のときは無秩序になれる。平常の人付き合いは「秩序」側にある


島崎 どうしてもいろんな事情があって行けない人がいて、でも配信でやれるところまでは無秩序を見せてあげられるじゃないですか。それでね、救いたい!ってなってしまったんやな(笑)。それでコロナ怖いっていうのを、多分ギュッてしたと思うねん。それでなりふり構わずライブやってたけど……ふふふふふ(笑)。

鳥羽 そっか、(コロナが怖いという気持ちに)蓋をしちゃったんだ。

島崎 蓋しちゃった。ちゃんと感じてなかったですねぇ。そうなの。。

鳥羽 そっか。今も無理してない? だって治ってないでしょ?

島崎 コロナは治りましたけど、肺炎は…。

鳥羽 肺炎めっちゃわかる。今まで3回なってて。

島崎 えーっ!

鳥羽 肺炎まだ完全に治ってなくて、ずっと痕が残ってる状態。そのまま生きてるので、肺炎が残ってる状態ってリアルに想像がつくんだけど。

島崎 そうなんですか。

鳥羽 そうそう。だからコロナかかったらヤバいよっていう感じがあるんだけど、炎症が残ってるから。だから大丈夫かなって心配してる。肺炎残りやすいよって。

島崎 はっはっは(笑)。肺ってね、「悲しみの臓器」らしい。知ってた?

鳥羽 知らない。

島崎 わたしもはじめて聞いたんですけど、悲しみ溜めこんでると、なるらしいなぁ。

鳥羽 そうか。(肺炎に)なる季節が決まってて、3月になると。悲しみがその時期に溜まるのかなぁ。

島崎 そうかも。そこで吐き出すっていうか、体が表現する必要があるんですねぇ。

鳥羽 そっかそっか。

島崎 コミュニケーション苦手な人は肺は弱い。

鳥羽 どうかな(笑)。自分ではなんとも言えないけど。

島崎 さっき鳥羽さんはここで弦二さんの話聞いてるときにね、絶妙にな、こう行かずに(前のめりじゃなくて)、こういう感じで(重心は後ろにおいて)、ちょっと体斜めにしてな、こういう感じで聞いとんねん。

受けるときに、ある程度距離を保ってないとアカンのやろうなと思って。それはどうしてかというと、もらいすぎるからなんやろうなって。

鳥羽 うん。初めっから、調整するクセがついてると思う。心を使いすぎないように、日ごろから。子どもたちも常に同時に100人以上ついてるから、心使いすぎないっていうのはクセになって、出てしまってる。

島崎 そのプロフェッショナルが己の心を…閉ざしてはないんですよ。だけど…。

鳥羽 ちょっと麻痺させてる感じはあるかな。

島崎 そうそう。

鳥羽 それはそれこそ40過ぎて気づいたかな。

島崎 ね。そやねん。鳥羽くんの『おやときどきこども』のオンライントークのときにな、出だしから鳥羽さん泣いたじゃないですか(笑)。やっとこんな鳥羽さん見れた〜と思ってん。

鳥羽 いきなりね。見てる人「なんなんコイツ」って思ったかもしれん。

島崎 あっはっは(笑)。あれから、やっと箱のなかから出てる鳥羽さん見たわってあのとき一瞬思ったんや。でもそれ以外はあんまり見てないから、鳥羽さんのことを、わたしなんにも知らないなぁって思ってん。

鳥羽 あのね、自分でもあんまり知らないまんまでいる作戦っていうとこもあるかもしれない。

島崎 (笑)。

鳥羽 さっきお話してた木下弦二さんも、なにかそういうクセみたいなのがあるのかな。

島崎 そうですね。ちょっと同じ匂いがした。

鳥羽 なんかね、それを生存戦略にしている人たちがけっこういる。考えないように。それって生き延びるためのひとつの作戦ですよね。

島崎 さっきわたしの言葉ちょっと悪かってんけど、問題っていうより、クセやな。

鳥羽 たしかにね。

島崎 自分の癖に気づけば、心疲れるやり方の癖をやめれるっていう。

鳥羽 そうそう、たしかにね。40歳くらいになって、癖に気づけるようになったのはあるなぁ。

島崎 そうですね。データいりますよね。

鳥羽 そうそう、蓄積が。

島崎 データ量で判断…いりますよねぇ。

鳥羽 そうそう。だいぶね、蓄積するにはいろいろつまずかなければいけない。

島崎 やっぱりお子さんとか親御さんと関わることで自分の癖が…。

鳥羽 そうそう、そういうのめちゃくちゃある。ほんと学んでるなぁ。でも、音楽もやっぱり学ぶツールとして重要で。それこそ無秩序な音といっしょに言葉が入ってくるから、とてもパワフルな自分のなかの心を整える大きな武器になってるなぁと思って。だから島崎さんの音楽って大きい。

