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USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?①

2001年に「ハリウッド映画のテーマパーク」としてスタートしたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)。開業当初は年間1000万人を超えるゲスト数でしたが、その後は800万人、700万人と落ち込んでいき一度経営危機にまで陥ってしまいます。今回からはそんなUSJを舞台に、当時のマーケティング担当であった筆者が体験したエピソードを紹介していこうと思います。
( 森岡 毅(2014)『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 )


「観光客数が減り続けているのはなぜ?」
マーケティング専門家であった筆者は当時、USJが抱える根本的な問題点に着目します。
「なぜゲストが減り続けているのか」
社員達の間では「不祥事が重なりUSJブランドへの信頼が落ちたから」という認識であったそうです。確かに開業後数年の間で、ハリウッド映画の舞台を実現するために大量の火薬を使用していたことや、工事の際に生じる工業用水が水飲み器に誤って繋げてしまっていたなどといった不祥事がメディアによって大々的に取り上げられていました。しかし筆者はこう考えました。

「ではこれらの不祥事が全て無かったら、年間ゲスト総数1000万人をキープしてこれたのか?」

それから時間をかけUSJの内部を直接調べていくと、もっと根本的な課題があることに気付きます。そしてそれはUSJのような技術や品質にこだわる会社にありがちな問題点。

「技術のための技術」「品質のための品質」は無価値

USJには自分の仕事に誇りを持った職人や、素晴らしい技術がこんなにも揃っているのにも関わらず、これらが台無しになってしまっているということに気付いたのです。それはなぜなのか。実際にあったエピソードと共に紹介します。

ショー・アトラクション「ピーターパンのネバーランド」の不評

ピーターパンの国を舞台にしたショーイベントを行った際、その世界観を実現するため腕のある職人が多くの「時間」と「お金」をかけ取り組みました。その中でも特にこだわった「海賊船」は、船の汚れを再現することができる「エイジング塗料」という高度な技術を存分に用いることでリアルな海賊船を完成させます。高い資材と技術でこだわり抜いたこのイベントは結果、多くのゲストから大不評だったのです。
「船がボロイ・汚い」
こういった声が多く集まったというこのエピソードから筆者はなぜそうなってしまったのかを見抜きます。

それは例え高い技術や腕のある職人をもっていたとしても、多くの企業がその強みを間違った方向へ使ってしまいがちだからということです。そういった際は常に以下の事を確認します。

「何のために、そして誰のために使うか」

「エイジング塗料」のように、どれだけ高度な技術を使うことができたとしても、消費者(ゲスト)との『ズレ』が生じることによってそういった強みも失ってしまいます。

その『ズレ』を繋いでいくことこそがマーケティングとしての役割なのだと筆者は言います。しかし当時のUSJでは長年獲得してきた人気過去の成功体験に縛られた考え方もあったため、新入りのマーケティング担当が首を突っ込むというのは相当難関であったそうです。
しかし何かを「変える」ためには打たれ強さを要するものだということも述べられていました。


そんな一流マーケティングの体験談でしたが、実は今回の事例はごく一部にすぎず、他にも手に負えない程難しかった体験がいくつも取り上げられています。次回の投稿では今では大人気イベントとしてブランド化した『ハロウィーン・ホラー・ナイト』の凄まじい誕生秘話について紹介しようと思います。


ここまで読んでくださりありがとうございました。


追記))
私の投稿では「本で得た知見を具体的にどう生活に活かすことができるのか」を自分なりにアプローチしたコンテンツを配信しています。「本を読みたいけど時間が無い」方も読むことができるコンテンツを発信していくのでぜひともフォローの方よろしくお願いいたします。

ここからの記事では、森岡 毅(2014)『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 を参考に書いていきます。本の内容を通して一緒に考える時間を過ごしましょう。




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