島崎 ありがとうございます。

鳥羽 ほんとまだ出会ったときのこと覚えてるもんな。歓喜。ほんとにいつかはわからないけど、救ってるとこはあると思うので、ずっと続けて欲しいな。

島崎 あははは(笑)。うん、わたしは野菜切るだけの仕事に就かないでよかったなぁって。音楽もらったから。今まではね、自分のセラピーとして活躍させていただいてあれやけど、もっと多くの人を助ける気がすんねん(笑)。

鳥羽 ほんとそう。島崎さんの音楽のなかにいろんな人格が出てくるのがほんと面白くて。おじさんも出てくるし、それこそ「つじつまあわせ」のおじさんとかね。ああいう人たちはどっから出てくるの?

島崎 わたし、多重人格なんですね。

鳥羽 統合させようとしないみたいなことを、この前書いてたね。

島崎 そうそう! 多重人格って人振り回すんですよ。いちばん振り回されてるのはわたしなんですけど、振り回しちゃうからみんな離れていくんです。だからどうしても統合したかったのよ、孤独だったから。

だけど、それに取り組みはじめて10年経って、もう無理やって。データそろってるじゃないですか。

鳥羽 うん。

島崎 (わたしたち)同い歳ですもんね。※ふたりとも1976年生まれ

データこんだけそろったら、黒のものを白にはできへん!ってなって。医学的な治し方は無理!ってなって。統合とか分裂とか知らねぇ!ってなって。

人格ごとに見るんじゃなくて、なんでその人格ができたのか、その感情の元を見るようにした。そしたら無秩序で無邪気で「好き〜!愛してる〜!」以外の奴らは、愛されたいというか、さみしかったんよ、みんな。さみしかったから、どうやったらこっち向いてくれるかなってことで、無数に作っとんよね。じゃあ別にそれ分かれてなくね?みたいな。「寂しかった」の一言で良くね?ってなって…はっはっは(笑)。

鳥羽 (笑)。

島崎 なにが分裂症じゃ!みたいな。それで物事がシンプルになるって思って。どの人格を選択するかってやってる部分は今もありますけど、それよりどういう言動、どういう言葉を使ってどういう行動をすれば、わたしが幸せなのかっていうのを、実験実験で。

そのな、見本がない話をさっき言ってたじゃないですか。自分が幸せでいれる言動の見本にも、ベスト盤のプロデューサーのワタさんがなってる。こうやってやるんか!みたいな。「(幸せでいる)見本、見つけた!」みたいな。

それで真似っ子すんねん、真似っ子。それで変わってきたねんな。だから人格とかじゃなくて、日々の言葉遣いと行動見てるだけで、よかったんかぁって思って。

鳥羽 なるほどね。もともとの人格みたいなのの真実みというかね、逆に言えば。

島崎 そうそう。あれ、幻想やったんやんな〜。怖いわ〜。あっはっは(笑)。

鳥羽 ねぇ。「ほんとのわたし」とかってね、幻想かもしれない。

島崎 ね。いかにも真実であるかのように、いたんだよー!(笑)

鳥羽 わたしの根っこがみたいにね。

島崎 そうなんです。ベスト盤の件に関してはね、今までのわたしの価値観でこれはやらない、わたしはやらない、みたいな禁じ手も、アドバイスで「これやったらいいんちゃう?」ってなったら「やります!」って(笑)。

ほんならやっぱり、「自戒」で縛ってたんよ!縛り付けてたっていうことがわかって。だから別にそれが自分だったわけやなくて。

鳥羽 今回のベストアルバムの流れって、なんか特別な導きじゃないけど、そういうものがあったから、生まれたっていう感じがなんとなくしてたんだけど。

島崎 うれしい〜。

鳥羽 そういう感じだったんですね、なるほどね。選曲も任せたんでしょ?

島崎 任せました。

鳥羽 すごいことだなぁと思って。

島崎 でしょ? それ自体も禁じ手解放してます。

鳥羽 そりゃそうでしょ。だってあんだけ曲があるのに、よくぞ絞ったなって感じがする。けど、やっぱり他人だから絞れちゃうんですね。

島崎 そうなんです、ははははは(笑)。

鳥羽 ね。「穴ぼこ」が入ってない!とか思ってね。

島崎 でしょ?(笑)でもね、その人もちょっと鳥羽さんと似てるところがあってね、すごい賢いんよ。で、賢い人って見ないふりできるんやなって。まぁわたしもそうですけどね。ま、いっか。徐々にな(笑)。

鳥羽 はははは(笑)。うん、それも感じたんだよ。そっかそっか。

島崎 だから未だにワタさんがどういう人なんか、わかれへん!

鳥羽 そっか。逆に言えば、あの人わかるなって人がいるの?

島崎 わかろうとしてなかったんだっていうのもあるけど、広島で10年くらいお世話になってる、久保モリソンさんがいるんですけど、彼ともこないだ会ったときに、全然知らんわ!ってなって。作品でしか知らないから。鳥羽さんのことも作品でしか知らない。でも今日来たときにね、鳥羽さん見たら前と違うかった。前はもっとね、ゆらゆらしてた。

鳥羽 そっか、そうかも(笑)。

島崎 前会ったのだいぶ前やもんな。

鳥羽 そう。

島崎 でも、オンライントークで拝見したときも、ゆらゆらしてた。

鳥羽 へぇ〜。

島崎 ゆらゆらしてて、扉があって、その隙間からこっちに手を振ってたんだよね(笑)。

鳥羽 こないだもコメントしてくださったのもうれしかったんだけど。


島崎智子 on Twitter

(福岡ライブ)主催の鳥羽和久さんは、ベスト盤にコメントも書いてくださった

作家でもあり塾の先生でもあり、とにかく、人を愛するひと、です。

身体の輪郭があったかい波長でずっと揺らいでいて

自身から溢れて止まらない愛を全身全霊でなんとかかんとか型取り面倒みてる人


島崎 そうや、あの投稿の補足してもいいですか。投稿の内容といえば、己から溢れ出そうな愛をなんとかかんとか型取って面倒見てる人って書いたんですけど、あれ、秩序や、秩序。

愛って多分無秩序やと思うんですけど、その無秩序が溢れてるのを、言葉とか文章とか、あと人の話を聞くっていう3つのツールを使って、人間の形を保とうとしているっていう感じやね。

だけど、今は人間だよ!って感じ。

鳥羽 そっか(笑)。なんかね、毎日秩序を作らないといけない、と。毎日、金太郎飴みたいに確実に飴の模様ができるようにっていうのを、毎日毎日やっていかなきゃいけないっていうのをすごく思ってたんだけど、もう少し、別にそこ緩くてもよくね?みたいなのを、やっと最近。

島崎 ああ、そう。

鳥羽 「できなかった、今日もできなかった」じゃなくて、「やったからよくね?」というようなのが、やっとわかったというか、感覚的に理解できはじめた。

島崎 なるほど! そういう感覚がちょっと浮上してきた。だって目の輝きが全然ちゃうもん。

鳥羽 そうなの?(苦笑)でもそこの感覚が変わった。そういう人って言ってもね。

島崎 そうなの。前もっとね、マットやった(笑)。

鳥羽 マットってね、何回も言われたことある。

島崎 ちょっとまって、マットって芸能人のほうちゃうで。

鳥羽 わかるわかる。

島崎 つや出しマットのこと。

鳥羽 そうそう。子どもにも言われて、「マットって感じですよね」って。

※ マット=つやがない


島崎 はっはっは(笑)。

鳥羽 子どもに言われたときはびっくりした、「どのマット?」って聞いて。それで説明されて。

島崎 みんながよく鳥羽さんを観測している。

鳥羽 ちょっと未だにそこはいまいち意味がわかってないけど、そうなんだ。

島崎 うん。まあ別にどっちが悪いってわけじゃないけどね、そうなりはったんやなってって感じでね。

鳥羽 年齢が経つと少し良いこともあるかなって。

島崎 ねっ! いいっすよねぇ。ほんと死なないでね、寿命まで生きたほうがいいっすよね。

鳥羽 こんなことに気づくのに40年かかってるから。

今日も島崎さんと生きて会えてよかったなぁって最初に思いましたよ。

島崎 ありがとうございます、わたしも思いました。

鳥羽 どれくらい時間経ったんだろう。

島崎 今ちょうど6時10分や。ちょうど10分押し。

鳥羽 島崎さんとやるので、歌が聴きたいのよ。

島崎 あぁ!忘れてた〜(笑)。

※ まだ、曲を1曲も弾いてない!!(もとは1時間の間に2・3曲くらい弾く感じの予定)


鳥羽 まだ聴けてない人たちがたくさんいるから、聴きたいなぁ。

さっき『おやときどきこども』の話をしたけど、


『おやときどきこども』鳥羽和久著(ナナロク社)

※まもなく1万部突破。買ってください!!2021年時点


鳥羽 島崎さんファンは全然知らないかもしれないから。なんで島崎さんと話したときにわたしがこの本をわざわざプッシュするかというと、島崎さんがこの本にいっぱい出てきてるんですよ、実は。

話が散らばりまくってて…わたし自身も散りばめられてるんだけど、島崎さんも散りばめられてるんですよね。

1章に「彼女はそのままに世界を見ていた」 っていうお話があるんですけど、どうしてもわたしが自分の文体では限界だと思って、なんとか他の人たちの文体を持ってこようと思って書いたんですけど、そのときに島崎さんの歌をめちゃくちゃ聞いて、文体を取り入れようとしたんです。

なので、わたしにとっては彼女のモデルのひとりだったり、またはこの本に出てくるいろんな細かい言葉、「つじつまあわせ」「間柄」って言葉を書くときに、完全に島崎さんの音楽を流しながら書いてるんですね。

※「つじつまあわせ」「間柄」どちらも島崎智子の名曲。
「つじつまあわせ」は島崎智子が前世生の「戦争に行かなかった卑怯な男」がモデル。
「間柄」はアルバムタイトルにもなっている。


島崎 ありがとうございます!

鳥羽 そういうところがたくさんあって、ほんとあらゆるところに出てきてるよってことで、島崎さんファンにももしよかったら読んでほしいなと思って。

島崎 ありがとうございます。木下弦二さんも読んでたっていうからびっくりしましたよね。

鳥羽 うれしかったです。島崎さんのベストに言葉を寄せてくれてた寺尾紗穂さんも帯に文章書いてくれて。

※島崎智子ベスト盤にコメントを寄せたひとり
シンガーソングライター・作家の寺尾紗穂さん
『おやときどきこども』の帯文を書いたひとり
(他は批評家の東浩紀さん、ネバヤンの阿南智史くん「鳥羽の塾の卒業生」)


島崎 そうなんです、寺尾ちゃーん!

鳥羽 わたしがリクエストするなら、さっきちらっと言った「間柄」とか聴きたいなぁって、ちょっと思いました。

島崎 やってみよー!

鳥羽 2曲くらいやってもらえます?

島崎 ぜひ!

鳥羽 あとひとつはお任せで。

島崎 わかりました…もう一個もリクエストしてほしいなぁ(笑)。

鳥羽 言ったほうがいい? あのね「つじつまあわせ」はこの後ライブがあるから止めたほうがいいと思ってて。

※「つじつまあわせ」は1曲歌ったら死ぬんじゃないかというくらいの大曲なので、この収録のわずか1時間後にライブがある島崎智子に、いま歌わせたらヤバいと思っている鳥羽。


島崎 関係ないねん!

鳥羽 「つじつまあわせ」はさっき言おうと思ったんだけど…。

島崎 じゃあそれがいい。

鳥羽 ほんとに? 大丈夫?

島崎 わたしは生身の人間だから限界はあるんだけど、いまのことを考えたいねん。終わったら終わったでまた別人っていうか、別のあれがあるから。

鳥羽 なるほどね、そっかそっか。未来に貯蓄を残しつつやる感じじゃないんですね。

島崎 ないねん。

鳥羽 かっこいい!

島崎 すみません、ありがとうございます(笑)。

鳥羽 じゃあ「間柄」と「つじつまあわせ」というなかなかすごい感じになりますけど。

島崎 実をいうと、ささってるマイクがこっち(鳥羽さんが持っているマイク)のほうが、ボーカル向きってことにさっき気づいて。「あーあー」「あーあー」な?な?

鳥羽 ほんとだ、ぜんぜん違う。

島崎 せやねん。

※とらきつねのピアノはYAMAHAの50年以上前のおばあちゃんピアノ。
前日に、島崎智子さんが神!と崇める福岡在住の川内さんが調律。


島崎 ちょっとわたし暑くて、シャツ脱いでもいい?

鳥羽 もちろん。汗か涙かどっちかな?って思ってた

(と言われるほど汗だくになっていた島崎智子)脱ぐ。

島崎 熱はないねんけど、熱が残ってて、ずっと熱い。

鳥羽 そっか。冷房つける?

島崎 つけて〜。でも音が気になるかな…つけて〜。音がどれくらいするかって感じ。「間柄」……後にしよう。先に「つじつま」。

文字起こし: 安里和哲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?